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「まあ、いいだろう。だいたい分かった……」


ラスティはそこで一度、話に区切りをつけた。

儀式の仕組みと流れは、大きく考えれば人と竜の間での取り決めということだろう。


「で、あとは竜剣を完成させて、竜とご対面ってことで良いわけだな?」


「ああ、そうだね。君が竜の力を受け取っても問題ない資質を持っていることは分かったからね」


「……それでも、最後は竜に直接交渉なのね?」


ここまでやったんだから、もうくれたらいいのに。

エルディアは思わずそうこぼした。

その様子にジーンは笑って答えた。


「そうはいっても、最後は竜の気まぐれ次第だからね」


「まあ、それは仕方がないな」


ラスティは軽く答えると、手の中の6つの宝玉を眺めた。

エルディアも一緒に覗き込み、その色を確認する。


最初に落ちたのは赤。

そして、黄、青、紫と続き、最後の2体はまとめて倒したから緑と橙が転がり落ちた。


「1体ずつ倒してたら、橙、緑って続いたはずなんだろうね?」


「だろうな?」


2人の出した答えにジーンは微笑みを深くした。

そうしてただ笑っているだけで、なんだか意味深に見えるのは本人が不可思議な存在だからだろう。


(結局、こいつだって良いやつでも悪いやつでもないのよ。ただ、そういうやつってだけなんだわ)


人の世の善悪の外にいる存在に、同じ感性で物事を考えろと言っても無理だろう。

ただ、できる範囲で人に寄り添っていこうとしているのは確かだ。


(てことは、やっぱりいいやつなのかしら?)


エルディアがジーンを見ていると、ラスティがエルディアの手を引いた。

いつまでもジーンばかり見ていたから不満なのだろう。

ラスティの行動の中に今までと違う理由が見えてきた。


(ううん、ずっとそうだったんだ……)


最初からではなかったかもしれない。

だけど、途中からはずっとそうだったと今なら分かる。


「なに? 妬いてるの?」


「妬くか……バカ」


短い言葉の中に隠れる分かりやすい嘘にエルディアが笑った。

それが面白くなかったのか、ラスティは小さく舌打ちをする。


「剣を完成させて、ここから出るぞ」


2人が思い出すのはカシスウェルの子守唄だ。


竜に会うならおめかししなきゃ。

金の麦で編んだ帽子。

お花で綺麗に飾りをしなきゃ。

赤、黄色、青、紫、橙、緑もいるわ。

大変、こんなに沢山飾れなかったわ。

赤、青、紫、そして緑を飾ってちょうだい。

黄と橙は花瓶に飾って、置いていくわ。

どう? きれいでしょ?



「ずいぶん、ご丁寧なこった」


「ここの謎解きだけ超簡単! ありがとう、ご先祖様!」


竜剣の柄に順番に宝玉をはめていく。

赤、青、紫、そして緑……。



竜剣がラスティの手から離れ宙に浮いた。


どぉぉぉぉ……ん……っ!!!!


轟音とともに稲妻が落ち、その電撃を竜剣が集約する。ばちばちという放電が一層激しさを増し、柄の部分が強い光を放った。


最後に精巧な竜が刻まれた鞘が現れ、プラズマをまき散らす竜剣が、ばちりとそこに収まる。


完成した竜剣が宙に浮いたまま、ラスティの目の前でゆっくり傾き、水平になった。


その柄に手を伸ばし、ラスティがしっかりと握りこむ。


その瞬間、闘技場の向こうに再び巨大な門が姿を現した。


「あれは……出口?」


「微妙に入ってきたやつと違う気がするが……」


エルディアとラスティがその門に釘付けになる。

ジーンはゆっくりと浮かび上がり、門の前に移動し2人をいざなった。


「あれはこの闘技場からの出口だよ。その先に、竜に続く扉が現れる……」


「晦(ツゴモリ)に出現する扉は、別にあるのね……」


エルディアは自分の家の伝承と照らし合わせた。

試練の場所に現れたのは「門」であって「扉」ではなかった。


そういうことだろう。


「こだわり強いな、おまえの先祖……」


「言わないで。あたしだって面倒だって思ってんだから」


ラスティは閉じられた門の横の小さなくぼみを見て、手元に残った2つの宝玉を確認した。


「『黄と橙は花瓶に飾って、置いていくわ』か。あれにはめるのはこの2つだな」


「そうだろうね。なんか、疲れたわ。早く出よう……」


エルディアは闘技場の低い壁に立てかけたドラコニスを取りに行き、そのまま先に行ったラスティのもとに押して追い付く。


ラスティが黄色と橙色の2つの宝玉を門の横の小さなくぼみにはめ込む。

門は重い音を立てて外に向かって開かれた。


「それじゃあ、無事に竜の力を手に入れられることを祈っているよ?」


門の外に出た2人が振り返ると、ジーンが門の中から別れを告げるように手を振っている。


ジーンの背後に浮かぶ月は綺麗な半月だった。



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