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春の風夏の桜  作者: かずや


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6/27

一緒


 ——テストが始まる前の静かな時、あと三分

 最後の最後まで足掻く者、諦めて時を待つ者様々。

 シャーペンと消しゴムだけを用意し優馬は時を待つ。

 同じ時の待ち方を夏乃もしているのだろうか。

 (図書室で待ってる)

 その言葉が優馬の原動力になっていた。

 そして、テストが始まった。


 一日目、二日目と過ぎ、帰っては翌日のテストの為に一人勉強をする。

 四日目に全てのテストをやりきり、終わりを迎える。

 後は夏休みだが、その前にテストの結果が返ってくる。

 これまでにない優馬の勉強量、そして夏乃に教わった日々。

 確かな手応えがあった。

 普段なら平均値辺りで収まる結果、やれば結果は出ると頭で分かっていてもやれないのが人間。

 こんなにも結果が気になる時間は初めてだ。


「——春風」

 ついにテストの結果表が手元に来る。

 担任から渡され「頑張ったな」と一言。

 その瞬間、報われたと理解した。

 優馬は数字結果とクラス学年平均と見比べる。

「……っ!」

 思わず拳を握り込んだ。

 全ての教科が平均を上回り全体中盤定位置だった所から、大きく順位が上がりトップ層に届く位置まで跳ね上がっていた。

 (やった!……夢みたいだ……)

 努力が身を結んだ。

「うわ!え?春風まじで!?」

「春風どうしたんだよ!」

「お前体育以外も取ったら完璧超人じゃないかぁ……」

 友達がわちゃわちゃ寄ってくる、皆優馬の成績に目を丸くしている。

 それ程に躍進していた。

 だが、優馬は喜び程々に、夏乃に胸を張って会える喜びの方が大きかった。

 (先輩……)


 テストが終わってから夏休みに向けての諸注意を受け、解放される。

 クラス内は終わった事による安堵感と夏休みに向けての期待、そして高二と言う事の進路に皆少しの不安を抱きながら解散していく。

「春風ー!自由だ自由だ!皆とさ飯食って帰らない?」

「悪い、ちょっと用事あってな!」

「なんだよ〜今回の結果の秘訣を聞きたかったなぁ〜まあじゃあまた今度だな!」

「ああ!すまんな!」

 (秘訣か……見て欲しかったからかな……)

 優馬は少し人が減った教室を静かに後にした。


 ——図書室

 テスト一週間前の間はチラホラ利用されていたが、今はガラガラ。いつもの風景に戻った。

 テスト終わりの短縮日なので昼までには閉まってしまう。

 残り時間はそれ程無いが、目当ての人に会いに来た。

 最後に時間を共にした喫茶店から十日程経っていた、今会いたい気持ちで一杯の優馬だった。

 図書室に入り、一番奥の死角になった指定席。

 視界に収めた時、優馬は力が抜けた。


「待ってたよ」


 柔らかな笑みでこちらを見る女性。

「夏乃桜」はそこに居てくれた。


 優馬は静かに座り、テストの結果表を出した。

 緩やかにその紙を綺麗で細い指がなぞりあげる。

 それだけなのに嬉しかった。

 また時間を共有している。


「うふふ、凄いじゃない頑張ったわね」

「先輩のおかげです、こんなに良い結果出せたのは」

「ううん、春風君が頑張ったから。私はお手伝いしただけ」

 スッと夏乃の腕が伸び、優馬の頭を撫でる。

 恥ずかしいが身を委ねてしまう。


「じゃあ……デートしようか」


 覚えていてくれた、勢いに任せ言った約束を。

 優馬の鼓動は早まり強くなる。

「どこに連れてってくれるのかな?」

 イタズラっぽく問われる。

 優馬にプランは無かった、勢いで「デートしてください」とは言ったが、そこまでの具体的な考えまでは出来てなかったのだ。

「あ、ちょっと待って……」

「うふふ、良いの。テストも終わったし夏休みだもの、ゆっくり一緒に考えよ?」

「……はい、頑張ります」

 軽く夏乃に笑われ下校のチャイムが鳴り響く。

「今日はここまでだね」

「はい……」

「夏休み中は図書室空いてるんだよ」

「通います」

「ふふ、じゃあ一緒だね」

「また……勉強教えてください」

「……いいよ、夏は一緒にここで居よう」


 何か頭がクラクラするような空気を見せる夏乃から目が離せなかった。


 ——帰り道


「先輩はテストどうだったんですか?」

「私?」

 夏乃は優馬にずっと付いてくれていた、自分の勉強をしている素振りが無く少し気になっていた。

 例え就職が決まっていてて、卒業単位取るだけとは言えど放り投げるような事はしないはずだが。

「ハイ!私はこうなりました」

 パッと広げられたテストの結果表には「学年順位四位」と記載されていた。

「は!?え?先輩まともに勉強出来てなかったんじゃ?」

「うふふ、君が頑張るから私も頑張っちゃった、それも一緒だね」

 小さなウィンクを一つ。

 図書室では静かな空間だからかミステリアスで、妖艶に映る夏乃。

 外では明るく茶目っ気たっぷりな夏乃。

 

 方向性の違う「先輩」の姿に勝てないなと優馬は息を吐いた

 そんな優馬を見て夏乃は子供っぽく笑っている。


「デートも楽しみだね」

 子供のような笑顔から妖艶なくらりとしてしまう大人の顔をされて、優馬は顔を赤くすることしかできなかった。

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