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新連載はじめました。

本日は3話公開予定です。よろしくお願いいたします。

「ぐぉぉ!!」


ベルク・カシスウェルの野太い悲鳴が上がった。


カシスウェルの家業は運び屋だ。

金次第でどんなものでも運ぶ。

安心・安全・確実が信条の至極真っ当な配達屋さんだ。


長く続く家業で父のベルクが18代目、そして娘のエルディアが19代目になる。


「くぅぅ…。俺も、まだまだ現役でいてぇところだが…」


「しょうがないじゃん、腰をやっちまったら魔導二輪の運転は無理よ」


引退したくないと駄々を捏ねる父親に、エルディアは呆れたように首を振った。

黒紫のショートカットの髪が揺れ、夕焼け色の赤みがかった目がにんまりと細くなる。


「じじぃの時代は終わったってことね」


ペシッとベルクの腰に湿布を貼り付ける。そして、2階の窓から見える自分の愛車を見下ろすと大きく頷いた。


「ついに、このあたしとドラコニス・マークIIの時代が来たわ!!」


「最悪だ!!」


拳を突き上げて喜ぶ娘に、ベルクは苦い顔をして吐き捨てた。


「愛車に名前をつけるのは良いとしても、センスが無さすぎる!我が娘ながら正気を疑う!!」


「うっさいな、親父もつけてたじゃん!」


「俺の怒羅怒羅(ドラドラ)スペシャルとおまえのドラコニスなんぞを一緒にするな!」


ここにセンスのある人が居たら、どちらもおかしいと止められただろうが、生憎とここにはこの2人しかいない。


父娘の口論は、激しさを増していく。


「大体、こんな小娘にうちの家業を任せるなんざ、自殺行為だ!やっぱり、まだ早い!」


「はぁ!?ぎっくりいって動けねぇくせに何言ってんのよ!早くそのペンダントを寄越して、引退しろ!」


「強盗か!この家には強盗がいやがるぞ!!」


怒鳴り声が外まで響き始めた時、ようやくその騒音に終止符を打つ者が現れた。


「やかましいっ!何時だと思っているんだい、このごく潰しども!」


家主のテキラ・マルガリタが荒々しく扉を開け、仁王立ちで2人を睨み付けた。


「げっ、テキラ!?今月の家賃はもう払ったでしょ?ツケは無いはずだけど!?」


「そんなことは分かってるよ!あんたは、あたしを守銭奴だとでも思ってるのかい!?」


思ってる…。


父娘は顔を見合わせた。


「じゃあ、なにさ?」


エルディアが首をかしげると、テキラはふんと鼻を鳴らして階下を親指で指した。


「あんたたちに客だよ」


「…こんな夜中に、客?」


「あたしに聞かれたって分からないよ、あんたたちを訪ねてきたって言うんだから!」


それもそうだ。

エルディアが父ベルクの首からペンダントを奪い取り、軽やかにテキラの肩を叩いて1階へ向かった。


「運び屋は代替わりだよ。これからはあたしが稼いでくるから、テキラも楽しみにしてな!」


「どっちでも良いよ、稼いでくれりゃ」


テキラはエルディアを見送って、ベルクに目を向ける。

ベルクは立ち上がりかけて、ビリッと走った痛みに腰を押さえた。


「痛っっ!!」


「あんたは、安静にしときなよ」


寄る年波ってやつは嫌だね、と同情的な目をベルクに投げた。


「テキラ、客ってのはどんな奴らだった?」


呻きながらベルクが問いかける。

テキラは片眉を軽くあげた。


「小さい小僧と、大きな小僧だね!」


22歳のエルディアを小娘と言って憚らないテキラだ。小僧の幅も広いに違いない。

まるでヒントにならないテキラの言葉に肩をすくめると、1階からエルディアの大声が響いた。


「親父!!こいつら、例の依頼状持ってやがるよ!」


「あぁ、なんだって!?俺は腰をやられてんだよ!おまえが客を連れて、こっちに来い!!」


怒鳴り返すと、テキラは「煩いねぇ」と愚痴をこぼした。


「まぁ、稼ぎになるなら今回だけは、大目に見てやるよ」


その大きな体でドスドスと下の部屋に降りていく。階段ですれ違うのも一苦労だと、エルディアが文句を言いながら上がってきた。


エルディアの後ろからは、品の良い金髪の少年と女性が好みそうな甘い顔立ちの青年がついて来た。

ベルクはエルディアが手にしている依頼状に目をやった。


「赤鷲が金箔の麦の穂を咥えた依頼状」が届いたら、その仕事は断ってはいけない。


カシスウェルに伝わる決まりの1つだった。


「あと、1週間早かったら俺の仕事だったんだがなぁ…」


ベルクが思わず呟いた。


よりにもよって、19代目を継いだばかりの半人前の最初の仕事が「これ」になるとは。

だが、エルディアがベルクからペンダントを奪い取ったとき、それはすんなりとエルディアの手に収まった。


代替わりは「なされて」しまったのだ。


「やれやれ。まぁ、ペンダントが認めちまったんなら仕方ねぇか…」


エルディアが連れて上がってきた客が部屋の入り口に立つと、ベルクは軽く息を吐いて出迎えた。



今回はキャラクター名は全部カクテルをもじって付けました。

ビジュアルイメージもそんな感じなので、想像して楽しんでみてくださいませ。


「王家の運び屋」メモ:

エルディア・カシスウェル(運び屋)

・カクテルはエル・ディアブロ

・テキーラ、カシス、ジンジャーエール、ライム

・「悪魔」と呼ばれるカクテルなのに、カクテル言葉は「気を付けて」


※カクテルのレシピ・カクテル言葉には諸説あります。



ーーー


読んでくださり、本当にありがとうございます。


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