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土日は3話公開です。

「確かに、こっちの山が新しい方の地図からはきれいさっぱり消えているのね」


「ほほ。面白いじゃろ。村の記録によると大落雷によって消滅したとあるが、どれほどの落雷があったら、山が1つ消えると思う?」


キールは面白そうに語るが、確かに想像もつかないようなエネルギーが発生したのだろう。

その場所をエルディアは指でなぞった。


「ここ、結構この村から近い場所だけど村にも被害があったの?」


「ない。だから余計に不可解じゃ」


エルディアとラスティはキールの言葉に頷いた。

なにもかもが不自然すぎる。

なるほど、人の手に負えない不思議な力があったと思う気持ちもよく分かる。


「……それで、なんで『竜騎士』が吹き飛ばしたという話になっているんだ?」


起きた現象だけ見るのなら不可思議で大きな力は、別の……例えば神の力として伝承する方が、一般的には多い気がする。

ラスティが見上げると、視線を受けたキールは大きく頷いた。


「竜騎士ライアンはこの村で竜の加護を得たらしいんじゃよ」


「ライアンがこの村に来たことがあるという記録でもあるのか?」


「うむ。正確には日記なんじゃが……」


エルディアはラスティとキールの話を聞きながら違和感を覚えた。

仮にも王弟殿下が竜騎士として力を得た場所だというのに、村にも王家にも記録が残らないということがあり得るのだろうか。


「王族が訪れたという村の正式な記録じゃないのね?」


「そう。ただの個人の日記じゃ」


エルディアが念押しして確認した情報から、考えられることは1つだろう。

ラスティは指先を顎に当てた。


「つまり、王弟ライアンの訪問は秘匿されるべき情報だったということか」


恐らく箝口令(かんこうれい)が敷かれたのだろう。

とはいえ、個人の日記まで管理できるわけもなく、物語のような信憑性の薄い話として口頭で村に伝わっていく……。加えて、年月が経てばその真偽を確かめる方法はない。

そうであれば、王家が史実としてそれを扱うこともないだろうし、実際にそうなっている。


「日記にはなんて書いてあったの?」


エルディアは消えた山の規模を地図で確認しながら、古い地図と新しい地図を見比べている。


「当時の村の娘の日記だからな。村に来た王族にうかれた様子が書かれておる……」


「村に来たってだけじゃ、ライアンが竜騎士になったなんて分からないじゃない?」


「娘の日記によると、村を訪れたライアンは竜が棲みついている山に入り、しばらく消息を絶ったらしい。そして大落雷のあった日、その中心で高々と竜剣を掲げて立っていたそうだ」


エルディアは新しい方の地図で、消えた山があったと思われる場所の中心を丸で囲みながら新しい言葉に首を傾げた。


「竜剣……?」


「竜から授けられる力の象徴だといわれておる宝剣じゃよ」


エルディアはラスティに視線を投げた。

ラスティは黙って首を振った。竜剣の話は初耳だ。

エルディアは軽く頷くとキールを見た。


「その宝剣はいまはどこにあるの?」


「分からんよ」


「えぇー? そうなの?」


ラスティが知らないと言っている以上、王家で保管しているということはないのだろう。

新たな謎が増えてしまった。


(新しいことまで追いかける必要はないか。とにかく神殿を探すことに集中した方がよさそうね……)


こういうことは1つ1つ潰していくうちに、芋づる式に分かるものだ。

予定通り、エルディアは神殿の場所から攻めていくことにした。


「じゃあ、竜剣はいいわ。さっき言ってた山の中心にあたる場所だけどさ」


エルディアはしるしをつけた地図をキールに見せた。

その場所になにかを示す地図記号が付いていたのだ。

キールはそれを見て目を細める。


「うむ。そこがまさに竜騎士ライアンが山を吹き飛ばしたときに立っていた場所で、『竜岩石』の残った場所じゃよ」


「『竜岩石』ってここにあるんだ」


「竜騎士ライアンが竜から力を授かった場所はそこではないかと言われておる」


ということは、この吹き飛ばされた山の跡地が「竜の棲む丘」なのだろう。


「うーん。じゃあ、まずこの場所から調べてみるか」


「お嬢さんたちは竜騎士を調べているのかい?」


「ううん。この辺にあったっていう神殿を探しているの」


確かにライアンの話はヒントにはなるが、本題はそこではない。

ラスティの試験会場探しだ。


「一度、この『竜岩石』ってところに行ってみるよ」


「そうかい? もしなにか分かったらわしにも教えておくれよ」


「もちろんよ」


ラスティはエルディアがキールと神殿の話をしている間、大人しく座っている。

基本的に場所の特定や調査はエルディアに任せることにしている。


じっとしているラスティを退屈していると思ったのか、ブルーベルの母親がトレイにおやつを乗せて持ってきた。


「お嬢ちゃんにはちょっと退屈じゃない? おやつでも食べてなさいな?」


大人しくしていて偉いわね、とでも言わんばかりの様子で焼き菓子を差し入れてくれた。

その言葉を聞いてエルディアは大げさに手を打った。


「さすが、安定のおやつハンター!」


「妙なあだ名をつけるな!」


仲がよさそうにじゃれあう2人をブルーベルの母親とキールは微笑ましく見守るのだった。



「王家の運び屋」メモ:

ライアン・ベルノ・ライヴィスキ(300年前のライヴィスキ国の王弟)

・カクテルは「ライ・アンド・ドライ」

・ドライベルモット、ライ・ウィスキー、オレンジビターズ

・300年前の竜騎士

・カクテル言葉は「感情に流されないで」


※カクテルのレシピ・カクテル言葉には諸説あります。


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