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「つまり、あんたの見立てではお兄さんの奥さんまでは警戒する必要がないってことなの?」


つまらない腹芸はエルディアの得意なところではない。

特にラスティとの会話は腹を探りあっても意味がない。

エルディアはサクッと疑問に思ったことを確認してみた。


「まあ…。兄上に関してだけなら…」


それでもやはり微妙に歯切れが悪い。

エルディアはやはり首をひねった。


「ねぇ、お願いだからはっきり話してよ。すっきりしなくて気持ち悪いんだけど」


あっさりとエルディアは思考を諦めて、ラスティに詰め寄った。

警戒したらいいのか、しなくていいのか判断しかねたのだ。


「あー…。だから、兄上に危害を加えたりはしないと思うけど、俺の方はどうか分からないっていうか…」


「は?…なにそれ?」


むしりまくったパンを、もそもそと口にするラスティはどこか居心地が悪そうだ。

小さな口に頬張ったパンを咀嚼しながら、少し考える時間を稼いでいる。

エルディアにはそう見えた。


やがて喉を上下させて、パンを飲み込むと眉を下げてエルディアを見上げた。


「義姉上は、兄上を守るために父親に従順なふりをしてるはずなんだ」


「まぁ、それは分からなくもないけど…」


言いたいことの意味を量りかねてエルディアも困惑する。

何が言いたいのかと首をかしげると、言いにくそうにラスティが重い口を開いた。


「つまり、父親を油断させるために俺の動向を報告している可能性はあると思う」


「なんでよ!?」


同じように国王を支えようとしている弟を売る行為はエルディアには理解ができない。

小さなテーブルを叩きつけて、思わず食って掛かる。


「二コラ義姉上にとって一番大事なのはとにかく兄上だ。そのために俺が負傷するのは仕方ないと判断するし、万が一死んでも『残念』で済ませてしまう可能性が…」


「何それ、頭おかしいの!?」


「いや、言い方!!」


ラスティは何故だか遠慮したように二コラを語るが、エルディアからしたら論外だ。

どんな思考回路をしていたら義理の弟が死んで「あら、残念」で済ませることができるのか。


「あんた、もっと怒ったほうが良いわよ!!」


「いや、兄上にはむしろそのくらいの人に傍にいてほしいというか…」


「呆れた!!」


理解の範疇を超えた王族あるあるに、エルディアが立ち上がりかけた姿勢から、力を抜いて再びベッドのふちに腰を沈めた。


「お兄さんは守ってくれるけど、あんたは自力で何とかしろって言ってくるような奥さんなのね…?」


「積極的に俺を殺そうとはしてこない、はずだ…」


「…当たり前だわ」


エルディアは頭を振った。

ふと、訪れたときに一緒に来ていた護衛を思い出す。


「まさか、ギュバンスもそうなの?」


頭をよぎる嫌な予感に、眉を寄せて不機嫌な顔でラスティを見る。

するとラスティは首を振った。

エルディアはほっと体の力を抜いた。


「あいつは逆に俺に構いすぎる…。今回だって無理についてきて…」


「なに、ギュバンスも狙われちゃうの?」


「いや。あれはクリュー侯爵家の次男だ。兄上の学友でもあるし迂闊に手を出すよりは、放っておくほうがいらぬ軋轢を生まない。…それに公爵側もクリュー家との対立は望んでないはずだ」


どうやら、あの護衛も結構なご身分だったようだ。

言われてみれば侯爵にそんな家名のやつがいた気がする。

王弟の護衛を務めるくらいなのだ。それもそうかと、エルディアはすぐに納得する。


(なんで、あんなしゃべり方なのかは気になるけど…)


「あれは、侯爵家の後継はギュバンスの兄で、自分にそのつもりはないという意思表示らしいぞ」


エルディアの疑問を敏感に感じ取ったらしいラスティが肩をすくめた。


「え、趣味じゃなくて?」


「一応、本人はそう言っている」


そこはなんだか疑わしいが、本人がそう言うならそうなんだろう。

いまいち納得できない顔でエルディアは頷いた。


一通りラスティが自身の周辺の事情を語り終えると、テーブルのカップに手を伸ばした。

すっかり温くなったそれを飲み干して、喉を潤すとエルディアのほうにもう一度向き直った。


「明日、行きたいところがあるんだが構わないか?」


「行きたいところ?」


「多分、王城の動きをギュバンスが報告してくれている…」


オルディスとラスティ、そしてギュバンスだけの連絡手段があるのだとラスティがエルディアに告げた。



「王家の運び屋」メモ:

二コラ・ペルノ・ライヴィスキ(ニコラ・デ・ホーセズ)(王妃)

・カクテルは「ニコラシカ」

・ブランデー、スライスレモン、砂糖(山盛り)

・ヴァランの娘

・オルディス大好き

・カクテル言葉は「覚悟を決める」


※カクテルのレシピ・カクテル言葉には諸説あります。


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いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。


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