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とりあえず、一旦、ドラコニスを停めるために駐車場を探すことにした。
くるりと見渡すと、すぐに案内板が目に入る。
「あっちにあるみたい、行こう」
「ん、そうだな」
見つけた駐車場には様々な乗り物が停車しており、ドラコニスも目立つことなく収まった。
履き替えたタイヤや山登り用のカスタマイズもあって、以前のドラコニスと印象も変わっている。
「元の男前さは隠しきれないけど、変装としては十分でしょ。興味のないやつには分からないわ」
「いちいち擬人化するな。装備が変わったから前のと違うものに見えるはずだ、で良いだろう?」
「いちいち、細かいわねぇ?」
ラスティがエルディアの発言を気に入らないのは、別の理由があるからなのだがエルディアに分かるわけもない。
言いがかりのようなラスティの言葉に肩をすくめた。
ただの難癖に近いことは、ラスティにも自覚があるので不機嫌そうに一歩踏み出した。
「行くぞ」
「あ、待ちなさいよ」
何はともあれ、これで2人きりだ。
ずっと2人きりなのに、ドラコニスをカウントしなくてはいけないこともラスティの気持ちをモヤモヤさせる原因だった。
(器が小さすぎる…)
軽い自己嫌悪もあり、余計に不機嫌な顔になる。
眉を寄せるラスティの手を、追い付いたエルディアが握った。
「待ってったら」
「…はぁ」
握られた手を見つめてラスティは小さく息を吐いた。
不満があるのだと捉えたエルディアが覗き込むので、思わずラスティは目を逸らしてしまう。
「分かってる。仕方ないってことだろ」
「分かってるなら良いのよ?」
ご機嫌斜めのラスティの手を引きながらエルディアは絶対離さないと、力を込めた。
「痛ぇよ」
「だって、離しそうなんだもん」
「離さないから、力抜け」
諦めたラスティが握り返したので、やっとエルディアは力を抜いてくれた。
(くそ。いつまで続くんだ、これ)
心の中では悪態をつくが、なんとか表面上だけは取り繕った。
ほとんど意地だ。
2人が駐車場から出たところで、町の花売りが寄ってきた。
「可愛いお嬢さんに、お花はいかがですか?」
籠一杯の美しい花にエルディアは目を瞬いた。
花売りの少女の手首には、花を模った綺麗な緑色の石と琥珀を嵌め込んだブレスレットがキラキラしている。
「あんた、ついにその格好でも『お嬢さん』って呼ばれるほどに…」
「そうだな。おまえは絶対に『可愛い』お嬢さんじゃないから、俺のことだろうな」
「か、かわいくなーい!」
エルディアが思わずラスティに小声でささやくと、やはり小声でラスティに言い返された。その返事のかわいげのなさにエルディアはラスティの頬を左右に引っ張る。
「やめろよ!」
ラスティがエルディアの顔を押し返しグダグダやりあっていると、花売りの少女が吹き出した。
「仲が良いんですね?」
「そう見える?この子ったら本当に生意気なのよ?」
「うるさいな、おまえが悪いんだろ」
花売りの少女に笑われたのが不本意なのか、ラスティがエルディアに向かって舌を出した。
そのラスティの頭を押さえつけながらエルディアが花売りに向かって眉を下げる。
「あ、でも、ごめんね?お花はいらな…」
「いくらなんだ?1本くれ」
エルディアは断ろうとしたが、押さえつけられていたラスティが、するりと抜け出して少女に値段を尋ねる。
エルディアがきょとんとしている間に、ラスティは花売りから花を1本受け取るとコインを手渡した。
「ありがとうございました、よい旅を!」
少女は軽やかに去っていき、また別の客に花籠を見せて回っていた。
「花、好きなの?」
「やる」
「え、いま?いらないよ?」
不思議そうにするエルディアに買った1輪の花を押し付けて、花を包んでいた紙を広げる。
エルディアは押し付けられた花をくるくると回して眺めていたが、ラスティの様子に気がついて、包装紙を覗き込んだ。
「うわぁ…」
そこには何だか分からない文字のようなものが並んでいた。
読めないが、見覚えはある。
「お兄さん?なんて?」
「兄上じゃない…」
ラスティは包装紙を適当に破ってゴミ箱に放り投げた。
「義姉上だ」
その言葉を聞いて、エルディアはスッと花をラスティの髪に挿した。
男の子の格好をすれば男の子に、女の子の格好をすれば女の子に見えるということは、中性的ということだ。
一押しで印象が変わる。
「なにしてんだよ…」
「まだ、変装しておいた方が良いのかなって思ってさ?」
少なくとも国王夫妻には居場所がバレているということだろう。
エルディアはこの場所に先回りされたことに、密かに戦慄していた。




