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本日は3話公開予定です。
「ようこそ、お客人。狭苦しい場所だが、かけてくれ」
ベルクは両手を広げて、青年と少年に声をかけた。少年の方は絵に描いたような美少年だ。
青年が少年を庇うように前に立っている。後ろの少年の護衛として付き添ってきたのだろう。
「そんなに警戒しなくても、俺たちは大体『分かって』いるよ」
ベルクが腰を庇いながら、先に椅子に腰を下ろす。その隣にエルディアが並んで座った。
「…『竜騎士』候補でしょ?」
エルディアが唇を引き上げると、青年はピクリと眉をあげ、エルディアの顔を探るように見つめた。
そして、警戒するのを諦めたように息を吐いて少年を振り返った。
「間違いないわ。この人たちがオルディの言ってた『運び屋』とやらよ」
細身ではあるが鍛えられた体。整って甘くはあるが、男らしい顔つき。
その男が、バリトンのような低い声で淑女のようなしゃべり方をする。
エルディアは少し目を瞬いたが、すぐに大したことではないと切り替えた。
ベルクにいたっては、一瞬も気にした様子がない。
父娘のそれぞれのわずかな反応を観察しながら、青年は椅子の背もたれに手を掛けた。
「分かっているなら、話は早いわ」
父娘の向かいに腰を下ろす。青年に促されて少年も後に続いた。
「私はギュバンスよ。そしてこちらは…」
ギュバンスは光の加減でオレンジにも見えるアプリコットブラウンの髪をさらりと揺らして、隣に座る少年の肩に手を置いた。
「存じてます。大丈夫ですよ」
ベルクがやんわりと断った。
金髪に琥珀色の瞳。
竜騎士候補。
そして、赤鷲が金箔の麦の穂を咥えた依頼状。
それだけ揃えば紹介されなくても分かる。
――ライヴィスキー王国の王族だ。
「あんたが知ってるか分からないけど、この依頼状はうちとそこのお坊っちゃまの家の間の秘密のお手紙なのよ」
エルディアは訝しげなギュバンスに説明してやった。
「…俺が誰だか分かっていて、その態度なら不敬だろう」
ギュバンスが口を開く前に少年が鋭い目でエルディアを睨み付けた。
「あら、お忍びで来てるお坊っちゃまのお名前を、大声で叫んで呼んだら意味ないじゃない?」
エルディアの言葉に少年はむっつりと黙り込む。
その通りだ。
「お利口ね、ラスちゃん?」
にんまりと目を細めたエルディアの、揶揄うような話し方に、1度は納得した少年がかっと赤くなる。
「誰が『ラスちゃん』だ!!!」
ライヴィスキー王国の王弟、ラスティ・ベルノ・ライヴィスキはバンとテーブルを叩きつけた。
「あらぁ、ごめんなさいね。気に障ったかしら、僕ちゃん?」
「やめなさい、エルディア。相手は箱入りのお坊っちゃんなんだぞ」
だが、ラスティの怒りなど小指の先ほども気にかけずエルディアが笑い飛ばす。フォローしているつもりらしいが、父親の方も失礼極まりない。
「本当にこいつらに依頼しないといけないのか!?」
隣に座るギュバンスに食って掛かるが、ギュバンスだってそんなことは分からない。肩をすくめてラスティを見た。
「あなたのお兄様がそう言ってるのよ」
「ぐ…。兄上が仰るなら、間違いない…はずだが」
ラスティは納得がいかないと、拳を握りしめて震えた。
ギュバンスとしてもやりにくいのだ。この父娘が、どこまで何を共有しているのかが分からない。
そのため、自然と対応が後手に回ってしまっている。
(そもそも、どのくらい信用できるかが分からないのよね…)
注意深く探ると分かるが、2人には全く隙がない。
のらりくらりとしているようで、見た目通りのお気楽父娘ではない。
それが余計に胡散臭く感じるのだ。
「あなたたちの言う通りね。私たちより、あなたたちの方が詳しそうだわ?」
それでもギュバンスは友人でもある、若き国王を信じるしかない。
「私たちが、これからどうしたらいいのか教えてちょうだい。そもそも竜騎士ってなんなの?」
現状、ギュバンスに分かっていることは2つだけだ。
この王弟殿下が竜騎士になるための試練を与えられていること。
そのためにはこの「運び屋」に依頼する必要があること。
王家の伝承は、ラスティの兄オルディスが、亡き父王から物語程度に聞いたことがあるくらいの頼りないものだ…。
「…どうして、竜騎士になると宣言したとたん、ラスティは子どもの姿になってしまったのかしら?」
隣に座る少年は、大体10歳くらいだろう。
――だが、王弟殿下は今年19歳の青年なのだ。
「王家の運び屋」メモ:
ベルク・カシスウェル(運び屋)
・カクテルは「カシス・バック」
・カシスリキュール、レモンジュース、ジンジャーエール
・カクテル言葉は「正しき心」。カシスウェル父娘はカシスとジンジャーエール繋がり。
※カクテルのレシピ・カクテル言葉には諸説あります。
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