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土日は3話公開です。
――その平地は見渡す限り薬草に埋め尽くされていた。
その薬草の所々から朽ち果てた柱が覗いている。その柱の向こうには崩れた古い壁があり、びっしりと蔦に覆われている。
確かに建物と言えば建物に見えるが、そこからかつての姿を想像するのは難しい。
「すごいわね」
「まるで薬草畑だな」
太陽は高く上り、遮るもののない群生地には日の光が燦々と降り注いでいた。
サンダクラプ村から休憩を挟みつつ歩き続けて、ようやくたどり着いたその場所で、思わず2人は息を吐いた。
その瞬間、エルディアのネックレスが鎖に繋がったままふわりと浮き上がった。
「おい、それ!」
「やだ、あんたの言ってたこと、当たりなんじゃない!?」
ラスティの声に慌ててエルディアは首から外した。そして手元から離れないように鎖に軽く指に掛ける。浮き上がったペンデュラム型のネックレスはゆっくりと回転し、その先端を一点に向けるとピタリと止まった。
「え、なにこれ。コンパスみたいなもんてこと?」
「いや、だったらもっと早く働けよ……」
唐突に仕事を始めたネックレスを、2人は苦虫を噛み潰したような顔で眺める。
何かを指し示すなら、初めからちゃんとして欲しい。
「もしかして、発動条件があるのか?」
「近くまで来ないと反応しないとか?」
エルディアとラスティは目を合わせると嫌そうに息を吐いた。
「あり得るな……。温泉に浸かるだけで良いのに、謎解きをさせるくらいだ」
「……勘弁してよ、こっちだって暇じゃないっつーの」
なんとなくこのネックレスの仕組みも、ジーンやまだ見ぬ竜の演出なのかと思うと、文句の1つも言いたくなる。
竜気は溜まったと言っていたはずだ。
だとすると、別の条件を整えるためなのかもしれない。はたまた単に時間を稼いでるだけなのか……。
「せめてなにか意味があることを願っちゃうわね」
「意味がない可能性もあるからな」
疲れた顔を隠しもせずに、2人はとりあえず、ペンデュラムの指し示す方に向かってみる。
進むほどに、ラスティの肌が周囲の空気を受けて僅かな痺れを感じ始めた。
「……なんだ?」
「なに? どうしたの?」
「体がピリピリしてる……」
ラスティが手のひらを見つめながら呟いた。多少の不快感があるが、ほかに違和感はない。
ラスティは心配そうなエルディアに問題ないと頷き、先を促す。
しばらく歩くとペンデュラムが、その場でまた、くるくると回りだした。
「ここってことかしら……?」
「ここに、なにが……」
カッッッ!!!!
2人が回るペンデュラムを覗き込んだ瞬間、その場所が真っ白な閃光に包まれた。
「眩しっ!!」
「なんだ!?」
思わず手を翳し目を庇う。
白い光が落ち着いたのを瞼の裏で感じると、ラスティは恐る恐る目を開き周囲の様子を窺った。
「熱っ!!!!」
「お、おい!」
エルディアの悲鳴が短く響く。
ばっとラスティが目を向けると、その手の甲が金色に発光している。
エルディアは思わずグローブを外して、勢いよく手を振った。
それでも竜の紋章の熱は冷めないようで額に汗が浮かんでいる。
「なんなのよ、もう!!」
エルディアが一際大きな声で叫んだ瞬間だった。
どぉぉぉぉん!!!!
雷鳴のような音が轟き、辺り一帯がビリビリと震えた。
青天の霹靂。
青く澄みわたる青空に、雷が落ちるなんて竜の仕業に違いない。
昔の人がそう思ったとしても、誰も責められないだろう。
(そういえば、この辺りはよく雷が落ちるってブルーベルたちが言ってたわね……)
目の前の出来事から目をそらすように、エルディアはジャンポネイルの研究者たちを思い出した。
気付けば紋章の熱はすっかり引いている。
「おい! 大丈夫なのか!?」
ラスティの必死な顔が少しおかしかった。安心させるようにラスティの顔を見て頷く。
そしてそのまま右手を上げて、目の前を指差した。
「うん、もう大丈夫だよ。それより、これ……」
「ああ……」
見上げた2人の目の前には、いかにも意味深で壮大な彫刻が施された『門』がそびえ立っていた。
「扉の出現は晦じゃなかったの……?」
エルディアは呆然と呟いた。




