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土日は3話公開です。

「あんたには羞恥心ってものはないの!?」


2階に上がると、部屋に入るなりエルディアはラスティに噛みついた。

ラスティはそんなエルディアに構うことなく、貰った包みを開いてみた。そして1枚クッキーを摘まむと口に放り込む。


「ん、うまいな…」


町のおばさんの手作りクッキーなど、絶対に初めてだろう。

それでも素朴な味わいが気に入ったようで、目をキラキラと輝かせた。


「そうでしょうとも!テキラのクッキーは特別美味しいんだから…って、ちがーう!聞きなさいよ!」


ラスティは、ギャンギャンうるさいエルディアの口にぽいと1枚突っ込んでみた。


「うまーい!!」


あっという間に、気を逸らされたエルディアをラスティは鼻で笑った。


「おまえだってチョロいじゃないか」


エルディアが先ほどテキラに使った言葉でからかってみせた。

昨日「お高くとまっている」と言われたのを気にしてるわけでもないだろうが、町人に馴染むスピードは尋常ではない。


「あんた、順応力高いわねぇ」


クッキー1枚で懐柔されたわけではないが、エルディアは少しだけ感心した。


何を言われるのかと警戒するラスティに目を向けることもなく、部屋に置いてある荷物を手にして、ざっと中身に目を通す。必要なものをチェックしながら、にやりと口角をあげた。


「ちゃんと平民の子どもに見える。悪くないよ?」


昨日はまだどこかぎこちなかったが、かなり修正をしてきている。現実を受け入れる適応力の高さは頼もしい限りだ。


「王族気取りが抜けなかったらどうしようかと思ってたわ」


「気取ってねぇよ!」


「どうかしらねー?」


不敬だなんだという文句が王族気取りと言われればそれまでだ。

それについては多少の自覚があるのか、ラスティは小さく舌打ちした。


ベルクやテキラに合わせて譲歩することも仕方ないと思っている。

それなのに、なぜかエルディアにだけは絶対に折れたくない。

自分でもよく分からない意固地な感情に戸惑いながら、エルディアから目を逸らした。


「まぁ、あんたがその調子ならそう簡単にバレたりしないでしょ」


能天気に笑うエルディアが、ラスティの服を雑に剥ぎ取り、代わりにワンピースを乱暴に着せる。


「がさつ過ぎるだろ!!」


手荒な着替えにラスティが文句を付けるとエルディアの目が面白そうに細くなった。

ラスティを見るときによくする顔だ。


「さ、ラスちゃん。かわいくしててね?」


最後にヘッドスカーフを巻くと、にんまりと笑った。


「なんだよ、ラスちゃんって…」


「かわいいでしょ。それに偽名って本名に近い方がバレにくいのよ?」


ラスティのもやもやした気持ちなどお構いなしのエルディアに、疲れたような顔で小さく息を吐く。


「偽名ですらないだろ…」


「ラス」はラスティの愛称だ。

関係者ならすぐ分かる。

だがエルディアは気にする素振りも見せず、荷物を肩に担いだ。


「かるーく呼んでたら、意外と気が付かないもんよ?」


「適当な奴だな」


なんだか全てを雑に扱われている気がするが、王城では経験しない扱いの連続にもそろそろ慣れてきた。


ラスティは視線で促され、エルディアのあとに続いて部屋を出る。ラスティが付いてくるのを確認してエルディアは階段を降りながら笑った。


「大体のことは適当がちょうど良いんだよ。締めるとこだけ締めてりゃ十分なの」


大雑把なエルディアらしい言葉に、ラスティは呆れたように息を吐く。


「おまえは適当すぎだろ。父親にも言われてるんじゃないのか?」


「親父に言われてもなー。あんたが言うなって感じだしね」


エルディアの言葉にベルクを思い出したラスティは、少し思案する。


「それもそうだな…」


そして、すぐによく似た父娘だと思い至りあっさり肯定する。


「そっくりだよ、おまえたちは」


「やめてよ!あんなオッサンと一緒にされたくないー」


嫌そうに眉をしかめながら、外に出るとベルクが待っていた。


「俺だっておまえみたいな大雑把な娘と一緒にされたくないわ!」


聞こえていたらしいベルクの嫌そうな顔を見て、ラスティが肩をすくめた。

全くどこを見てもそっくりだ。

だが、これ以上続けても不毛な争いになりそうなので速やかに思考を切り替える。


目の前に停められた魔導二輪を、興味深そうに眺めてベルクを見上げた。


「これは魔導具だな?なんか俺が知ってるのと、少し違う気もするが…」


「あらぁ!!あんた、よく分かってるじゃない!!!」


ほんの少しの違和感を感じてラスティは首をかしげた。

その瞬間、エルディアが嬉々とした声をあげた。


(……っ!しまった、こいつ改造マニアか!!)


そのテンションにラスティは即座に後悔した。押してはいけないスイッチを押してしまった気がする。





いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。


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