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笑い転げたせいで腰痛が再発し、のたうち回る父親を無視して、エルディアが嫌そうにラスティに近づく。
「はい、ばんざーい」
適当な声掛けと共に服を剥ぎ取り、上からワンピースを被せる。
「…っぶ!!おま、もう少し丁寧にできないのか!」
「できるわけないでしょ、やったことないのに!」
お互い不本意そうに嫌々着替えをすませると、そこに完璧な美少女が誕生した。
キラキラとした金髪はヘッドスカーフで隠せば良いだろう。
「美少女は注目を集めそうだけど、これなら王族とは思われないね!」
「ラス、かわいいわよ!!」
ギュバンスは任務も忘れてラスティに頬擦りした。
ラスティが腕の中でもがき、どうにか抜け出す。
「鬱陶しい!!」
ギュバンスを下がらせると、エルディアに向かって投げやりにふんぞり返った。
「これで文句ないな!?」
「ないない。やるじゃない、かわいいわよ~」
エルディアがニマニマと笑ってやると、ラスティは不機嫌そうに眉を寄せる。
だが、少し考えるように沈黙する。
そして、エルディアを頭から足の爪先までじっくり値踏みするように眺めて、不敵に笑みを漏らした。
「まぁ、おまえの子どもの頃よりは美少女だろうよ」
「は!?なに、それ!!」
ふふん、と笑うラスティにエルディアが食って掛かる。
確かにその通りだが、初対面の男に鼻で笑われる筋合いはない。
「生まれながらの品格の差というものだな」
どうやら、これまでのやり取りで大分溜め込んだものを一気にやり返すつもりのようだ。
「お坊っちゃん、負けず嫌いだな?」
「かわいいでしょ?」
ベルクがギュバンスに確認すると、ギュバンスは悪びれもせずに微笑んだ。
保護者たちの生ぬるい目には気がつかず、ギャンギャンと文句を付けあったあと、2人はようやく一息付いた。
そこを見計らってベルクがラスティとギュバンスに声をかける。
「お2人とも竜騎士の具体的な手順は、まだ知らねぇんですよね?」
テーブルに付いたラスティは、コクリと頷いた。
「ああ。本当にほとんど何も分かっていないんだ」
「だったら、ざっくり今後の予定を説明してやれ、エルディア」
ベルクに促されて、エルディアはラスティとの大人げない口喧嘩で乾いた喉を水で潤してから、頷いた。
「あんたの『宣言』で体が小さくなってから、最初に来る『朔月』が、スタートの日よ」
「『朔月』…」
「そう。外を見て…」
窓の外に広がる空では、そこにあるはずの月が完全に姿を隠していた。
代わりに輝く星々がスパンコールのように散りばめられている。
「月のない夜から始まる…」
「そう。だから、あんたの儀式は今夜正式にスタートしたってこと」
ラスティは静かに頷いた。
「これからだけど、竜のいる聖域の場所を特定しに行くわ」
「運び屋が知っているんじゃないのか?」
ラスティの疑問にエルディアとベルクが首を振る。
ラスティはギュバンスと顔を見合わせた。
「どうやって特定するのかしら?方法が決まっているの?」
「カシスウェルには、その時が来たら分かるように、いくつかの暗号のようなものがあるんですよ」
「暗号?」
ラスティが目を瞬かせる。
子どもの姿に見合った幼い仕草に、思わずベルクの目が細くなる。
(娘…いいなぁ。こんなかわいい娘がいたらなぁ)
どすっ!!
脇腹に鈍い一撃を受けて沈み込んだ父親に代わって、エルディアが先を続ける。父親が沈み込んだ原因のくせに、しれっとした態度だ。
「王都にある帽子屋に行くわ」
「帽子屋に?」
不思議そうなラスティとギュバンスの目の前で、例の依頼状をヒラヒラと振った。
「この『赤鷲が金箔の麦を咥えた』図柄のブランドマークで商売してる帽子屋があるのよ」
「依頼状の図案と同じか…。それは曰くありそうな店だな」
「でしょ?」
エルディアがそのまま歌い出す。
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竜に会うならおめかししなきゃ。
金の麦で編んだ帽子。
お花で綺麗に飾りをしなきゃ。
赤、黄、青、紫、橙、緑もいるわ。
大変、こんなに沢山飾れなかったわ。
赤、青、紫、そして緑を飾ってちょうだい。
黄と橙は花瓶に飾って置いていくわ。
どう?きれいでしょ?
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ポカンとするラスティに目を向けると、エルディアが目を細めた。
「ね?曰くありそうでしょ」
「確かに、な…」
歌詞の内容を小さく復唱してラスティが頷いた。
はっきりと「竜に会うなら」と言っている。
「うちの子守唄。ちっさいときからこれで寝かしつけられるから、うちの人間はみーんな覚えてるの」
手の込んだ仕掛けだ。
だが、確実に伝承されている。
ラスティは念入りなカシスウェルの仕組みに息を吐いた。
「あぁ、そうだ。あんたが眠れないときは、あたしがこの子守唄を歌ってあげるわ、お坊っちゃま」
「いるか!子守唄が必要な年じゃない!!」
言い返したラスティにエルディアが意地悪そうに唇を引き上げた。
「いるんじゃないのー?こーんなに小っちゃい僕ちゃんなんだから」
どうやら、2人の嫌みの応酬は決着していなかったらしい。
揶揄うようなエルディアの言葉にラスティの眉間のしわが深くなった。
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