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土日は3話公開です。
薄手のカーテンから差し込む朝日の眩しさに、ラスティは寝返りを打つ。
ごろりと転がる体を邪魔するものはない。
(……朝か?)
ぼんやりと覚醒していく。
ベッドは1人に1台。
素晴らしく快適な睡眠環境だ。
ラスティはゆるゆると瞼をあげると隣のベッドに視線をやった。エルディアは既に起きているようで、ベッドは空だ。
「……あいつ、ニワトリみたいに朝が早いな」
あくびをしながらラスティは部屋を見渡した。どうやら部屋からも出ていったようで姿が見えない。
「どこに行ったんだ?」
普段の口の利きかたからは想像できないが、エルディアはわりと過保護だ。その彼女が、ラスティを置いてほいほいと遠くに行くとも思えないので、宿の受付か近場の屋台にでも行ったのだろう。
そう結論付けて、おとなしく待つことにする。部屋に置かれた椅子に腰かけると、アランから受け取った資料にもう一度目を通す。
少しすると部屋の扉が開いた。
「あら、起きてたの?」
「ん。カーテンが薄い」
この旅で、王族の部屋のような遮光性の高いカーテンは一般的ではないことをラスティは学んだ。
あんなに眩しければ目も覚める。
「貴族って朝が弱いと思ってたけど、カーテンが立派すぎて、朝だって気がついてなかったのね」
「どんなまぬけだよ。夜が遅いから朝起きられないだけだろう?」
夜遅い理由が夜会やらなにやらなのだから、エルディアからしたら嫌みの1つも言いたくなる。
「へぇ、まぬけなんだと思ってたわ」
エルディアの言いたいことも分からなくはないので、ラスティは肩をすくめてやり過ごす。
「で、どこ行ってたんだ?」
「宿の前の屋台。朝ごはん買ってきたよ」
エルディアが差し出した袋を覗き込むと、パンとスープが入っていた。
シンプルだが、出来立てのいい匂いが食欲を刺激する。
小さなテーブルにそれを並べ、食べながら今日の予定を確認する。
「まず、ブルーベルのお祖父さんのところに行こう」
「そうだな……住所の場所を確認するか」
「あ、聞いてきたよ?」
ラスティはスープに口を付けながら、エルディアを見上げた。
仕事の早いことだ。
「ほかは?」
「ほかって?」
「ほかに何を調べてきたんだって聞いてんだよ」
効率主義のエルディアがそれだけで済ませるとは思えなかったので、一応聞いてみる。
「朝ごはん買って目的地の場所まで調べてきたのに、まだ働きが足りないって言うのね」
指を折って数えながら、わざとらしく息を吐く。面倒になったラスティはそのままパンに手を伸ばして、適当に相槌を打った。
「ああ、そうかい。期待しすぎて悪かったな。上出来、上出来」
「あんた、本当にかわいくないわね」
「褒めただろうが」
朝からしょうもないことで軽口を叩き合う。エルディアが調子を戻してきた証拠だろう。
いつまでも意識されててもやりにくいので、これはこれで良しとする。
(なにも変わらないわけじゃねぇし、少し時間をやるか……)
なにしろ、騎士になることが最優先なのは変わらないのだ。
ラスティはもう1つパンに手を伸ばした。
「ジャンポネイルのおばあちゃんたちが『竜の棲む丘』の岩の話をしてくれたでしょ? あれ、竜岩石っていうんだって」
「竜岩石……」
とにかく、この村には「竜」の付くものが多い。
「竜脈」「竜岩石」「竜の棲む丘」
――そして「雷竜」。
「曰くありそうでしょ?」
「これだけ『竜』に影響されているのに、なんで王家には記録されてないんだろうな……」
大昔にあったという神殿すら正式な記録には残されていない。
御伽話のように伝承された「竜騎士」のことを考えても、意図的に隠されたような気がするのだ。
「300年前の落雷は、王家の一番直近の竜騎士の誕生と時期が同じだ」
「まぁ、偶然じゃないだろうね?」
難しい顔をして黙り込んだラスティの額をエルディアは指で弾いた。
「考えてもしょうがないでしょ。それをいまから調べに行くんだから」
「……そうだな」
エルディアの明るい声にラスティは考えを切り替える。
先代は先代。
今は自分の試練のためにやれることをやるしかない。
「朝市で聞いたんだけど、ブルーベルのおじいちゃん、この辺りじゃ有名な竜騎士ファンらしいよ」
「なんだそれ」
「この村では『竜騎士』は大昔の話だけど、御伽話じゃないってこと」
どこに行っても伝承止まりだった話が、実話として残されている。
それだけでも聞く価値は十分にある。
エルディアはにんまりと猫のように目を細めた。




