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土日は3話公開です。
その様子を見ていたジーンが軽く右手を上げた。その掲げた手のひらの前に、ふわりと光が集まる。それをそのまま、ラスティと向かい合う魔物に向けてすっと放った。
「ちょっと、なにしてんのよ?」
エルディアが訝しげに声をかけると、ジーンは不思議そうにエルディアを見つめた。そして首をかしげる。
さらりとその銀髪が揺れた。
「いや、彼の力に対して魔物が弱すぎるみたいだから難易度を変えようかと」
「余計なことしないでよ!!!!」
ジーンの顔をぶん殴ってやりたい。
その強い衝動を無理やり抑え込みながらエルディアは抗議した。
「彼がどのくらい強いのか、確かめてみたいじゃないか?」
「好奇心で試験内容を変えないで!! 訴えるわよ!!」
いったい誰に訴えるつもりなのかと突っ込まれたら答えようもないのだが、エルディアはジーンを怒鳴りつけた。
光を受けた魔物はぐんと体を丸めると、その直後、雄たけびを上げるように仰け反った。
ラスティの目の前でその体が大きく膨らむ。
「……問題ない。でかくなっただけだ」
ラスティは短く告げて剣を構えた。
その瞬間、ラスティをめがけて魔物の口から先の尖った黒いランスが飛び出した。
チッ……!!!!
ラスティの頬を掠めて背後の地面に突き刺さる。
間一髪で躱したそれは、地面にめり込むと黒く霧散する。
「ラス!!!!」
「問題ないっ」
エルディアの悲鳴にラスティはもう一度返事をすると、再び飛んできたランスを竜剣で弾き返した。その瞬間生じた僅かな隙に、猛スピードで魔物がラスティの懐に滑り込んでくる。
「っ!!」
魔物はラスティに向かって腕を振り下ろした。とっさに剣で防いだものの勢いは殺せずに、ラスティの体が吹き飛ばされる。
「ぐっ……!!!!」
闘技場を囲む低い塀に背中から打ち付けられて、ラスティの息が一瞬詰まる。
(スピードも上がったか……)
胸を押さえて、魔物の様子を注意深く観察する。
ぐるぐると喉を鳴らしている様子は、どこか余裕を感じさせた。
(生意気にも調子に乗ってやがる)
叩きつけたラスティにすぐに止めを刺しに来ない。
余裕を見せつけたいのか、命を奪うことは想定していないのか。
どちらにせよ、その間があったおかげでラスティは最悪の事態を免れた。
――だが。
(くそ、さすがに、今のが続くのはきついな……)
「ラス!!!!」
舌打ちしたラスティにエルディアが壁越しに駆け寄る。だが、目に見えない壁に阻まれて、それ以上そばに近づくことができない。
「大丈夫だ、問題ない」
「嘘!」
ラスティの言葉にエルディアが噛みついた。そして、そのままジーンを睨み付ける。
「あんなのずるい! 想定していた強さを後から調整したでしょ!!」
「まぁ。どのくらいのものか、興味が湧いたからね?」
ジーンの全く悪びれない態度が、エルディアの怒りの火に油を注ぐ。
カッとなったエルディアはジーンの胸ぐらをつかんだ。
「ラスティになにかあったら、あんたを絶対に許さないわ!」
「竜騎士の試練は危険が付きものだよ」
「そんなのあたしには関係ない! あんたの大好きなジャンポネイルだって巻き添えにしてやるわよ!」
恫喝のようなエルディアの言葉にジーンは眉を寄せる。
エルディアの怒りを不快に感じたというわけではない。ただ困惑していた。
「そんなに怒るなら、なぜ回復薬を使わないんだ?」
「持ってるわけないでしょう、そんなもん!!」
エルディアは吐き捨てるように叫んだ。
「あるだろう? あの中に……」
「は??」
ジーンが眉間のしわをさらに深くして、ドラコニスにくくりつけられた荷袋を指差した。
「この地の薬草で作られた薬が入っているだろう?」
「そんなもの……って、まさか!!」
エルディアは荷袋の中に放り込んだ緑の液体の小瓶を取り出した。
サンダクラプ村の薬師スフィリアに押し売りされた例のものだ。
「4つ1組、銀3枚のぼったくりの栄養ドリンク!!」
通常その手のものは1本、銅1枚だ。
カードゲームでイカサマされた意趣返しもあっての価格だろうと、敢えて言い値で買ったものだが……。
「まさか、これのことなの?」
「なんだ知らなかったのか」
ジーンが納得したように頷いた。




