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土日は3話公開です。

薄いカーテンの遮光性など無いに等しい。

朝日とともに差し込む眩しさに、ラスティは寝返りを打った。


(ベッド固い…、眠い…)


向きを変えた途端ぽふっという弾力が頬にあたり、寝ぼけた頭で手を伸ばす。


ふに。


(…ふに?)


妙な感覚にラスティの意識がぼんやりと覚醒する。

重たい瞼を持ち上げると、目の前に柔らかな膨らみがある。ラスティは自分の手がそこに触れていることに気が付くと驚愕して飛び起きた。


「…っ!?」


音がしそうな勢いでベッドから飛び出したラスティに、同じベッドで寝ていたエルディアがニマニマと笑いかける。


「おはよう、ラスちゃん。よく眠れた?」


「なっ、お、おまっ!!なんで!?」


やわらかい何かが何だったのか思い至り、ラスティの全身の血が沸騰する。

碌に言葉も出せなくなったラスティなど、気にもせずにエルディアはベッドから身を起こした。


「あんた、昨日あのまま寝ちゃったのよ。体は子どもだから、やっぱり疲れてたんじゃない?」


ベッドから起き上がると、カーテンを引き開けようとスタスタと窓際に移動する。

すらりとした長い脚がショートパンツから惜しげもなく伸びており、上着にしているシャツは、大きさがあっていないのか肩が丸出しだ。


「ふ、服をなんとかしろ!!!」


なぜ同じベッドで寝たのかなど、言いたいことは山ほどあった。だが貴族の奥ゆかしい淑女たちしか相手にしたことのないラスティはそれどころではない。エルディアのラフすぎる格好に狼狽えると頭からブランケットを被った。


「おお、お坊ちゃん、起きたのか?」


ラスティの叫び声にベルクがのそのそと寄ってきた。

エルディアの格好を見ると息を吐く。


「お坊ちゃんは繊細だな。こんなガサツな女の、こんな姿にも遠慮するなんて」


「そういう問題じゃないだろう!」


思わずブランケットから顔を出して、ベルクを怒鳴りつけた。

だが、ベルクに至っては下履き1枚でうろついている始末だ。


「ふ、服を着ろ!!」


ラスティだって別に女性に不慣れなわけでもなければ、男の裸をどうこう思うような繊細な神経なわけでもないが、ほぼ初対面の人間が相手なら話は別だ。


「いいか、衣服は相手に対する敬意だ!だらしない格好でウロウロするな!!」


小さな体で目一杯怒鳴りつける様子は子猫が毛を逆立てているようで、全く迫力はない。

ベルクとエルディアは顔を見合わせて肩をすくめた。


「お育ちのいい方は、面倒ね~」


「まあ、おいおい慣れてもらうしかないだろう」


「なんで、俺が慣れるんだよ!おまえらが服を着ろ!!」


朝から騒々しいこと、この上ない。

案の定、テキラがドスドスと階段を上がってきて扉を勢いよく開けた。


「朝から喧しいんだよ、このごく潰しどもが!!」


バン、と音を立てて荒々しく入ってきたテキラだったが、涙目のラスティを見るとカシスウェル父娘をギンッと睨みつける。


「こんなかわいい子の前で、なんて格好しているんだい!」


「お、おばさぁん!!!」


最も強い者を味方につけることに躊躇のないラスティは、自分の持てるすべてのかわいさを武器にして、この中で最も強いテキラに抱きついた。


「あんた、本当にセコいわね!!」


その素早さにエルディアが襟首を掴もうと手を伸ばすが、テキラにその手を叩き落される。


「ええい、お黙り!この痴女が」


「ひど!!そいつなんかあたしの胸揉んだのに!!」


「してない!!!」


テキラの後ろに回り込みながら、ラスティが怒鳴り声をあげた。

したかもしれないけど、不可抗力だ。


「こんな小さい子に、あんたって子はなんてことを言うの!!」


テキラに叱り飛ばされてエルディアが身を竦める。

テキラの後ろで舌を出しているラスティに青筋を立てるが、なにしろテキラの前では分が悪い。


「あんた、覚えてなさいよ!」


「まだ、言うか!!」


悔しまぎれの負け惜しみにもダメ出しされて、エルディアがふくれっ面のまま両手を上げた。

「参りました、もうしません」のポーズだ。

テキラは鼻を鳴らすと、ラスティの頭を撫でて1階に誘った。


「朝ごはんができたからね。あんたもお食べ」


「テキラ、あたしたちのは!!」


「できたから呼びに来たんだろう、早く降りてきな」


家主のテキラは食事も振舞ってくれる、気のいい女だ。

ベルクとエルディアは基本的にこの家主に頭が上がらない。


「3食付きであの家賃だもんね」


「あの口の悪さでも、おつりがくるくらいの好条件だからな」


ベルクとエルディアはドスドスと下りるテキラの後に続いて、用意された朝食にありつくのだった。


「しかし、テキラって本当にかわいい女の子に甘いよね」


「孫娘を思い出すんじゃないのか…」


「娘」ではないラスティは一瞬複雑そうな顔をしたが、今はこの強力な味方を手放す気はないと、テキラに天使のような笑顔を見せていた。




いつも読んでくださり、本当にありがとうございます。


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