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3

本日は3話公開です。

「あれ?そっちにはそこの説明はないわけ?」


意外そうにエルディアが首をかしげて、ベルクを見た。

娘の視線にベルクも肩をすくめる。


「私は何も聞かされてないわ。多分、ラスも…」


視線を投げられてラスティも頷いた。


「俺のこの琥珀色の目が、王族の中でも竜騎士になる資格をもつ者にだけ現れる特徴だとは聞いている…だが、それだけだ」


少年の少し高い声が、静かに響いた。


「兄上は若くして国王の座に就かれた…」


先王の崩御は早すぎた。

あまりに急だったので、碌に準備もできずに王座に就いた兄の足元はまだ危うい。


「竜に認められた竜騎士を従える王の世は永く安定するという…」


ラスティが竜騎士になると決めた理由はそれだ。

少しでも兄の助けになりたかった。


ギュバンスはその胸の内を知っている数少ない味方だった。

王家の歴史を遡ってみても殆ど記録に残されていない竜騎士について、かなり調べてもらった。


「かつて、竜騎士と呼ばれた王族がいたのは300年近く前だ…」


その上、その詳細を知っていそうな父は既にいない。

残された僅かな痕跡でたどり着いたのが、例の依頼状とこの運び屋の存在だったのだ。


「正直、こっちも半信半疑だったのよ?竜騎士なんて御伽話みたいじゃない?」


ギュバンスはその長い足をスルリと組み替えて、テーブルに肘をつく。


「なのに、ラスがオルディに宣言したとたんに、こーんなに可愛くなっちゃったのよ?」


そして、大袈裟にため息を吐いた。


「可愛いっていうな…って離せよ、バカ!!」


憮然とするラスティを、問答無用で抱き寄せて頬擦りする。


「私も何がなんだか分からないけど、とにかく、単なる御伽噺ではなさそうだって思ったわけよ」


腕の中で、もがいているラスティの頭を撫でながら、ガッチリ離さない。

なかなかの力だ。


「あー、なるほど。竜騎士の情報の引き継ぎがうまくいってないってことね?」


エルディアが雑に纏めると、ベルクに視線を投げた。


「説明してあげたら?」


「俺がか?」


「カシスウェルの秘密をこんなに食いついて聞いてくれる人、もう現れないんじゃない?あたし、もう飽きたし」


自分の家業への愛が薄すぎる娘の態度を見て、ベルクの鼻にしわが寄る。


「ええい!おまえも、もう1度聞いておけ!!」


ベルクは3人纏めて教育してやると、鼻息荒く話し出した。


「いいか、そもそも竜騎士っていうのはだな…」


「待った!!!」


話せと言ったくせに、早速、話の腰を折る娘にベルクは眉を寄せた。

だが娘の方は真剣な顔で手を上げている。


「その話は長くなるから、カットで!」


「ここは大事だろうが!!」


「『どうしたら良いのか』を聞いてんだから、そこからで良いの!」


大雑把なエルディアにベルクは嘆いた。こんな雑な娘、誰も貰ってくれない!ロマンも情緒もありゃしない!

顔を覆って涙する父親を尻目に結局エルディアが話を続けた。


「竜騎士になるには、竜に会って竜気を受け入れないといけないのよ」


「竜に、会う…?」


「そう。その待ち合わせ場所に、候補者を送るのがカシスウェルの運び屋の本来の仕事!」


突拍子もない話にどんな顔をして良いのか分からないラスティとギュバンスは、揃ってキョトンとしている。


「体が小さくなったってことは、竜気を受け入れるための体に組み換える準備期間に入ったってことね」


ラスティは思わず自分の体を見つめた。


「タイミング的にもちょうど良かったんじゃない?」


「タイミングがあるの?」


腕を組んで頷くエルディアに、ギュバンスが目を向ける。

この話を御伽話ではなく必要な情報であると判断した顔に変わっている。


「朔の月の日から始まるの。ちょうど今でしょ?」


「朔月(サクゲツ)」から始まり「晦(ツゴモリ)」に、竜と対面する扉が開くという。


「さくげつ…?」


「月の無い夜に始まって、月の無い夜に終わるってこと。だいたい30日の準備期間だね」


御伽話を飛び出した竜との邂逅にラスティの目が揺れた。

それは未知のものへの畏怖に近い。


「まぁ、うちもなんてったって300年ぶりだしね。爺さんたちの話を整理し直すとこからじゃない?」


「バカヤロウ!だから、俺の話を真面目に聞いておけとあれほど言っただろうが!」


肩をすくめるエルディアにベルクが青筋を立てた。


「あなたのお父様はもっと詳しそうよ?」


呆れたようにギュバンスが半目でエルディアを見つめた。



「王家の運び屋」メモ:

テキラ・マルガリタ(家主)

・カクテルは「ロング・マルガリータ」

・テキーラ、ホワイトキュラソー、ライムジュース、炭酸・トニックウォーター

・大柄な人なのでロングの方で。カクテル言葉は「常にバランスを心がける熱血家」。「悲恋」もあるよ。


※カクテルのレシピ・カクテル言葉には諸説あります。


ーーー


いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。


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