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土日は3話公開です。
針の筵と嘆いたわりにはけろりとした顔で軽食のオーダーを済ませると、エルディアはテーブルに肩肘をついて顎を乗せた。
「なんでこんなところにいたんだろうね?」
「占い師か?」
「そう。あいつは運び屋のあたしとか、帽子屋のテネシーとは絶対に役割が違うと思うんだよ。…なんか気になってさ」
エルディアが王都の帽子屋のことも引き合いに出しながら、水の入ったグラスを片手で弄んだ。ラスティもそれは同じように感じたことだったので頷く。
「そうだな。少なくともおまえや帽子屋は、俺が訪ねるまで自分の役割を知らなかったしな」
それぞれの家に伝わる話の通りの依頼主が訪ねて来たから、本来の役割が発生したという流れは運び屋も帽子屋も同じだ。
「だよね?でも、あいつはあんたが来ることを知っていて先回りしている…」
本当は占い師なりの確認の仕方があるのかもしれないが、表情や立ち振る舞いからその可能性は低いとエルディアは思っていた。
「どっちかっていうと、選定者側な感じがするのよ」
「選定者?」
「試験官とかでもいいけど、とにかく試練を企画した側ってこと」
それは、竜騎士候補の協力者ともいえるエルディアやテネシーたちとは明らかに立場が異なる。
僅かに眉を寄せて、エルディアはひょいとグラスを傾けて喉を鳴らす。
「敵意はなさそうだけど、得体が知れない」
グラスをテーブルに置くと、今度はジーンがメモを書きつけた地図をラスティにひらひらと振ってみせた。
町のはずれにある建物らしき場所に丸が付いている。
「とりあえず、行ってみるしかないけどさ」
「確かに怪しいが、何かを知っていることだけは確かだからな」
2人が占い師について考えを巡らせていると、先ほどよりはだいぶ落ち着きを取り戻した店員が料理を運んできた。
可愛らしい皿に華やかに盛り付けられたパンケーキにエルディアは目を輝かせた。
「わ!おいしそう!!」
「…朝食にするには甘すぎないか?」
「頭使うんだから、糖分は大事なの!」
おっさん好みのやきとりから、少女たちの夢中になるかわいらしいパンケーキまで、本人の申告の通り「おいしいもの」なら何でも食べてみたいらしい。あまりの浮かれようにラスティは苦笑した。
そして占い師のことはとりあえず保留にして食べることに専念する。
「今は考えてもしょうがないし、行ってみるしかないのは同感だ」
「だよね。ま、食べますか」
2人はテーブルに並べられたパンケーキに手を伸ばすと、それぞれ口に放り込んだ。
想像通りの甘ったるいそれを、目を細めて口に頬張るエルディアとは対照的に、甘すぎたのかほんの少しラスティは眉を寄せる。
「…やっぱり甘すぎる」
「えー、このくらいでちょうど良いんじゃない?」
エルディアは満足そうに自分の唇の端に付いたクリームを指で拭って舐めとった。
ラスティは意外そうな顔でエルディアを見つめる。
メルヘンチックなふわふわのパンケーキと、エルディアの荒めの気性は不釣り合いな気がしたのだが、こういうものも好きらしい。エルディアの好みをまた1つ知れたことが、思ったよりラスティの気持ちを浮かれさせた。
それでもラスティは思った感想とは別のことを口にして誤魔化す。
「…行儀悪いな」
「やだ、口うるさいわ、この子!!」
ラスティが隠した気持ちに気が付くことなく、エルディアが大げさに嘆いてみせた。
それを見ながらラスティは思いきり笑ってやった。
賑やかな食事が終わると、支払いを済ませて2人は店を出る。
「このあとサンダクラプっていう村も、もう少し調べてみたいし、さっさとあの占い師のところに行っちゃおうか」
「ああ、神殿とやらもそのサンダクラプにある可能性が高そうだしな…」
エルディアはメモが書きつけられた地図を出して、ジーンの指定した場所を確認した。
少し離れているが歩いていける距離にある。ここに住んでいるのかどうかは分からないが、近くのカフェに訪れるくらいには馴染んでいるのかもしれない。
ふと、エルディアはどうでもいいことに気が付く。
(ここに住んでいるとしたら、毎朝あの熱烈な浮かれた状況になってんのかしら…)
きゃあきゃあと店を囲んでいた女の子たちが、たまたま遭遇した美青年に浮かれていたという感じでもなかった気がする。
毎朝、ここできゃあきゃあ言われているのか…。
「やだな…。もしかして結構目立っちゃったんじゃない?」
「安心しろよ。そういう目立ち方は追っ手の捜索には引っかからないだろうからな」
「そんなの、分からないじゃない」
心底不本意な状況に、エルディアはぐっと眉を寄せた。
そして、ジーンに会ったら絶対にそれも文句を言ってやると、強く心に決めるのだった。




