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朝の光が優しく差し込んでくる。
ラスティはころりと寝返りを打った。
ふに。
寝ぼけた手でばふばふとそれを叩き、クッションであることを確認する。
同じベッドで寝ることは回避できなかったが、なんとか堤防を作ることに成功したラスティは満足そうにまた体を丸めた。
「起きなさいよ!!」
気持ちよく二度寝をしようとしたところで、エルディアがクッションの1つをラスティにぶつけた。
「……うるさいな」
「うるさくないわよ、もう朝よ!」
ラスティは渋々体を起こした。
ジーンと再会した日から3日目の朝である。
どっちがベッドで寝るのか揉めたあの夜から、3日目である。
ようやく状況に慣れて眠れるようになったのだからもう少し寝かせてほしかった。
「もー。今日はハワード博士のところに行くって言ったでしょ」
「……こんな、朝早くから行っても研究者が起きてるわけないだろ」
耳元で大声を出すエルディアを面倒くさそうに見上げた。
なんだかんだでエルディアは朝型なので、朝は元気がいい。
「だから、カフェでご飯食べて、先にジーンのところの温泉に浸かってから行こうねって言ったじゃない」
……言った。
昨日の夜、寝る前にそんな話をした気がする。
あくびをしながらラスティはベッドから降りると、とてとてと洗面台に向かい顔を洗ってぼんやりとした頭をすっきりさせた。
この3日間はジーンと顔を合わせるのも面倒くさいので、朝ではなく午後に訪れていたのだが、今日は午後から研究室に行く予定だから午前中に済ませておくことにしたのだった。
「あいつ、本当に毎朝あの家に出てきてるのかな」
「それも今日行ったら分かるんじゃない?」
身支度を整えると、2人はジーンの家に向かった。
いてもいなくても勝手に入っていいということだったので、初めから確認などしない。
ドアベルを鳴らすことなく、渡された銀色のカギで扉を開けた。
玄関に菫色の目をした美少女が立っていて、目が合った。
「あら、おはよう?」
「おはようございます」
「もしかして、待ってた?」
恐る恐るエルディアが尋ねると、少女はフルフルと首を振った。
エルディアがほっと息を吐く。
毎朝待っていたのかと思って、少し罪悪感が湧いたのだ。
違っていて良かった。
「あの男は中にいるの?」
「主はこれからお出かけするところです」
言葉を交わしていると、奥からジーンが現れた。
「おや、今日は早いんだね?」
「ちょっと午後に用事があってね」
軽い会話の後、エルディアは少しだけ難しい顔をしてジーンを見た。
ジーンは首をかしげてエルディアの言葉を待つ。
「あのさ。もう3日もここにいるんだけど、あたしたちちょっと『お尋ね者』なのよ。あんまりのんびりできないんだけど、本当に1週間いないとダメなの?」
のんびりとした町に溶け込みながら、ラスティに竜気とやらが溜まるのを待っているわけだが、そもそもそんなに余裕のある旅でもないのだ。
心のどこかに常に引っかかっている懸念事項をエルディアは口にした。
ラスティは片眉を上げてエルディアを見上げた。
同じことが気になっていたからだ。
「ああ、君たちの追っ手についてはこちらで少しばかり手を回しておいたよ」
「手を回したって?」
エルディアの問いかけにジーンは意味深に笑うだけだった。
答える気はないらしい。
「それって、信じていいの?」
「もちろんだとも。君が言った通り、こちらの不手際もあるからね。ちょっとしたおまけだ」
エルディアとラスティはお互いに視線を交わしたが、どちらともなく諦めたように息を吐いた。
得体の知れない男だが、信じるしかない。
「OK。それについては信じるわ」
「どんな手を使ったのか、明かす気はないんだな?」
一応ラスティは重ねて問いかけたが、ジーンの微笑みが深くなっただけだった。
「少なくともこの町にいる間は、その心配はしなくていいよ」
それだけ伝えるとひらひらと手を振って外に出て行った。
カフェに向かうつもりなのだろう。
エルディアとラスティの横で美少女は主に向かって手を振っている。
「あんたは行かないの?」
「わたくしはお留守番なのです!」
ドヤっとした顔で胸を張られた。
エルディアは長い息を吐いて、少女の頭に手を置いた。
「そう、えらいわねー」
「偉いのです!!」
そう言って、花びらを散らして消えてしまった。
お留守番の意味をわかっているのだろうか……。
あまり深く考えないようにしながら、エルディアとラスティはジーンの家のリビングに入った。




