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土日は3話公開です。
「素晴らしいスピードだよ」
「そりゃ、どうも」
ジーンが芝居がかった仕草で拍手をするとラスティは面白くなさそうな顔で適当に返事をする。視線を移すとエルディアの気の抜けた顔が目に入る。
「なんて顔してんだ」
「う、うるさいな……、あんた、けがは大丈夫なの?」
思わず闘技場に飛び込む。
戦闘前にエルディアをはじき返した見えない壁の衝撃は無かった。
するりとラスティのもとに走り寄ってからそのことに気が付いたエルディアは、ジーンを振り返った。
「どういうこと?」
「一応、闘技場の試練は終了したからね。安全装置の解除ってところかな」
「あんたのその説明不足なところ、あとできっちり文句つけるからね!!」
ジーンはしれっとしたままだ。その飄々とした態度がまたエルディアの癇に障る。
だが、今はラスティの無事の確認の方が先だ。
ペタペタとその体を探り、痛みがないか確認をする。
「ここは? これは痛くない?」
「痛くねぇ。つうか、大丈夫だよ。あのクソまずい薬の後に、たいした攻撃なんか受けてねぇし」
あちこちを確認するエルディアのやりたいようにさせながら、ラスティは安心させるように宥める。それでもエルディアはまだ信用できないようでしつこく確認している。
「そうなの? 見栄はってるんじゃないの?」
「失礼な奴だな。そんなに心配なら全部脱ぐか?」
「……っ!? いいわよ! なんでそうなるのよ!!!!」
仲の良い姉弟のようなやり取りにも見える。
だが、以前のエルディアだったら問答無用で衣服をはぎ取っていただろう。
そこには確かに大きな違いがあった。
ラスティはエルディアの手を取って、そのまま指先に口づけた。
突然の出来事にエルディアの口から悲鳴が上がる。
「ひぃぃぃぃ!!!! なにすんの、あんた!!」
「いや、心配かけたかなと思って?」
「心配かけたらあんたは人の指先に口づけをするのか!!!!」
誰かれ構わず、するわけない。
いくらエルディアが鈍くてもそのくらいのことは分かる。
だからこそ、余計に顔に熱が集まるのを止められなかった。
「楽しそうで何よりだが、話を進めるかい? それとも私は席を外すかい?」
「ここまで来て、一時中断とかするわけないでしょう!」
「……ちっ」
のんびりとジーンが二人の間に割って入る。
すると、それぞれから異なる反応が返ってきた。ジーンは顎に手を当てて考え込んだのちに、ラスティに再度確認してみる。
「席を外すかい?」
「……いい。進めろ」
「なんで残念そうなの! 進めるに決まってるでしょう!!」
騒がしいエルディアを気に掛けることもなく、ジーンはラスティに頷いて見せた。
ここまで来たら竜騎士候補が行う事はひどく単純なのだ。
「その竜剣はまだ未完成でね」
「……このくぼみだな?」
ラスティが剣先を下に向け、柄の部分を差し出した。
不自然なくぼみが4つ。
「ご明察。先ほど手に入れた宝玉をはめ込めば完成形になるというわけだ」
「倒した魔物は6体で、6つの宝玉があるが?」
「よく見たらどれが竜剣に必要な宝玉か分かるはずだよ?」
ラスティは手元の宝玉を眺めた。
エルディアも釣られてその手の中を覗き込む。
「つまらん謎かけだな」
「これまでの中では一番わかりやすいんじゃない? 親切っちゃ、親切よ」
ジーンは2人の会話に、がっかりしたような顔をする。
どうやら自信作だったようだ。
「君たちは本当にいちいち文句が多いな」
「文句言われるような仕組みだって自覚してよ」
エルディアが冷めた目でジーンを見つめて言い切った。
色々と鬱憤が溜まっているのだ。
「まあ、いい。ところで、さっきの闘技場では何を試されてたんだ?」
最後の謎かけが大したことなさそうなので、ラスティは先に気になったことを確認しておくことにした。
単純に剣技のような技術力を試されていたわけではないだろう。
「ああ。あれは竜剣との相性と、竜気を使いこなせるかどうかのテストだ」
「相性?」
「人の体に竜の力は負荷が大きすぎるだろう?」
ジーンの言わんとすることは筋が通っているようだった。
ラスティは黙って先を促す。エルディアもそれに従った。
「竜剣を媒体にして竜の力を貸し出しているといえば分かるかな?」
「まあ、なんとなく」
「その竜剣を介して竜の力を操るのに必要なのが竜気という気の流れだ」
やたらと竜気が溜まることを気にかけていたのはそのためだろう。
そう察してエルディアが口をはさんだ。
「じゃあ、その竜気が足りてないとどうなるのよ?」
「竜剣が暴走するね? 過去のライアンのように」
「え!? あれ暴走してたの!?」
エルディアは山1つ吹き飛ばした英雄の話が、ただの失敗談だったことに驚愕した。
ロマンのある話は絶対に真相を聞いてはいけない。そう思ってしまうのに十分な残念な話だった。
「まあ、竜剣との相性は良かったから何とかライアンが抑え込んだんだけどね。あれは後始末が面倒だったな……」
「……なんでそんな不完全な状況で試練に臨んだんだ?」
「そのときはそんな条件が必要だって分からなかったからね? ライアンの後に追加したルールだよ」
そこでジーンは言葉を区切った。
そしてじっとりとラスティとエルディアを眺めると、これみよがしに両手を広げた。
「こんなに配慮しているんだよ、安全面には」
「まだ根に持ってるわ!!」
大体、エルディアから言わせたらそんなものは安全面に配慮しているうちに入らない。初めからちゃんと確認しておけという話だ。それもできなかったのだろうか。
「ライアンの後に候補者は現れなかったの?」
エルディアとラスティの知っている情報ではラスティの前にいるのは300年前のライアンだけだ。




