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土日は3話公開します。

焼ける肉の匂いと炭火の熱気が店内の温度を押し上げていた。

夕方より少し早いくらいの時間だというのに、その酒場は多くの人で繁盛している。


「酒場…?」


「焼き鳥だもん」


「目立つだろう…俺が」


おっさんたちで賑わう店内に、恐ろしいほどしっくりと馴染んでいるエルディアにラスティが戸惑ったような視線を向けた。


「大丈夫、大丈夫。酒場じゃ美少女だろうが美少年だろうが動物みたいなもんだもん」


あんまりな言いざまにラスティが鼻にしわを寄せた。

全ての子どもに失礼だろう。


「そもそもこういうところに連れてきたらいけないんじゃないのか?」


「なに、教科書みたいなこと言ってんのよ。赤ん坊ならともかく、あんたもう10歳でしょ」


正確には10歳でもないのだが、見た目の話ならそうだ。

それでも納得いかないのか、ラスティが渋い顔をする。

そんなラスティにエルディアがメニューを突き出した。


「ごらん!オレンジジュースって書いてあるでしょ!?」


「それがなんだよ」


「本当にお子さまお断りなら、こんなお子さまメニューはないのよ!」


暴論だ。

単に自分がこの酒場で焼き鳥が食べたいだけだろう。

ラスティがエルディアの浅はかな理論に半目を向ける。


「わはは。おもしれぇな、姉ちゃん」


ふいに、隣のテーブルで酒を飲んでいた男が、2人の会話を聞いて豪快に笑いながら話に入ってきた。


「うるさいな、今はこの子を教育中なの!」


「ははは。そっちのお嬢ちゃんにはちょっとうるせぇか、この店は」


「…そういうわけじゃないけど」


すっとエルディアの後ろに隠れる。

もはや、息を吸うように身につけた所作だ。


「お、おっさんは怖ぇか?悪い悪い」


「いいの、気にしないで。人見知りなだけだから」


ラスティを奥に座らせてさりげなく男との距離を確保すると、エルディアはさらりとその男を観察した。


町の労働者、筋肉質な体格からも肉体労働系の男だろう。

人懐っこい笑顔ですぐに隣のテーブルに声をかけてきて、それが嫌味ではない。

こういう男は色々なうわさ話を知っている。


「あんた、今日の仕事はもう終わりなの?」


「おう、今回の仕事は2、3日の短い仕事でな。明日には王都の方でもうひと稼ぎするために出発する予定だ」


「あっちこっち大変だね?」


エルディアが調子を合わせた。

男は大きな口を開けて豪快に笑った。


「姉ちゃんたちは旅行か?」


「うん。ジャンポネイルに行くところよ。あんた知ってる?」


「ああ、あの温泉街か」


男が焼き鳥を引きちぎるように口にしながら、エルディアの話に乗ってきた。

どうやら根がおしゃべりな男のようで、話ができるだけで楽しいらしい。


「温水が出るんでしょ。竜脈なんて初めて聞いたよ」


「あそこはもともと竜が眠る町って言って有名だからな」


「竜が寝てるの!?」


大げさに驚くエルディアに、男が得意げに鼻を膨らませた。

自分の話に興味を持ってもらったことがうれしいようだ。


「本当に寝てるわけじゃねぇだろうよ。ただ、湯が湧き出た理由を昔の連中が竜が原因だって話にしたってところだろ」


「でも、地面から湯が出るなんて聞いたことないよ?」


「だから、何かが眠ってるんじゃないかって話になったんだろうな。結構古い伝承らしいぜ。地元の爺さん婆さんは、本当に信じてるしな」


そのくらい古くから、竜の伝承が根付いている町だということだろう。

ラスティの前の竜騎士の誕生が300年ほど前なら、そのくらい情報があいまいになっていてもおかしくはない。


「その近くって神殿とかがあったりするの?」


「神殿?さあ、それは聞いたことはねぇなぁ」


エルディアが念のため、例の占い師の言っていた「神殿」についても触れてみると、男はそれに関しては首をひねった。

そこまでの情報はないらしい。


「そっか。竜とかなんとかって物語っぽいから、そういうのもあるのかと思ったわ」


「なんだ、姉ちゃんも見かけによらずロマンチストってやつか?」


「見かけによらずは、余計だよ!」


僅かな間に、大体聞きたいことを聞き出したエルディアにラスティは思わず感心した。

このあと、エルディアは何人か適当に見繕って似たようなことを繰り返した。


(それにしたって、焼き鳥とエールの減り方がえげつねぇな…)


うわさ話好きの変わった観光客の女としては全く違和感がなかったが、その消費量にやはりラスティは呆れたような目を向けながら自分の肉に口をつけた。


雑貨屋の店主におすすめされた、この町の焼き鳥は確かに美味かった。


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