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土日は3話公開です。
「本当に、この手の話はこれっきりにしてよ」
「分かったよ、悪かった」
「分かればいいわ」
短いやり取りでこの話は終わった。
魔導二輪で王都の西寄りまで走ったのだ。東門までは徒歩だとかなり距離がある。
暇つぶしのようにエルディアがラスティについてあれこれ問いかけ始めた。
「あんたの体が小さくなったことって、全員共有しているわけじゃないんだよね?」
「まあ、そうだな」
ラスティが数え上げる。
国王である兄オルディス、腹心のクリュー侯爵家の面々、そして王妃の二コラ。
「大体、こんなもんかな。ヴァランは義姉上経由で、話だけは知ってるはずだが」
「小さくなった実物を見てはいないってことね」
エルディアの確認にラスティは頷いた。
エルディアとしては、ラスティを見かけただけで本人だと認識できる人物がどのくらいいるのかを確認したかっただけなのだが、ふと急に気になることができた。
「じゃあ、この状況を知らない人にはなんて説明してるのよ?」
「クリュー侯爵領を視察中」
「…なるほど。そもそも王都にいない設定なのね」
下手に王都にいることにするより、距離の離れた場所にいる方が情報操作もしやすいだろう。聞いた限りだとギュバンスの実家のクリュー侯爵家というのは随分忠臣のようだったし、その点でも安心なのだろう。
「ギュバンスは本物についてたけど、視察中になってるあんたの護衛はどうしたの?」
まさか1人で出かけました、とは言わないだろう。
信憑性を持たせるためにも護衛は必要なはずだ。
エルディアが首をかしげる。
「ああ。そっちはギュバンスの兄のイーギル小侯爵が付いてるよ」
兄弟そろって忠義の厚いことだと、エルディアは感心した。
先王との関係が余程良かったのか、あるいは代々忠義に厚いのか。
恐らく両方だろうが、とにかく秘密ごとには深くかかわっているようだ。
「ギュバンスの実家って、あんたんちと仲が良いのねぇ」
「仲がいいっていうか、…バランスだろう」
エルディアの町のおばさんみたいな感想にラスティは苦笑した。
もっとも、町のおばさんなんて知らないのだが…。
個人的なつながりとして仲が悪いわけではないが、政治的な思惑もかなり強い。
そのことをどう伝えるか迷ったが、考えてもうまく伝わる気もしないのでそのまま告げた。
「ヴァランのところのホーゼス公爵家とクリュー侯爵家って権力とか影響力とかが、だいたい同じくらいなんだよ」
「…ふーん?」
いまいちよくわかっていない顔のエルディアにさらに噛み砕いて説明する。
「兄上にホーゼス公爵であるヴァランの娘が嫁いだだろう?」
「そうするとホーゼス公爵家のほうが力が強くなるってこと?」
「そう単純でもないけど、そんなところだ。だから弟の俺はクリュー侯爵家が面倒を見てるっていう構造だ」
兄弟それぞれと懇意にしているから、権力バランスもヴァラン公爵家に偏り過ぎずに済むということだろうか。
「面倒くさいのね。っていうかそもそもホーゼス公爵家のお嬢さんが奥さんで、クリュー侯爵家の次男が側近なら、バランスは十分じゃないの?」
「次男が側近ってそんなに有利でもないんだ」
なんだか複雑な権力構造にエルディアはうえーっと顔をしかめた。
自分で聞いておいて面倒になっている。
「無理すんな、理解しなくていい」
「そうするわ」
すっかり権力構造の話に飽きてしまったエルディアは、また話題を変えることにした。
全然話に出てこないけど、気になっていたことだ。
ただ、聞いていいのかどうか迷っていたので少し口ごもる。
「なんだ、ほかにも気になることがあるのか?」
「うー…。これは言いたくなければ言わなくていいんだけど…」
「…?」
珍しく切れの悪いエルディアにラスティは首を傾げた。
今さら遠慮するような話があるだろうか。
「お母さんは?」
「母上…?」
「お兄さん、大変じゃない?あんたもこんな小さくなってるし。お母さんも心配なんじゃないのかなって思って」
エルディアの知る限り先王は亡くなったが、その妻の王太后は健在のはずだ。
それなのにその存在が全く出てこない。
小さな違和感だったが、なんとなく気になって聞いてしまった。
ラスティは僅かに眉を寄せて難しい顔をした。
エルディアはまずいことを聞いたかもしれないと少しだけ後悔した。
「言えないなら別にいいの、ごめん」
「いや…。そういうわけじゃない」
ただ少しだけ、ややこしいだけだ。
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