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土日は3話公開です。
――竜に会うならおめかししなきゃ。
金の麦で編んだ帽子。
お花で綺麗に飾りをしなきゃ。
赤、黄色、青、紫、橙、緑もいるわ。
大変、こんなに沢山飾れなかったわ。
赤、青、紫、そして緑を飾ってちょうだい。
黄と橙は花瓶に飾って置いていくわ。
どう?きれいでしょ?
明かりの落とされた部屋に、ラスティの甘く透明な声が優しく響いている。
エルディアはラスティに背を向けて意識をそらすように固く目を閉じていたが、ラスティの歌う子守唄にじっと耳を傾けていた。
「……あんた、全部覚えたの?」
「おまえが、ことあるごとに夜な夜な歌うからだよ」
まるで怪談話のような扱いだが、確かに結構な頻度で聞かせた気がするので、エルディアはぐっと言葉に詰まる。
「落ち着くんだろ? まあ、聞かされ続けたせいで俺もそんな気がしてきたしな」
「意外と単純ね?」
「おまえほどじゃないよ」
暗がりの部屋で背中を向けているのでラスティの姿は見えない。
声はさすがに幼い少年の高さではないが、しゃべり方や雰囲気はずっと一緒にいたラスティのものに間違いない。
子守唄の効果があったのか、それとも別の要因のせいかエルディアは、ようやく現状を受け入れ始めていた。
(急に大きくなったからびっくりしただけ。思ってたより顔面が整ってたけど、想定の範囲内の色男よ。全然大したことないただの美形よ……)
とはいえ、心の中はまだ全然落ち着いておらず、動揺したままの思考回路は支離滅裂ではあったが。
それでも背中越しに感じているこの男が『ラスティ』であるということは、なんとか飲み込んだ。
(そうよ、生意気でかわいくないところは変わってないわ!)
「……明日、服を買いに行かなきゃね」
「あー……そうだな。あ、あの占い師のところから借りてくるか?」
「今日別れたばっかりなのに、気まずくない?」
それでも、確かにジーンだって全く無関係な立場でもない。そう考えると服ぐらいは融通してもらっても良いのかもしれない。
2人はそのまま何でもないことをぽつぽつとしゃべりながら、明日の出発の予定を確認していった。
そのうちにエルディアの方からすぅ……と寝息が聞こえてきた。
ラスティは上体を起こして、その顔を覗き込む。
「子守唄が効いたのか? やっぱり単純だな」
そっと髪に触れると、エルディアが小さく身じろいだ。
ラスティは少し名残惜しそうに髪をすいて、そのままベッドから起き上がる。
そしてソファーに移動すると、そこにごろりと寝そべった。
「女性と同じベッドで寝るわけにもいかないしな……」
誰に聞かせるわけでもなく呟く。
朝まで同じベッドに寝るのはラスティにとっても心的負担が大きすぎる。
エルディアを揶揄うために、あえて自分の気持ちを抑え込んだがこれ以上は多分無理だ。
(竜騎士になることが優先だ……)
ラスティは体の向きを変えると、早鐘のようにうるさい心臓の音を誤魔化すように強く目を閉じた。
口の中でもう一度、子守唄を繰り返す。
エルディアに繰り返し聞かされて、なんとなく落ち着くようになったのは本当だ。
(早く終わらせよう……)
終わらせたあと、どうしたいのかを考えることは放棄して深い眠りに落ちていった。
―――
部屋に差し込む朝の光にエルディアが寝返りを打った。
ぱふ。
柔らかいクッションの手触りに、昨日の夜、自分で敷き詰めたことを思い出す。
ゆっくりと上体を起こすと、クッションのその先にラスティがいない。
「あんにゃろ、移動したわね」
ラスティの行動に思わず舌打ちをして、ラスティがいるであろうソファーに移動した。
「ん……?」
エルディアが見下ろした先にいるのは、よく見慣れた美少年。
ソファーで丸くなっているラスティの体は再び幼い姿に戻っていたのだ。
エルディアはふるふると肩を震わせてその姿を見つめた。
正直なところ、これから先ずっと19歳のままだったら、どう対応していいのか分からないと思っていたところだ。
(戻ってる!!!)
戻っているわけではないのだが、エルディアにとっては関係ない。
小さなラスティに思わず抱きついた。
「良かったぁぁぁ!! かわいくなってるぅぅぅ!!!」
「ぐぇっ……!?」
寝ているところに急に抱きつかれたラスティからうめき声が零れる。
無理やり起こされたラスティは、くっつくエルディアを引き離して自らの体を見下ろした。
「一晩だけなのかよ!!!」
「あんた、絶対こっちのほうが良いわよ!!」
「ふざけんな! ってか、くっつくな!!」
どういう仕組みなのか、どうやら体が戻ったのは一時的なものだったらしい。
あまりにも短すぎた反撃の期間にラスティはこぶしを握り締めた。
「くそ、一刻も早くこのふざけた儀式を終わらせるぞ!」
切実な思いを込めて、大声で宣言したのだった。
いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。
ようやくあらすじを回収出来ました!
「王家の運び屋」メモ:
ジャンポネイル(町)
・元の酒は「日本酒」
・本来なら、ゼラックから街道を使っていける温泉地
・どこかで知ったような異国情緒のある町。
・特に転生者とか異世界チートとかがいたわけでもなく、既視感があるとしたらたまたまです。
ーー
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