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土日は3話公開です。
「まぁ、いいわ。あんたにこいつの魅力は100年早いってことね」
「何年経ったって分かんねぇよ!」
エルディアは怒鳴り声をあげるラスティに自分の愛車を認めさせることは諦めて、とっとと荷物をベルトで固定した。
「行くよ」
ラスティを手招きして魔導二輪の後ろに座らせると自分もシートに股がった。グリップを捻ると魔鉱石からのエネルギーが動力部に流れ、鋭い排気音を響かせる。
「しっかり掴まるんだよ?」
「しっかりって…」
微妙に腰が引けているラスティの腕を掴むとガッチリとエルディアの腰に固定する。
「こんくらいだよ!ちゃんと力入れてくっつくの!」
「なんでだよ!!」
「危ないからでしょうが!!」
初めての乗り物に戸惑いながら、ラスティが大声を出す。
エンジン音で声が遠く感じる。
エルディアは最低限の説明だけでドラコニスを走らせる気だ。
「ちゃんと捕まっておけば、振り落とされることはねぇから、気合い入れてしがみついとけ」
ベルクのアドバイスは全然安心できない。
ラスティが僅かに頬をひきつらせるが、もちろんエルディアはお構いなしだ。
「足締めときゃ、スカートでも平気!行くよ!」
「お、おい、ちょっ…!!」
ラスティがなにか言うより早く、エルディアのドラコニスが唸りを上げた。
あっという間に風を切るようなスピードに乗り、2人は飛び出していく。
「じゃあね、親父!しばらく帰らないからよろしくね!!」
「お、おまえっ、もっとあるだろ!!色々ぉぉっ!!」
騒がしく発進した2人をベルクが肩をすくめて見送った。
「忙しねぇな、あいつら…。あれが竜騎士を目指す第一歩ってんだから、やっぱり浪漫がねぇや」
自分だったらもっといい感じの旅立ちにしてやったのに、王弟殿下も運がない。
「まぁ、始まっちまったもんはしょうがないか。エルディアも、うまくやるだろ」
実際どうだったかは確かではないが、ベルクはそう笑うと、自分の怒羅怒羅スペシャルをポンと叩いて、乾いた布で再びエンジン周りのパイプを磨き始めた。
一方、早々に家を飛び出した2人はそこそこに整備された道を颯爽と駆け抜けている。頬に当たる風が気持ちいい。
速度はラスティが景色を楽しめるくらいに落とされている。
「そんなに急がなくても良いだろうから、スピードは出さないよ。気持ちいいでしょ?」
ラスティが目を細めているとエルディアが声をかけてきた。
確かに風は心地よく爽快だ。
ただ、ぴったりと密着する体の柔らかさにはまだ慣れてないので、エルディアの声にラスティがびくりと反応した。
「早いとこ、慣れてよ?移動は全部コイツなんだから!」
「わ、分かってる!すぐ慣れる!!」
エルディアはラスティの反応を揶揄うように笑う。それを察知してムッとしたラスティは気恥ずかしさを隠すように声を張り上げた。
エルディアたちの暮らす家から、さほど離れていない王都に入るとさらにスピードを落として町中を走った。
そして、1軒の帽子屋の前にゆっくりと停車する。
見上げた店の看板には「赤鷲が金箔の麦の穂を咥えた」ブランドマークと「黄金色の麦」という店名。
外から見えるショーウィンドウには、色とりどりの帽子が飾られていた。
その中には麦わら帽子も含まれている。
「さて。あたしも例の歌を使うのは初めてなんだよね。うまく行くといいけど…」
ラスティを愛車から降ろすとエルディアは唇をペロリと舐めた。
ラスティはエルディアを見上げて息を吐いた。
「楽しそうだな?」
「ん?」
その目が細くなっていることに気が付き指摘すると、エルディアは唇を引き上げた。
「だって、あんな暗号文を使うことなんて滅多にないもん。物語みたいでワクワクするじゃない?」
「遊びに来てるんじゃねぇんだけど」
いまいち温度差のあるエルディアにチクチクと嫌味を言うと、エルディアは鼻で笑った。
「あんたの深刻な事情はあたしに関係ないし?」
「信用してんだから、真面目に働けよ」
「あんたは余裕無さすぎ。張り詰めすぎてると見えるものも見えなくなるわよ?」
どんな時でも楽しもうとするエルディアは、何でも真っ向から生真面目に取り組もうとするラスティには理解できない感性を持っている。
その事がラスティにもたらす感情が、苛立ちなのか羨望なのかはっきりしない座りの悪さを感じながら、ぐっと眉を寄せた。
「かわいいお顔が台無しよ?」
その眉間をつつかれて、額にピシリと青筋が浮かぶ。
エルディアの目がまたにんまりと細くなっていた。
(とにかく、コイツがムカつくことは確かだな!!)
「王家の運び屋」メモ:
怒羅怒羅スペシャル(魔導二輪)
・イメージはクルーザーバイク。
・ベルクの愛車。カスタマイズ(以下略…)。
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