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土日は3話公開いたします。
「次!」
順番が来たのでエルディアとラスティが進み出た。
検問所の男がエルディアの通行証に目を落とす。
「女の運び屋か?珍しいな」
「生憎、跡取りに恵まれなくてね?あたしは親父の手伝いみたいなもんよ」
エルディアが軽く肩をすくめると、男は大した確認もせずにエルディアに通行証を返した。
「せいぜい観光だろうが、羽目を外しすぎるなよ」
「ありがと。肝に銘じるわ」
ラスティにはちらりと視線を流しただけで、質問もなかった。
エルディアにくっついたままのラスティが眉間にしわを寄せたが、幸い誰にも気がつかれることはなかった。
簡単なチェックが終わるとあっさりと通される。
検問所をなんなく抜ける2人の背後で「次!」という男の声が響いた。
「なんだ、あのザルな検問は…」
門から十分距離を取ったのを確認してラスティが苦い顔をした。
疑ってほしいわけでもないが、あっさりしすぎている。
「女の職業人なんて、まだ珍しいから、お遊び程度にやってると思われたんだよ」
「おまえはそれで良いのか?」
エルディアは、あの手の扱いには慣れているのか気にした様子もない。
逆にラスティを諭したくらいだ。
「言い方はあれだけど、心配してくれたんだから、良い方だよ」
「侮られてたんじゃねぇのか?」
誰よりもそれを嫌うはずのエルディアが、平然としているのが腑に落ちない。
「仕事を依頼に来たやつに舐められるのが嫌なだけで、関係ないやつのことは気にしないよ」
気にしてもきりがないと、ラスティを見下ろした。
ラスティはまだ納得できないようで難しい顔をしている。
「女が職を持つってことが、まだ普通じゃないのよ」
「父上の治世の頃から、それは変わっているはずだが?」
「そんなこと言ったって、浸透するには時間がかかるもんよ」
現に国の役人にすら女性の職業人はほとんどいない。
それはラスティもよく知っていることなので、反論もできない。
「あんたの兄上様に期待だね」
「……すぐに、あんな発言が的外れだと分かるくらいの時代にしてやる」
「頼もしい!」
ラスティはエルディアの実力も知らないくせに、道楽だと決めつけた検問所の男に不快感を抱いた。
だが、それが政策を理解しない者への怒りなのか、エルディアをバカにされたことへの怒りなのかは、はっきりと判断できなかった。
(…どうかしてる)
一個人へ入れ込んで、全体の判断と混同するなんてあり得ない。
それでもふつふつと腹の底にたまる熱に苛立ちを覚えていた。
くしゃっ。
ふいにラスティの頭にエルディアの手が乗せられた。
見上げると、エルディアが唇を引き上げて頭を撫で回した。
「なにすんだよ!」
ぐしゃぐしゃに髪をかき混ぜられて、ラスティが不満の声をあげる。
「ありがとね」
エルディアの短い言葉にラスティが返す言葉に詰まった。
結局、うまく言い返せずに小さく呟く。
「べつに…」
「あんたたちが頑張ってくれたら、あたしたちもやりやすくなるわ!」
「そうかよ」
嬉しそうなエルディアに、そっけなく返すのが精一杯だった。
2人がそんな話をしながら町の大通りを歩いていると、雑貨屋が見えてきた。
「それより、あそこに地図も売ってるんじゃない?」
「そうだな」
なにも気にしていないエルディアの楽しそうな態度に、ラスティは毒気を抜かれる。
確かに、いま考えても仕方ない。
これは全てが終わった後の、解決すべき項目として整理して、頭の中で保留にした。
「地図だけで良いのか?」
「他にも見たいものはあるかなぁ。あ、お土産買う?」
「なんでだよ!本当に観光してどうすんだ!!」
ラスティがいつもの調子を取り戻したのを見て、エルディアは負けずに言い返した。
「折角なんだから、観光くらいしようよ」
「状況、分かってんだよな!?」
「深刻なときに、深刻ぶってると疲れるわよー?」
深刻ぶるという言い方が、いかにも人を食っている。
エルディアらしい感性だが、ラスティには理解しがたい。
「なに言ってんだ、おまえは!」
至極真っ当な感覚で怒鳴り付けたが、エルディアは飄々と笑うだけだった。
「やだー、お坊っちゃま、こわーい」
「ぶっ飛ばすぞ、てめぇ!!」
ラスティは覚えたての乱暴な言葉をエルディアにぶつけた。




