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「…それでさ。あんた、あの占い師の言葉をどう思う?」
エルディアは串焼きの皿をラスティに差し出す。
どうやら気に入っているようで、ラスティが遠慮なく手を伸ばした。
「怪しいとは思うが、正直、竜騎士に関することは全部胡散臭いからな…」
判断しかねる、というのがラスティの気持ちとしては1番正しいだろう。
「だが、運び屋の話も、帽子屋の話も、あの胡散臭い占い師の話も1つに繋がってただろう?」
少なくとも運び屋と帽子屋はそれぞれ違う経緯で家訓を受け継ぎ、その情報を守っていた。
そこまでして守り通していることを、信用できないと切り捨てることはできない。
「すごく不審だが、必要なことは伝えてくれた…と、思う」
「そうだね…」
確認しておいてなんだが、エルディアもほぼラスティと同感だった。
「だとすると、あの占い師の言っていた高原の近くの町に行ってみるしかないか」
「とにかく、その『神殿』とやらを探さねぇと…」
占い師の言う「審査」に合格しないことには竜に会うことさえできない。それなのに、まず審査会場を探すところからとは、気の遠くなるような話だ。
「少しでも時間が惜しいっていうのに…」
唇を噛むラスティにエルディアは首をかしげた。
「ねぇ、国王陛下って確かに若くして王位についたけど、そんなに問題があるの?」
エルディアはラスティの顔に浮かぶ焦りに違和感を覚えていた。
平民のエルディアは新聞でしか新国王を知らない。だが、若き国王の手腕は悪いものでもなく、これまでの忠臣に支えられて行われている国政は国民の生活に混乱を招いてはいない。
急ではあったが、順調に見えた。
ラスティはエルディアの顔を見て、一瞬だけその目元を和らげた。
「おまえたちの生活に影響ないなら、それは良かったよ」
国民を思う王族としての顔に、エルディアは目を瞬いた。
幼い姿でもやはり感性の有り様は王族のそれだ。
「偉い人の好きになれそうなところ、見つかりそうだわ」
「なんだ、それ」
エルディアの回りくどい褒め言葉にラスティは苦笑した。
エルディアは肩をすくめる。
「お偉いさんって雲の上過ぎて、人間像が良く分からないんだもん。物語とかだと悪役が多いしさ」
帽子屋の時も思ったが、エルディアは意外と物語が好きなのかもしれない。今回の旅でも時々、口に出している。
「物語でも姫や王子は善人だろうが」
「えー。でも悪どい宰相とか、王座を狙う逆臣とかさ」
「おまえ、いつもどんなジャンルの物語を読んでるんだよ」
軽く口に出される設定に、ふだんの読書の傾向が如実に現れている。
暗号文を使うことを楽しみにしてしまう辺り、恋愛小説などではないんだろうな、と漠然と思った。
「そりゃまぁ、物語だから実際はいないんだろうけどさぁ」
「…いや。そうでもない」
軽く流そうとしたエルディアに、少し目を伏せたラスティの重い声が重なった。
エルディアは手にしたパンを口にしたまま、目を丸くした。
「いるの!?悪徳大臣!!」
「なんで嬉しそうなんだよ!」
ラスティが不謹慎なエルディアに思わず声をあげる。
さすがにエルディアが目をそらした。
だが、唇を尖らせている辺り、反省しているのかは定かではない。
「えー。いないの?」
「悪徳大臣なんかいたら、国政が乱れるだろうが!」
正論だ。
「けど、ギュバンスはあんたも狙われてるって言ってたじゃん?」
「旨味を吸いたいんだから、国そのものが力をなくすようなやり方で襲ってこねぇよ」
ラスティは窓の外に見える王城に目を向けた。
空には糸のような細い月が引っ掛かるように浮かんでいる。
「今回で言ったら、前も話したが…竜騎士の伝承を盲信して弟を死なせた愚王として、問題を兄上の資質にすり替える」
ラスティの目は王城に据えられたまま動かない。
「そうして王位にふさわしいのか疑問を呈して議会にかけ、後ろ盾とかなんとか言って実権を握る…そんなところだ」
自分の死をさらりと語り、王城に目を向けたままピクリともしないラスティにエルディアは嫌そうに眉を寄せた。
「悪徳大臣じゃん」
「大臣じゃねぇって」
「役職はどうでもいいの!陰湿なヤツがいるじゃんって話よ」
「王家の運び屋」メモ:
悪徳大臣(エルディアの愛読書の登場人物)
・ライヴィスキ国にはいないらしい。
※ラスティ個人の感想。
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