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土日は3話公開です。
魔導ランプが誘導灯のように伸びている。
かつて王都の生活を支えていた地下水路は、今はその役目を終えている。
ただ、今も尚、地下水や自然に流れ込んだ雨水が浅く流路に満ちており、静かな水音を立てていた。
流路の脇の通路を魔導ランプの薄明かりを頼りにドラコニスを押しながら歩く。
どのくらいたっただろうか。
外の様子が分からないので時間の経過も把握しにくい。
エルディアは隣を歩くラスティに視線をやった。
黙々と歩いているが、幼い体にはやはり疲れが溜まっているように見える。
「ねぇ、この地下水路って外に音は漏れないんだよね?」
「ん?ああ、そうだな」
「じゃあ、別に、ちんたら歩く必要ないよね?」
エルディアの言葉にラスティが目を瞬いた。
確かに流路の隣に寄り添うように伸びている通路は、魔導二輪が走っても大丈夫なほどの幅はある。
しかし、薄暗い上にすぐ脇を流れる水のせいで滑りやすくなっている。
「危ないだろう…」
常識的な判断で返事をすると、エルディアは目を細めた。
良くないことを考えている顔だ。
「歩く必要は、ないんだね?」
外への音漏れを気にしてわざわざ徒歩なのかと思っていたが、先ほどラスティは「外に音は漏れない」と言っていた。
だとすると、走行音で外にばれるという可能性は考えなくていいということだ。
「言ったじゃない。ドラコニスに走れないところはないって」
「いや、それおまえの主観じゃん」
「なぁに?あたしが信用できないっていうの?」
魔導二輪に関して常識の枠に収まることのないエルディアは、強引にラスティを後部座席に乗せた。
そして自分は運転席にまたがる。
「おい!」
「こんなに、ちんたら歩いてたら夜が明けて昼になったって目的地に辿り着けないでしょ!」
勢いよくドラコニスが滑り出した。
慌ててラスティがエルディアにしがみつく。
軽快に笑いながら、エルディアはガンガンとドラコニスを走らせた。
スピードに乗り、車体が安定し始めるとラスティは諦めてエルディアに体を預ける。
分岐点が来るたびに方向を指示して、いくつかの道を選びながら進むと、ラスティが出口と定めた目的地に到着した。
ラスティがエルディアの服を引いて合図する。
(いや、これ馬の止め方だろ…)
とんだ暴れ馬に乗ってしまった。
そう思うとなんだか可笑しくなった。
「なに、笑ってんのよ?」
「いや、別に」
背中から伝わるラスティの気配にエルディアが不思議そうな声を出した。
こんなことを正直に答えても馬鹿を見るだけだ。
ラスティは適当に誤魔化した。
そして、そのまま後部座席から飛び降りてエルディアを見上げる。
「この先は、そいつで進むのはやめておけ」
「なんで?音が漏れるの?」
「外に出るのに手順がいるんだよ」
それなら仕方ないと、さすがにエルディアも短くうなずいた。
それを確認してから、ラスティがポケットから懐中時計を引っ張り出す。
随分凝った造りの時計にエルディアが目を丸くして覗き込んだ。
「あんた、時計なんて持っているのね?」
「ん。時間が分かって便利だぞ」
こういう仕掛け物が好きなのだろう。
エルディアは目をキラキラさせて時計を見つめている。
ぱちりと開いて時間を確認するとエルディアを見上げた。
「外はもう日が暮れた頃だ。予定通り朝まではここに居よう」
「了解」
エルディアに異存はないので軽く返事をして、ドラコニスを石壁沿いに停めた。
少し湿気の多いところを通ったせいで、泥はねをしている。
エルディアは、なんとなくしゃがみ込んで、いつもするようにドラコニスを磨き始めた。
「おまえ、本当にそれ好きだな」
鼻歌でも歌いそうな勢いで磨き始めるので、ラスティが思わず口をはさんだ。
「かっこいいじゃない?」
自慢げなエルディアにラスティは肩をすくめた。
「なぁ。そいつ、『ドラコニス・マークII』っていうんだよな?」
「ん?そうよ」
「なんで『マークII』なんだよ?」
どうでもいいと言えば、どうでもいいことだったが、なんとなく夜明けまで時間があるので、ふと疑問に思ったことを口にしてみた。
「お?あんたもついにあたしのドラコニスの魅力に興味が出てきたのね?」
「いや、それはねぇ」
嬉しそうな顔をしたエルディアに、素早くラスティは否定した。
「なによ、冷やかしならお断りよ」
エルディアはつまらなそうに唇を尖らせた。
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