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土日は3話公開です。
「……ふむ。彼の竜王眼は随分と彼に馴染んでいるようだね?」
「なによ、それ!?」
エルディアが悲鳴を上げた横で、ジーンはラスティを注意深く観察していた。
そのジーンの漏らした言葉を耳ざとく拾ったエルディアが、ジーンを見上げた。
「竜騎士になれる王族は『竜王眼』の持ち主だけだ」
「知ってるわよ、そんなこと」
「だが、それが体に馴染んでいるかどうかは個人差があるんだよ」
エルディアがぽかんとジーンの顔を眺めた。
そして沸々と怒りがわいてくる。
「後出しが多すぎるのよ!!!!」
だが、エルディアの怒鳴り声など、そよ風程度にしか感じていないのだろう。
ジーンは今度もまたさらりと聞き流すだけだった。
「竜の力は山1つ消し飛ばすほどの威力だ。誰に力を与えるべきかは慎重に判断する必要があるし、そもそもその力に馴染まない者など論外だろう」
「……っぐ! それは、そうかもしれないけど」
エルディアはサンダクラプ村の竜騎士ライアンの伝承を思い出して口ごもる。
確かにライアンは竜の力を得た瞬間に、山を1つ吹き飛ばしている。
「あれは失敗だった。竜王眼は馴染んでいたようだが、竜の力を操るだけの竜気が足りていなかったんだな」
「……竜王眼だけじゃ、力を授かる資質がまだ足りないってことなの?」
「まあ、受け入れられることと操れることは別だったということだな」
エルディアは怒りを感じながらも、だんだんとこの人外との話の進め方の要領を掴み始めていた。
(こいつ、こっちが聞かないと答えないんだわ)
聞いたところではぐらかされることもあるが、そもそもこちら側が何を気にしているかなんて考えたこともないに違いない。
そういうことであれば、聞きだせることは聞いておいたほうが良い。
「だから、試練の前までに竜気を満たす必要があったのね?」
「竜気が満ちなければ、それはそれで資格なしだ」
ジーンの話ではそもそも試練の前に振り落とされるものが出ていてもおかしくない。
(……違う。カシスウェルを訪ねて来た時点で試練は始まっているんだから、1次審査とか2次審査とかそういうふるいがすでにかけられていたんだ……)
「ところで、見てなくていいのかい?」
「見るわよ!」
ジーンに言われて、エルディアは闘技場に目を戻す。
現れた魔物のうち、既に2体が葬られていた。
放電する竜剣を真横に振るラスティが、3体目に向かい合うところだった。
「え、いつの間に……」
「彼は騎士としても優秀なんだね」
エルディアが呆然と闘技場を見つめる隣で、ジーンが顎に手を当てて感心した。
振り上げられた竜剣に雷が集まる。
その真っ白い光にエルディアが手をかざして目をかばった。
「おまけに雷属性の竜剣をすでに使いこなし始めているね」
「雷属性って……どういう……」
スパン!!!!
闘技場の中心でラスティが振り下ろした剣先から、雷を纏った真空の刃が魔物に鋭く向かった。そして、その胴体をすっぱりと切り分ける。
ずるりと斜めにずり落ちた魔物の上半身が地面に崩れ落ち、魔物は黒く霧散した。
カラリ……
乾いた音が響く。
魔物が消えた後に残された青い宝玉。
ラスティはそれを拾い上げて指先で摘まみ、ジーンに視線を投げた。
「これで3つ目だ。こいつを集めるってことでいいんだな?」
「理解が早くて助かるよ」
エルディアは展開の速さについていけていない。
見たこともない魔物を相手に、全く動じることもなく剣をふるうラスティは、王国の騎士としての実力を遺憾なく発揮している。
だが、それはエルディアが一緒に旅してきた小さなラスティからは想像もできないことだった。
(あれが、ラスティの本当の姿なんだ……)
面影は確かにあるので別人だとは思わない。
だけど、やはり違いすぎる。
ラスティに揶揄われてとっさに否定したが、本当は分かっていた。
その美しさにエルディアは完全に見惚れていた。
「どうした、言葉も出ないか?」
その視線に気が付いたラスティはにやりと唇を引き上げた。
エルディアの目に、ラスティの負けず嫌いな目が映る。
(……いや、違わない!)
エルディアはその目を見て確信した。
(あれは絶対こっちを揶揄ってる目だわ。今までのことをまだ根に持ってるやつ!!)
その瞬間、エルディアの中で小さなラスティと目の前のラスティが完全にリンクした。
その感覚のままエルディアは強く叫んだ。
「ほんっとうに、かわいくない!!!!」
エルディアの声にラスティが声を上げて笑った。
目の前の魔物を片付けなくてはならないという過酷な試練の最中とは思えない、明るい声だった。




