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土日は3話公開です。
朝食を終えると、2人はブルーベルの手紙を手にして、彼女の祖父であるキール・ロワイエを訪ねてみることにした。
「聞いた話だと、この辺のはずなんだけど……」
エルディアが辺りを見渡すと、大きな声が聞こえた。
振り向くと、道沿いにあるベンチに座った老人が、両手を広げて子どもたちに物語を聞かせている。
「どかーん! そう大きな音がしてイブルグラム山脈に連なる山が1つ、ばーんと吹き飛んだんじゃ」
「すげぇー!!」
「ウソだぁー」
感想はまちまちだったが、子どもたちが老人の周りで目を輝かせている。
早く早くと続きを待っているので老人が勿体ぶって1つ咳払いをした。
「それが竜騎士ライアンの誕生じゃ!」
最後のキメゼリフに子どもたちが歓声をあげた。
「すごい人気だな」
「あれがブルーベルのお祖父さんで間違いなさそうね?」
子どもたちに負けず劣らずキラキラと目を輝かせている老人を見てエルディアとラスティは顔を見合わせて頷いた。
楽しそうな子どもたちに水を差すのも悪いので、一通り話し終わるまで待つつもりで少し離れた場所にいると、ふと老人とラスティの目が合った。
老人はブルーベルに似た人の良さそうな笑顔でラスティに手招きをしている。
どうするべきかとエルディアを見上げたラスティは、エルディアがにやにやしているのを見て嫌そうに眉を寄せた。そしてエルディアに確認するのを即座にやめる。
(すっかり調子を取り戻してやがって……)
揶揄われるのが分かっていて、わざわざ聞いてやる必要もない。
軽やかに老人に近づいて話しかけた。
「こんにちは」
「ああ、こんにちは」
「あのね、うちのお姉ちゃん、すっごい竜騎士マニアなの! お話聞かせてあげてくれる?」
ラスティは満面の笑顔でエルディアに全て丸投げしてやる。
「はぁ!?」
ラスティの背後からエルディアの嫌そうな声が聞こえた。だが、老人は気がつかなかったようで嬉しそうにエルディアに話しかけた。
「おお! そうなのかね、お嬢さん!!」
「え、ああ、まぁね? えっと、聞かせてくれる?」
「いいとも。さぁ、2人に場所を空けておあげ」
子どもたちに混ざって老人の物語を聞く羽目になったエルディアが、周りの大人たちからの微笑ましい目に居たたまれなくなっているのを確認して、ラスティは心のなかで舌を出す。
「あんた、あとで覚えてなさいよ?」
「おじいちゃん、お姉ちゃんが早く聞きたいって!」
「おお! そうかい。それじゃあ次は何がいいかな?」
周りの子どもたちも、あれがいい、これがいいと騒ぎ出す。
結局、竜騎士ライアンが囚われの姫を救い出すロマンスあふれる話を聞かされた。
(絶対、これは創作じゃん!!)
ラスティを見ると、興味深そうに聞き入っている。そんなに食いつくなら、はじめから自分が聞きたいと言ってくれればいいものを。エルディアは誰にも聞かれないように小さく舌打ちをした。
そんなエルディアに気付かずにラスティは目を瞬かせた。
「ライアン・ベルノ・ライヴィスキは生涯独身だったんだ。へぇー。どっかの姫君と恋をしたことになってるのか、面白いな」
自分の先祖が好き勝手にロマンスをでっち上げられていることに、素直に感心している。
「あんた、そういうところはおおらかなのね?」
「300年前だぞ。架空の人物と大差ないだろ」
それでも、伝統やら格式やらを重視するのが貴族だと思うのだが、王族ともなるとまた少し違ってくるのだろうか?
エルディアは不思議そうにラスティを眺めた。
「竜騎士ライアンも、時の国王の弟だったんだ。立場的にも同じだし、俺の今後のためにも自由でいてほしいんだよ」
間違いなくラスティはこの竜騎士の前例に従って、もろもろを決められるのだろう。それはエルディアにも簡単に想像がつく話だったので、小さく頷いた。
「そりゃ、確かにそうね」
「だろう?」
とても他人事には思えないライアンの話を、ラスティは1つも聞き漏らすまいと前のめりになって耳を傾けた。
ヒーローものとして完成されたその話が一息つくと老人は、ポンと膝を打った。
どうやらこのお話会の終わりの合図のようだ。
「よし、今日はここまでじゃ。みんな、1日いい子にして、明日またおいで」
そう言うと子どもたちを母親のもとに帰す。
散り散りになった子どもたちを見送ると、老人はエルディアに向き直り、にこにこと微笑んだ。
「満足してもらえたかな? お嬢さん」
「うん、なかなか面白かったよ。でも、もう少し詳しい話も聞きたいのよね?」
そう言って、エルディアは語り部の老人キールにブルーベルからの手紙を差し出した。
「王家の運び屋」メモ:
キール・ロワイエ(ブルーベルの祖父)
・カクテルは「キール・ロワイヤル」
・シャンパン、カシスリキール
・竜騎士が大好きなサンダクラプ村の物語の語り部
・カクテル言葉は「好きなものに夢中になれる一直線な人」
※カクテルのレシピ・カクテル言葉には諸説あります。




