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エルディアとラスティが話を終えるのを確認して、ジーンは優雅に立ち上がった。
「さて。伝えることは伝えたので、私はこれで失礼するよ」
「え、どこに?ここ、あんたの部屋だけど?」
ジーンの言葉にエルディアが突っ込み終わるより早くジーンの姿が掻き消えた。
「……は?」
綺麗さっぱり消え失せた。
何かの間違いかと思うくらい、あっさりと姿を消したのだ。
「ちょっとぉ…帽子屋になんて説明するのよ」
「理屈は諦めろ。帽子屋も分かってるだろ…多分…」
面倒くさそうにエルディアが口を尖らせると、ラスティが諦めたように首を振った。
自分たちと同じ常識の中にいると思ってはいけない類いのものだろう。
「面倒くさ…」
何度目かのため息を吐くと、エルディアは部屋から出て、帽子屋の元へ向かった。
「話は終わったよ、ありがとう」
帽子の仕上げをしているテネシーに声をかける。
テネシーは2人に気が付くと顔を上げて駆け寄ってきた。
「占いはどうでした?」
「うん、まぁ…それなり、かな?」
適当にごまかして、エルディアは笑った。テネシーは場所貸ししかしてないようだったので、余計なことは知らない方がいいだろう。
ラスティも同じように考えたようで、エルディアの対応に口を挟まなかった。
「それと占い師は仕事が終わったからって、帰ったみたいよ?」
「え?」
軽い調子でエルディアがテネシーに伝えると、テネシーは少し残念そうな顔をした。だが、元より謎の多い出来事だったので、テネシーはすぐに深く考えることを諦めた。
(こういう不思議なことは深入りしないに越したことはないって、母さんもよく言ってたしね)
のんびりとした帽子屋の処世術か、遺伝子なのか。
とにかくテネシーはその事は追求しないことに決めた。
「…そうですか。最後にご挨拶くらいはしたかったけど、しょうがないですね」
過ぎたことはしょうがない。
それよりも、今は目の前のことを優先したいのだ。
テネシーは膝を折ってラスティに目線を合わせる。
ラスティは少し目を瞬いて首をかしげた。
「あぁ!やっぱりかわいい!!!」
テネシーが勢いよくその手を両手で包み込んだ。
「ねぇ、お願い!あなたの帽子を作らせて!!」
色気のある美形のジーンも素敵だったが、目の前の美少女はテネシーの創作意欲をこれでもかと刺激した。
何しろかわいい。
とにかく、かわいい!!
(この先、こんな美少女に会えることがあるか、分からないわ!!)
チャンスを逃してなるものかと、ガッチリとラスティの手を握った。
「え、いや、俺は…」
「あはははは!良いじゃない、作って貰いなよ」
テネシーの勢いに押されて口ごもるラスティを見て、エルディアが爆笑する。
「いらないだろ!!」
「せっかくじゃない、かわいくして貰いなさいよ?」
カッとなって怒鳴り付けたところで、面白がってるエルディアが聞くわけもない。
「是非!!あなたみたいな美少女に会える機会なんて、この先もう絶対無いと思うの!!」
おまけにテネシーが必死に頼み込んでくるので、結局押しきられたラスティは渋々と頷く。
「完成したらお知らせしますので、受け取りに来てくださいね!」
「はは…」
完成した頃にはラスティは恐らく19歳の青年だ。
それも言い出せずにラスティは乾いた笑いで応じた。
「あはははは!あたしが届けてあげるよ!」
「おまえなぁ…っ」
腹を抱えて笑うエルディアの態度に、ピシリと青筋が立つ。
だが、ラスティはふと黙り込むとそのまま愛らしく首を傾げた。
そして大きな目をパチパチとさせてエルディアを見上げた。
「ごめんな。俺がおまえよりずーーっと美少女だったばっかりに」
「はぁ!?」
「おれが!おまえより!美少女だったばっかりに!俺だけ帽子を作って貰うことになっちゃって!!」
やけくそ気味にラスティがエルディアにマウントを取る。
だが、その分かりやすい挑発にエルディアはあっさり乗せられる。そして、こめかみをひきつらせてラスティの頬をみにょーっと左右に引っ張った。
「か わ い く な い !」
「うるへぇ!!」
「ひゃぁ!喧嘩はやめてくださいー!!」
目の前で、しょうもないいざこざを見せられたテネシーは、困ったように眉を下げる。そしておろおろと2人を止めようと手を伸ばすのだった。
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