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土日は3話公開です。
「あ、帰る前に一応あっちの方も確認しておこうか」
エルディアはぐるっと周辺を見渡す。念のため、ほかに気になるものはないか、古い建物の跡や朽ちた柱を調べてみる。
「んー。こっちはただ古いだけかな?」
「どうだろうな。なにかのヒントかも知れねぇし、それっぽいだけの演出かも知れねぇし……」
「手持ちの情報だけじゃ、さすがにそこまで分からないね。この場所自体がそもそも怪しいし……」
改めて薬草の群生を見渡す。
素人目に見ても、これだけの種類の植物が、無作為に大量発生しているのは不思議なことに思えた。
「土地そのもののエネルギーが関係してるのかもな」
ラスティはジャンポネイルの地学者アランの言葉を思い出して、エルディアを見た。
「ああ、変わったエネルギーを持つ地脈がどうのってヤツね」
宿においてきた資料を思い出してエルディアは頷いた。
特殊なエネルギーを感知した場所があると言っていたし、ここもそこに含まれているのかもしれない。
「だからって、なにが分かるってものでもないか……」
「直接関わりのありそうなものは見つからなそうだし、気にしておくだけでいいんじゃねぇの」
「そうだね」
頷きあい、2人は朽ちた柱をベンチ代わりにして腰を下ろした。エルディアは荷物から携帯食を取り出すと、ラスティに差し出す。
「お腹空いたし、これ食べてから帰ろうか」
「しょぼいピクニックだな」
受け取ったラスティがまじまじとそれを眺めた。
エルディアは食事に対しては妙に完璧主義なところがある。いつもは携帯食でも、それなりのものを出してくるのだが、いたって普通のものに見える。
ラスティが目をやると本人も不本意だったのだろう。続けて水を差し出しながら、頬を膨らませた。
「しょうがないじゃん。今日はこれしか用意できなかったんだし!」
「悪いなんて言ってないだろ」
思いのほかエルディアの顔が幼くなった。その様子に、差し出された携帯食を齧りながらラスティはけらけらと笑う。
「リスの頬ぶくろみたいになってるぞ?」
「なってないわよ、失礼ね!」
くだらないことを言い争いながら、簡単な食事を済ませる。そして来たときと同じだけの時間をかけて村に戻った。
村に着くと時間を確認する。
夕暮れにはまだ早い。
「明日の準備、ちゃんと出来そうだね」
明るいうちに帰ってこられたことに、エルディアはほっと息を吐いた。
「よかったな。で、なにが必要なんだよ?」
「水と携帯食を追加したいな。防寒シートみたいなのはもともと持ってきてるし、あとは……」
「分かった、もういい」
指を折って確認し始めたエルディアにラスティはひらひらと手を振った。
エルディアはぴくりと片眉を上げて、ラスティを見下ろす。
「あんたの試練の準備なんだけど?」
「信じてるから、任せるよ」
「面倒になってるだけじゃん!」
適当なラスティの相槌に、エルディアは、両手を広げて大袈裟に嘆いて見せる。
「そんなことねぇよ。めちゃくちゃ頼りにしてるぜ?」
「こんな白々しい顔でよく言うわ!」
エルディアはラスティの鼻を摘まみ、いーっと舌を出した。
痛くもないが、鬱陶しいのでラスティはエルディアの手を振り払う。
「摘まむな!」
「可愛くないことを言うからでしょ」
2人はいつもの軽口を交わしながら、そのまま買い出しに向かった。
エルディアはあれこれと露店を巡りながら必要なものを次々に購入していった。
そうこうしているうちに、町が夕暮れに染まっていく。
欲しいものは全て揃えられたようで、エルディアは満足そうに目を細めた。
「これでよし。明日はドラコニスであの門に戻ろう」
「ほらな。結局、一番必要なのはドラコニスだってことだろう?」
「当たり前でしょ?」
エルディアのキョトンとした顔に、ラスティは面白くなさそうに鼻を鳴らした。
(なにかあったときの移動手段だ。それだけだ。むしろ、それ以外に意味なんかない)
心の中で呪文のように言い聞かせるラスティを、不思議そうにエルディアは見つめる。
「なに? あんた、あたしのドラコニスになんかご不満でもあるの?」
「別に、ねぇよ」
不貞腐れたような声になってしまったことに、ラスティは軽く舌打ちした。




