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「だったとしても!!」
エルディアはラスティに目線を合わせるように膝を折った。
ラスティは静かにエルディアを見つめたままだ。
「だったとしても、心配はするよ……」
「……それは構わない。けど、黙って見てろよ」
「絶対危ないじゃん……危なかったら止めるって言ったよ」
エルディアがいつになく必死なので、ラスティはつい頬が緩む。
今は絶対にそういう顔をしてはいけないと分かっているのに止められなかった。
「ジーンの言う通りだ。過保護すぎるだろ?」
「過保護じゃない!」
引き合いに出されたジーンは、エルディアとラスティのやり取りを興味津々という顔で見守っていた。しかし、口を出す気はないようで黙っている。
「このためだけに、ここに来たんだ……分かるだろ?」
「……聞き分けのない子をあやすように言うの、やめてよ」
「子どもみたいなことを言うからだよ」
ラスティは感情的になるエルディアの肩に手を置いてその目を覗き込んだ。
この程度を危険だといっていたら、本当にラスティがやりたいことなど、絶対にできないだろう。
「……すごく、行かせたくない」
「でも行かねぇと、何も始まらねぇ」
じっと目を合わせたままの2人だったが、先に折れたのはエルディアの方だった。
目を閉じるとラスティをそのまま引き寄せて背中に腕を回した。
「お願いだから、気を付けてよ……?」
「分かってるよ、心配性だな」
エルディアを落ち着かせるように、軽く背中を叩いた。
そのままジーンを見上げると、ジーンは唇を引き上げたまま頷いた。
「あの剣に触れてごらん?」
「分かった」
ラスティが広場の中心に踏み出す。
そのすぐ後に、エルディアが続こうとした。
どんっ!!
「わっ!!なに!?」
その瞬間、エルディアは強い衝撃で押し返された。
目の前の空間に手を触れると壁のようなものがある。
エルディアはペタペタとそれを確かめる。それは大道芸で見る動きのようだった。
どうにもならないと分かると、エルディアはジーンを睨みつけた。
「ちょっと、どういうことなの!?」
「試練を受けるものしか入れないようになっているんだよ。不思議はあるまい」
エルディアの強い視線にも動じる様子を見せず、ジーンは飄々としている。ラスティはエルディアを振り返って、目を丸くしたがすぐにジーンに視線を移した。
「そっちは危なくないんだろうな?」
「闘技場はその広場の方だからね。強いて言うならこちらは客席だ」
「闘技場!?」
ラスティの問いかけに、さらりと答えたジーンの襟元をエルディアが掴んだ。そして、そのまま、がくがくとジーンを揺さぶる。
確かに闘技場のようだとは思った。
――だが。
「あれは本当に闘技場だっていうの!? 戦うってこと? なにさせてくれんのよ、この優男!!」
「落ち着きなさい。そもそも剣に触れられなければその資格も得られないよ」
エルディアがジーンの言葉に、ばっと円形広場のラスティの方を振り返った。
ばちばちと音をたて火花を散らす剣に、ラスティの手が迷いなく伸ばされる。
カッッッ!!!!
その柄に手がかかった瞬間、強烈な稲光が走った。
あまりの眩しさにエルディアは手をかざして目を閉じた。
数秒後、恐る恐る目を開くと円形の中心には剣を構えたラスティが立っていた。
だが、それよりもエルディアを驚愕させたのは……。
「戻って……る……?」
火花をまき散らす剣を騎士の所作で一振りし、正面に構えたラスティは満月で見た青年の姿だった。
「なるほど……。悪くない剣だ」
薄く唇を引き上げた美青年。
確かに小さなかわいいラスティの面影はある。
だが、それ以上に強烈なインパクトでエルディアの視覚を襲った。
「ぎゃぁぁ!!!! なんっで、戻ってんのよ!!!!」
「おや、戻ると困るのかね?」
「困らないわよ! 困らないけど、困るのよ!!」
相当、混乱しているのだろう。言っていることがめちゃくちゃだ。
ラスティはエルディアがあまりに大騒ぎするので思わず吹き出した。
「動揺しすぎだろ、どうしたよ?」
「ど、どうもしない!! 久しぶりに見たからびっくりしただけよ!!」
「本当は見惚れたんじゃねぇの?」
つい、揶揄いたくなって思わず軽口を叩く。
エルディアの顔が一瞬で赤くなった。
(ち、ちがう!! 油断してたから驚いただけで、断じて違うわ!!)
「違う! 絶対に違う!!」
その様子にますますラスティの笑みは深くなった。
大事な試練に臨んでいる最中だ。そんなことを考えるのは不謹慎だ。
そう思っているのに、やはり思考は止められない。
(ざまぁ、みろ)
確実にエルディアの中に変化をもたらしたことを実感して、ほくそ笑む気持ちを抑えきれなかった。




