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土日は3話公開です。
エルディアがジーンの家に入ると、ラスティはすでに風呂から上がっており、すっかり髪も乾かし終えていた。リビングの椅子に腰かけて、ジーンに仕えている例の美少女とお茶を飲んでいる。
「やだ、美少女が2人もいるとメルヘンチックが半端じゃないわ!!」
妖精たちのお茶会とでも名付けたくなるような絵面に思わず声を上げる。
「入ってくるなり、騒々しいやつだな」
「いらっしゃい、なのです!」
エルディアのその声に眉を寄せたラスティとは対照的に、美少女は笑顔でエルディアに駆け寄った。
エルディアは、ぱふっと抱きついてきた美少女の頭を撫でてラスティに視線を投げた。
ラスティは小さく肩をすくめる。
「ラスティさんとエルディアさんがお揃いになったら、主を呼ぶことになっているのです」
「だ、そうだ」
少女が胸を張ってエルディアを見上げた。エルディアは良くできました、と褒めるようにもう一度頭を撫でた。
「あら、そうなの。偉いわね?」
「偉いのです!」
そういうと、少女はいつものように花びらを撒き散らして消えた。
「あの子、何なのかしらね?」
「さぁな」
少女が消えてしばらくすると、今度は家の主ジーンが、やはり花びらを撒き散らしながら現れた。
エルディアとラスティは黙って目を合わせると、もはやこういう芸人なのだろうと割りきって、そこには触れないことにした。
「やあ。今日でちょうど1週間だね」
そう言いながら優雅に歩み寄り、ラスティの顎を掬い上げた。
ラスティは不快そうに眉を寄せたが、大人しくジーンのすることに身を任せる。
ジーンはラスティの琥珀色の目を覗き込むと、唇を綺麗に引き上げた。
カフェに集まる女性たちなら、悲鳴を上げて気絶しただろう。だが残念ながら相手はラスティなので、小さく鼻を鳴らすだけだった。
「どうなの? あんたが言ってた準備ってやつは終わってる?」
エルディアが背後から声をかけると、ジーンはその指先をラスティから離して、ゆっくりと頷いた。
「ああ。竜気は満ちたようだよ」
「そのわりには、『変化』とやらは感じられないんだが?」
ラスティが見上げると、ジーンは目を細めてラスティを見つめ返した。
「じきに分かるよ」
「じきにって、なんだよ……」
とにかく、なんでもかんでも曖昧なジーンにラスティは舌打ちをした。一方、ジーンは相変わらず相手の反応など気にしない。
「まぁ、おおむね準備は整ったということだよ。明日にでも出発できるだろう」
「そう。まぁ、あたしたちには全然分からないけど、あんたがそう言うなら、そうなんでしょうね?」
「君たちにも、すぐに分かるよ」
最後まで意味深な顔で微笑むジーンに、胡乱な目を向けながら、エルディアとラスティはジーンの家を出た。
宿に戻る途中にある料理屋で夕食を済ませる。ここしばらくは、ずっとこの料理屋を利用していたので、店員ともすっかり顔馴染みだ。
「美味しかったけど、これも今日で食べ納めね」
「そうだな」
「あら、そうなのかい?」
2人が最後の食事を楽しんでいると、おかみさんが声をかけてきた。
「うん。明日の朝にはここを出るつもりだよ」
「あらあら。ラスちゃんはかわいいから、うちの店のお客さんたちもすっかりメロメロだったのに、残念だわ」
おかみさんの声に常連客たちが反応して、かわいいラスちゃんにあれもこれもとお菓子を渡し始めた。
「あんた、安定のおやつハンターねぇ」
「もう、こんなにいらない!!」
ラスティは笑いをこらえているエルディアの後ろに回り込み、見えないように手の甲をぎゅっとつねる。
「痛っっ!! もー、恥ずかしがりやなんだから!」
エルディアは手の甲をさすりながら、親切な常連客たちに礼を言って、おかみさんに支払いをすると店を出た。
――辺りは夕暮れ時特有の、ノスタルジックな雰囲気に染まっている。
ジャンポネイルという町は、この時間帯がもっとも幻想的だ。
少し前にイブルグラム山脈で見た夕焼けを思い出して、ラスティは目を細めた。あの時もその色にエルディアの目の色を重ねた気がする。
ジャンポネイルの夕焼けも、やはりエルディアの目の色のように綺麗だった。




