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土日は3話公開です。
「ほう。お嬢さんたちはブルーベルのお友達だったのかい」
手紙に目を通すと、ブルーベルの祖父キール・ロワイエは嬉しそうに目を細めた。
「ジャンポネイルで、お世話になってね?」
「ほうほう。ブルーベルは元気だったかい? 旦那とは仲良くやってたかい?」
「旦那?」
「ありゃ! まだ結婚してなかったのか!?」
ブルーベルが既婚者とは驚きだ。エルディアもラスティも目を丸くすると、老人はがっかりしたように息を吐いた。
「あの学者先生がどうしてもって言うから、認めてやったのに何をしてるんじゃ……」
どうやら込み入った話になりそうなので、そこは深く追求しないことにして、エルディアは笑顔を保った。
「ブルーベルは元気だったよ。その学者とも仲良くしてたよ」
恐らくアランのことだろうと当たりをつけて報告してやり、さらっと本題に入る。
「ところで、さっきの『竜騎士』の話だけど、おじいちゃんは随分詳しいのね?」
「ん? ああ、ライアン様の話かい?」
「おじいちゃん、あの話って本当のお話?」
エルディアの横からラスティが口を挟む。
王室にすら殆ど資料が残されてなかった話を、どこで知ったのかが気になったのだ。
「おお。そうだよ、お嬢ちゃん。ありゃ、わしのじいさんのじいさんが、そのもーっと前のじいさんから聞いた話じゃよ」
要するに言い伝えだ。
「結構な数の話を知ってるみたいだけど、全部覚えてるの?」
「ははは。半分は御伽話じゃよ」
エルディアは、毎日話をしても尽きないキールの情報量に舌を巻く。
するとキールは悪びれもせず、愉快そうに肩を揺らした。
それを聞いてエルディアは、心の中で小さく頷いた。
――半分作り話なら、残りの半分は本当の話だ。
「あたしは、残りの半分のほうに興味があるの。教えてくれない?」
普段は子ども相手の御伽話を語るだけだったキールは、久しぶりに伝承を聞かせる相手が現れたことに目を輝かせた。
学者ではないが、キールもまた研究者肌なのだろう。ブルーベルは祖父に似たのかもしれない。
「いいとも。うちでゆっくり話そうじゃないか」
「ありがとう、助かるよ」
キールはエルディアたちを近くの自宅に招き入れる。
その自宅でのんびりしていたブルーベルの母親は、朝の日課に出掛けたキールが急に客を連れて帰ってきたものだから慌てて出迎えた。
「あらあら! おじいちゃん、お客さんなの?」
「ブルーベルのお友達だそうじゃよ」
「ブルーベルの!?」
となりの町に出ていった娘の名前を久しぶりに聞いて目を瞬かせる。
「はじめまして、エルディアです。お祖父さんに教えてほしいことがあって、ブルーベルに紹介してもらいました」
エルディアは、母親にもブルーベルから預かった手紙を渡して屈託なく笑いかけた。受け取った母親はブルーベルの懐かしい文字を見て、安心したように口元を緩める。
その傍らで、キールはさっそく話をしたいらしく、そわそわとエルディアたちに椅子を勧めた。
「さあ、掛けなさい。何の話をしようかね?」
「んー、あのドカーンっていう山を吹っ飛ばした話は本当?」
エルディアは腰を下ろしながら、一番ウソ臭いところから潰していこうとした。
「ああ、あれは本当じゃよ」
「え!? あれ、本当なの!?」
そして、その目論みは早々に外れる。
思わず声をあげたエルディアのとなりで、ラスティも黙ったまま目を見張った。
「ああ、いま古い地図を持ってくるからね。ちょっと待っていておくれ」
うきうきと自室に戻るキールの背中を見送りながらエルディアは思わず呟く。
「絶対、作り話だと思ったのに」
「……すげぇな、『竜騎士』」
2人が顔を見合わせてひそひそ話をしていると、ブルーベルの母親がお茶をもって現れた。
「おじいちゃんがあんなに楽しそうなのは久しぶりよ。2人ともありがとうね。なんでも聞いてあげて」
「こっちこそ、詳しい人がいて助かるよ」
差し出されたお茶を受け取ってエルディアは礼をいう。
ラスティも受け取ってちょこんと頭を下げた。
「おじいちゃんの話ってこの村の人はみんな知ってるの?」
「あそこまで詳しくはないけどねぇ。みんな、子どものころからおじいちゃんみたいな人にお話を聞かせてもらっているからね」
「ふーん。半分は本当?」
エルディアの問いかけに、ブルーベルの母親はころころと笑った。
「実在する場所とか、出来事は本当みたいよ?」
ちょっと大袈裟に話してると思うけどね、と片目をつぶったところで、キールが戻ってきた。
おもむろにテーブルに持ってきた資料を並べて広げる。それに釣られてエルディアが視線を落とした。
村の新しい地図と古い地図。
並べられた2つには、見てすぐに分かるような、はっきりと違う特徴があった。




