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土日は3話公開です。
第7章が始まります。
ここからはときめき展開(当社比)が始まる予定!
突然目の前に現れた壮大な門に、あっけにとられていた2人だったが、まずエルディアが先に気を取り直した。
門に近づくとその正面に立ち、門の向こうの様子を覗きこんで眉を寄せる。
「ねえ、この門ってなんだと思う?」
「なにって、なんだよ」
あれだけ御大層に出現したのだから、例の試験会場への門には違いないだろう。
それでもエルディアは確認せずにはいられなかった。
「これ、どこに続いてんのかなと思ってさ」
「どこって……」
エルディアは、困惑するラスティをよそに門の裏側に回り込んでみる。
正面から見た門の向こうは、どこかに続いている。だが、門の裏側に立つとそこにはなにもない。
空間が、あるべき秩序から外れているのだ。
エルディアはそのまま門から距離を取るように離れてみる。
すると、ぶんっというノイズ音がして門は掻き消えた。
「消えた!?」
ラスティが目を瞬く。
エルディアはそのままもう1度、門のあった場所に近寄ってみる。
手元のペンダントと右手の紋章が仄かに発光し、再び、しかし今度は轟音を響かせることもなく門が出現した。
「なるほどね……。この門ってあたしの紋章とペンダントがないと実体化しないんだ」
「そんなことが、あるのか……?」
「カシスウェルが一緒じゃないと竜騎士の試練が受けられないっていうことは、そういうことなんじゃないの?」
エルディアだって釈然とはしないが、現れたり消えたりする門に常識的な原理を求めても無駄だろう。ラスティに肩をすくめてみせた。
「まあ、確かに……考えても仕方ないか」
ラスティが門の方に向かって歩きだしたので、エルディアは慌ててその首根っこをつかんだ。
「だから、待ちなさいって!!」
「っぐ!!!!」
息を詰まらせたラスティが、エルディアの手を振り払って怒鳴りつける。
「今度はなんだ、離せ、苦しい!!」
「ほいほい入らないでよ!!!!」
首に手を当て襟元を直すラスティに、逆にエルディアが詰め寄った。
ラスティは目を瞬いてエルディアを見上げる。
「試練の会場って絶対コレだろう?入らないでどうすんだよ」
「ねえ……あたしの影響だっていうなら謝るから、お願いだから警戒心を取り戻してよ」
「失礼なやつだな。入ってみないことには、なにがあるのか分からないだろう?」
心外だと眉を寄せるラスティの鼻先にエルディアは指を突き付けた。
分かりにくいがラスティはラスティで焦ってはいるのだろう。
(良かった。こいつとあたしの焦るポイントが微妙にずれてて)
片方が先走ろうとしたときに、もう片方がストッパーになれることに息を吐いた。
「なにがあるか分からないから、ちゃんと準備しようって言ってるの」
「なんの準備だよ」
ラスティとしては中の様子を見てみてから必要なことを考えればいいという判断だったのだろう。それも間違いではないだろうが……。
「せめてなにかあったときに逃げられるだけの足を確保しておきたいの」
「こんなところ、竜騎士の候補者しか入らねぇだろ」
「その試験内容が危なかったら、逃げるの!!」
ラスティにとって試験内容がどんなものであっても、「逃げる」という選択肢はない。
危険はもとより承知だが、こんな常識の外にあるような出来事に備えておける準備などないというのが率直な感想だった。
「……逃げねぇよ」
「あたしは逃げる!危なそうだったら、当然あんたも連れて逃げる!!」
ラスティの言葉にエルディアが反発して、しばらく2人は無言で睨みあう。
先に折れたのはラスティだった。
エルディアの視線を受けて息を吐く。
頭を冷やして考え、エルディアにも危険が及ぶことに気が付いたのだ。
(どうかしてる。こいつを巻き込んでいるのに、その危険を失念するなんて……)
「……分かったよ。悪かった」
「良かった。聞いてもらえなかったら腹を殴って気絶させてでも止めるところだわ」
「……物騒な女だな」
ラスティが思いとどまったことに安堵したエルディアは、強張った体の力を抜いてその場にしゃがみ込んだ。
ラスティは、吐き出されたため息交じりの言葉に苦笑した。そして、エルディアの頭を見つめながら改めて思考を整理する。
「とにかく『入口』らしきものは見つかったんだ。その仕組みもなんとなく分かったし、出直すか」
「そうさせて。あたし、今日はピクニック程度の準備しかしてないのよ」
安心して見上げたエルディアの目に、ラスティの琥珀色の目が映る。
想像よりずっと近い位置にあったラスティの顔に思わず声を上げた。
「近っ!!!!」
「そんなところにしゃがみ込むからだろう」
「わ、悪かったわよ! ほら、村に一旦帰ろう!!」
動揺して顔まで赤くしているのに、すっと立ち上がってラスティに手を差し出した。
繋げ、ということだろう。
(いちいち律儀に過保護なやつだな……)
エルディアの中の複雑な心境を想像して、ラスティの口元が思わず緩んだ。
自分でも気が付かなかった肩の力も、すとんと抜けた気がした。




