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土日は3話公開です。
地図に指定された場所に到着すると、エルディアは手元の地図と建物を見比べて意外そうな顔をした。
「思ったより小さい普通の家だわ…」
「『占いの館』なんていうから、どんないかがわしい場所かと思ったが…」
小さな門を通り抜けると、扉の前には鉢に植えられた花がかわいらしく並んでおり、扉には『ジーン・ブルムン』と書かれた銅板がぶら下がっていた。
「なんでこんな生活感出してんだ…」
「わー…。本当にこの町で生活してんのかな」
エルディアとラスティは思わず顔を見合わせた。
とはいえ、いつまでも扉の前にいるわけにもいかないのでドアベルを鳴らしてみる。
すぐに、家の中から「はい」という声がして扉が開いた。
花のような美少女が菫色の澄んだ目でエルディアを見上げる。
そしてラスティに視線を移すと、その琥珀色の目を見つめて、にこりと微笑んだ。
「ようこそお越しくださいました。主のもとにご案内いたします、こちらへどうぞ」
鈴のような声で、歌うように2人を家の中に迎え入れた。
「大変!あんた、ライバル出現よ!!」
「なんでだよ、対抗しねぇよ!!」
タイプの違う美少女の登場に、エルディアが思わずラスティの肩を叩くと、ラスティは心底面倒くさそうにその手を振り払った。
そもそも占い師に話を聞きに来ただけなのだ。さっさと終わらせたい。
一歩先に行く少女が振り返って待っているので、エルディアを促して後に続いた。
リビングのソファーに優雅に腰を下ろしていたジーンは少女が客人を案内してきたのを見て、すっと立ち上がった。
少女がジーンのもとに駆け寄る。そしてふわっと花びらを散らして消え去った。
「…消えた!?」
ジーンは2人の反応を気に留めることもなく、何事もなかったように椅子をすすめる。
エルディアとラスティはこの不思議な男に不用意に踏み込んではいけないと直感し、黙ってそのすすめに従い、腰を下ろした。
「…気になるかい?」
「気にしないことにしているの」
ジーンの意味深な質問にエルディアは短く答えた。
ラスティが青年から子どもの姿になっているくらいだ。『竜騎士』に関わることについては、どんな不思議なことがあったとしてもおかしくはない。
エルディアのその答えは、ジーンのお気に召したようだった。ジーンは目を細めて頷く。
そして、正面に座った2人に改めて声をかけた。
「ジャンポネイルはどうだい?」
「あんたがここに来いって言ったようなもんでしょ?」
「ああ、そうだな。…そして、ずいぶん早く到着してしまったね?」
含みのある言い方にエルディアの眉が寄った。
まるで問題があるような口ぶりだ。
「こっちも急いでるのよ。問題があるの?」
「そうだな…。問題といえば問題だ」
エルディアは回りくどいやり取りを放棄してジーンの目を見つめた。
慎重に、だが直球を投げる。
「早すぎることの、なにが問題になるわけ?」
「そっちの『竜騎士』候補の体が追いついていないだろ」
「俺の体…?」
ラスティが自分の体の話になったことに反応して口を挟んだ。
ジーンはラスティをまじまじと見つめると、鷹揚に頷く。
「そもそも、君たちは帽子屋への到着が早すぎたんだよ」
「なによ、それ」
「人間が竜の力を得るためには、体の根本的な部分を、竜の力を受け入れられる状態に組み替える必要がある…それは知っているね?」
ラスティは小さく頷いた。
そもそもそのせいで体が幼くなっているのだ。
「そのための時間も考慮して、謎かけをしているのだが…」
「謎かけだったんだ、あれ…」
エルディアは思わず半目になって声を漏らした。
そんなエルディアにジーンは面白そうな顔のまま頷いた。
「巨大な力を得るためにはそれなりに労力を費やしてもらう必要があるからね」
「回りくどいわね」
「王族である彼らが、そのために平民に協力を仰げるかとか、そのあとも力を合わせるだけの適応力や柔軟さがあるか、など資質を問うための課題も兼ねていると思ってくれていいよ」
エルディアの疑問に答えているようだが、ラスティに言い聞かせているようでもある。
エルディアは気にしていないようだが、ラスティの立場からすると納得せざるを得ない課題がいくつか含まれている。
そもそも平民に頭を下げなくてはならないというのは、人によってはかなり難題だろう。そこで多くがふるいに掛けられることになる。
ラスティは黙ってその話に耳を傾けた。
「そんなわけで、帽子屋についても一緒に協力して探し出してほしかったんだが…」
「え、あたしが悪いってこと!?」
ジーンの言葉にエルディアは心外だと声を上げた。
あんなに分かりやすいヒントを出しておいてそれはないだろう。
エルディアのその顔には、はっきりとそう書かれていた。




