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土日は3話公開です。
「ハワード博士、意外と有益な情報を持ってたな……」
エルディアは小さくつぶやいた。
正確にはアランとその助手のブルーベルの2人だ。特にブルーベルの祖父の話は神殿に直結する有力な情報になりそうだった。
思いのほか神殿に関する詳しい話を聞けそうだったので、エルディアはラスティがジーンの温泉に行っている間は、アランの研究室に通うことにした。
もちろん、ただでとは言わない。
エルディアは学者ではないので専門知識はなかったが、運び屋という職業柄、荷物の整理は得意だった。なので、研究室の整理整頓を申し出てみたのだ。
「まあ、だいぶごちゃごちゃしてるみたいだし、整理くらいなら手伝えるよ?」
「いいんですか!!」
ブルーベルはその申し入れに二もなく飛びついた。
エルディアは念のため、部外者が見てはいけないものがないかを確認してから作業に取り掛かる。乱雑に積み上がったファイルにラベリングして、順番に揃えて次々に並べていく。
全てがみるみる綺麗に棚に収まっていく手際の良さにブルーベルは震えるほど喜んだ。
「ああ! いつも書類が溢れて雑然としていた部屋がこんなにスッキリと!!」
「大袈裟じゃない? もともと大まかには分けられてたし、大したことはしてないよ?」
「そんなことありません!!」
今まで、余程書類探しに苦労していたのだろう。ブルーベルはエルディアの手を握りしめて、潤んだ目で見上げた。
「エルディアさんが書類の整理をしてくださるので、その間、私は博士を見張ることができるんです!」
「見張るって……」
「あー!! 博士、その書類はゴミじゃありません! 研究費の助成金申請書です!」
言ってるそばからブルーベルは博士の手から乱暴に書類を取り上げた。
「ねぇ、高名な博士なんだよね……その人。そんな扱いでいいの?」
「良いんです! こんな半分寝てるみたいな顔して!!」
自分の後頭部をペシペシと叩くブルーベルを見上げて、アランはデスクの前に座ったまま肩をすくめた。
「ブルーベルはすこしばかり騒々しいんだ」
「誰のせいですか!!」
日常会話がこれだとしたら、ブルーベルの苦労が忍ばれるというものだ。
エルディアは気の毒そうな目をブルーベルに向けて、励ますようにその肩を叩いた。
「あんた、苦労してるのね?」
「エルディアさぁん……」
長年の苦労を理解してもらえて、ブルーベルのエルディアへの好感度は上がる一方だった。
「あ、ところで頼まれていた資料ですが、竜に関係する伝承の取りまとめと、神殿だと思われる場所の地図……本当にそれだけでいいんですか?」
「うん、十分だよ。ありがとう、助かるよ」
ブルーベルはその好感度に比例して、親切にエルディアの調べものに付き合ってくれた。
3日間エルディアがせっせと片づけをしている間にまとめ上げられた資料は、いくつかの伝承がきちんと精査され、神殿の候補地も範囲がかなり絞り込まれている。
エルディアは満足そうにそれを受け取り、唇の端を引き上げた。
一通り資料を確認したあと、思い出したようにちらりと時計を見上げる。
「あぁ、もうこんな時間か」
「あら、ラスちゃんを迎えに行く時間ですね?」
ブルーベルはラスティが訳有りなことは察していたが、エルディアたちが多くを語らないので深くは尋ねなかった。
アランが「殿下」とか言っていた気もするが、それも忘れることにした。
なんならエルディアがルーアという名前だということも受け入れて、もし誰かに聞かれたらそう答えるようにしていた。
だから、ブルーベルにとってラスティはルーア研究員の妹さんの「ラスちゃん」だ。
「そろそろ、行かないと寂しくて泣いちゃうかも」
「お姉ちゃん子ですもんね!」
2人は共犯者のような顔で笑い合った。
「そろそろ、行くね。3日間、ありがとう!」
「気をつけて行ってらしてくださいね?」
「なにか貴重な情報を仕入れたら必ず教えてくれたまえよ!」
アランはエルディアにしつこく念を押し、ブルーベルは名残惜しそうな顔で見送った。
通いつめた研究室とも今日でお別れだ。
うまく行けば明日の朝にはジャンポネイルを出発できる。
「さ、ラスの方は準備できたかしらね?」
――今日で一週間。
ジーンの言葉通りならラスティの体には「竜気」が溜まっているはずだ。
エルディアは気持ち急ぎ足でジーンの家に向かった。




