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「お嬢ちゃん、可愛いから1個おまけだ!」
「わぁい、おじさんありがとう」
とんだ茶番だが、ラスティは着実に戦利品を積みあげていく。
次々に集まる食材にエルディアは目を細めた。
「だいぶ節約できたわ!」
「じゃあ、もうやらなくていいな!?」
ラスティの男としての矜持もゴリゴリに削られている。そろそろ解放されたい。
切実に訴えるとエルディアは勿体ぶって頷いた。
「まぁ、いいでしょ!」
「偉そうだな、おい!」
エルディアは集まった食料を右手で抱えて、ラスティの手を握った。
なにか言いたそうな顔をしたラスティだったが、小さく息を吐いて諦めたように手を握り返した。
「さぁ、ごはん、ごはん」
うきうきと部屋に戻り、昨日の夜と同じように小さなテーブルに並べていく。
パンにサラダに果物。それに見たことのないプルプルした白いもの。
ラスティはカップに入ったそれを両手で持ち上げると首をかしげた。
ちらりとエルディアを見上げると、エルディアがちょうど同じものをスプーンですくって口に入れているところだった。
「なに?あんた、プルーリン嫌い?」
「…プルーリン?」
「え!?知らないの!?」
目を瞬いたラスティを、エルディアは目を丸くして見つめ返した。
ラスティが困惑気味にもう一度首をかしげるとエルディアはラスティを覗き込むように顔を寄せる。そして、ラスティが手にしているカップを揺らした。
「プルプルしてるな…」
「そう。だからプルーリン」
安直すぎる名前に戸惑いながら震えるプルーリンを見つめていると、エルディアはスプーンで掬ってラスティの口に突っ込んだ。
「んぐっ」
急なことに目で不満を訴えると、悪びれることもなくエルディアが笑った。
「ライヴィスキーの『ママの味』だよ。知らないヤツがいるとは思わなかったけど!」
少し甘いミルクの味がする。
確かに子どもが好きそうな味だった。
そこまで考えて、ピタリとラスティは動きを止めて眉間にしわを寄せた。
「おまえ、俺をからかうつもりでコレを買ったな…?」
「ママの味、好きかなーって思ってさ」
ビリッと青筋を立てるラスティにエルディアは声をあげて笑った。
子ども扱いするたびにムキになるのが面白くて、ついやり過ぎてしまう。
「ごめん、ごめん。でも美味しいでしょ?」
「本当に腹立つな、おまえ!!」
「いやいや。全国民の思い出の味だよ?知っておいた方が良いって」
適当な言い訳にイライラしながら、ラスティはエルディアの目の前からチキンサンドを奪い取った。
「あぁ!それ、あたしの!!」
エルディアが好きそうな食べ物は、この数回の食事で大体把握した。
おそらく、今朝の品揃えの中で1番好きであろうそれを横取りして、大口を開けてかぶり付いた。
「知るか、ばーか」
「かっ、かわいくない!!」
エルディアおすすめのプルーリンは確かに美味しかったので、普通に満足はした。
だが、それはそれ、これはこれだ。
いつまでも子ども扱いして遊べると思ったら大間違いだ。
「こういうことは、いちいち全部やり返せって言われてんだよ」
「誰によ!?」
「兄上と義姉上だ!!」
エルディアは会ったこともない国王夫妻の余計な入れ知恵に盛大に舌打ちした。
「余計なことを…っ」
心底、忌々しげな態度にラスティは思わず息を吐く。
「本っ当におまえは、なにからなにまで不敬だな…」
「会う予定もないお偉いさんに気を遣う必要ある?」
「会うかも知れねぇだろ。今のうちに直しとけよ?」
直らないだろうが。
やや諦め気味にラスティが忠告しておく。
「俺が竜騎士になったら、おまえはその功労者になるんだからな?」
「あぁ!」
「そんなんで、報酬の受け取り、どうするんだよ?」
そんな軽口を叩きながら2人は慌ただしく朝食をすすめた。
そして、あらかた食べ尽くすと、ラスティがテーブルの上の紙くずを端に寄せて王都の地図を広げた。
「ここ」
小さな指で指し示したのは王都の東門の近くの神殿だった。
エルディアは不思議そうな顔をする。
「この神殿の東門寄りのこの辺りに、小さい小屋があるんだよ」
「小屋?」
「普段は使われていない物置みたいなところだ」
ラスティはエルディアに向かって唇の端を持ち上げてみせた。
「秘密の小部屋ってやつがあるんだよ」
エルディアの好きそうな物語によくある設定だろう。
ラスティはそう言って愉快そうに目を細めた。
「なにそれ、面白そう!」
案の定、エルディアは目を輝かせた。
「王家の運び屋」メモ:
プルーリン(お菓子)
・ライヴィスキ国の国民的ママの味
・ミルクと砂糖ベースのプリンみたいなお菓子。
・作りたい方は牛乳と砂糖と片栗粉を鍋で煮て、容器に入れて冷やしてください。
※やったことないけど、多分できます。
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