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春の風夏の桜  作者: かずや


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24/27

ゴールへの決意


「あぁ、今日から体育はマラソンかよ〜」


 クラスメイトの落胆振りが激しい。

 かくいう優馬もただ校庭を走るだけのマラソンは気乗りはしない。

「春風は、そこまで嫌な顔しないよな」

「え?そうか?」

「なんか夏休み終わってから変わったと言うか……やっぱり彼女出来たから?」

 ちょくちょく桜の存在を彼女と呼ぶクラスメイト達だが、否定も肯定もする事はない。

 事実変わったのは桜の存在だし、でも付き合ってはないし。

「まあ……変わったと言うか覚悟したのかな」

「春風なんか大人になったよな」

 周りから見て変わる程に濃密な夏だったのだろうか、自分ではピンと来ないが皆がそう言うならそうなんだろう。

 ゾロゾロと校庭に向かう。

 その道中三年も移動教室だったのか、桜が見えた。

 相変わらずグループに入ってはいないが、完全に一人じゃない様に見える。

 あまり喋らない大人しい人みたいな雰囲気だ。

 桜が優馬に気付く。

 途端にパァッと花が咲くように笑顔を向けた。

 手を振り応えたところでクラスメイト達が優馬を見て、目を丸くしている。

「なんだよ」

「春風おまえ……良いなぁ……」

「なんだよ、めちゃくちゃ好き同士じゃねえか!」

「先輩美人だなぁ……」

 好き勝手言うクラスメイト達に鼻を鳴らしさっさと校庭に向かった。


「よぉーし今日からマラソンだぞ!グラウンド十周〜」

 先生の号令でスタートが切られる。

 (前までなら嫌々だったな)

 走り出して優馬は思う。

 球技とは違いただ走るだけのマラソンだが、身体能力の向上には一番都合が良い。

 今の優馬に必要な事だと理解すれば、気持ちも変わる。

 走りながら夏を振り返る。

 桜を意識して好きを伝え合った海、過去が繋がり約束を再確認出来た夏祭り。

 行けた所は少ないが大きな出来事であった、そして将来の目標が出来た。

 今走るように、一つずつ進んでいく。

 走った分だけ体力は付くし目標に近くなる。

 (マラソンみたいなもんだな)

 優馬は息を切らしながらもノルマの十周をこなし、校舎を見た。

 窓に見えたのは桜だった。

 席的に見える席だったのか、遠くからでも笑ってくれてるのが分かった。

「……必ずゴールしてみせる」

 優馬はさらに気合いを入れて、己に誓った。


 放課後になり、いつものように図書室へと向かう。

 いつもの席に……桜が居ない。

 (あれ?珍しいなホームルーム長引いてるのかな?)

 とりあえず優馬は座り勉強道具を出して勉強をし出した。

 十分程したところで小走りに桜がやってきた。

「遅くなっちゃった」

「珍しいですね」

「うん、明後日の金曜日で最後になるからってクラスで話されてね」

 否応にも別れの時が迫っているのを感じる。

 意識しないようにしてもそうはいかない。

「……クラスの皆から寄せ書きもらう事になっちゃった」

「へぇ、良いじゃないですか」

「なんか悪い気はしちゃうけどね、あんまり喋らなかったし一人高校生活先抜けだし」

 少しだけ桜は戸惑いを見せている。

 恐らく寄せ書きみたいな贈り物は想定外だったんだろう。

 静かに消える事を考えていただろうが、周りはそうじゃ無かった。

「形式的な物としても、桜さんはしっかりクラスメイトだったんですよ」

「え?」

「違う道を歩いてても浮いてても一緒だったのは間違いない事実、一人じゃなかったんです」

「そうなのかな、私……」

「桜さん、今から何か見に行きません?」

「何かって?」

「クラスの皆へのお返し」

「……そうね、貰ってばかりじゃダメよね。クラスメイトだもん」

 優馬は勉強道具を片付けて桜の手を取った。

 桜はもう迷っていない、この夏を経て強くなったのは優馬だけじゃなかったようだ。

 今日は二人で放課後デートに切り替わる。

 桜のクラスメイトへのお返しを選びに……


 桜のお返し選びを終えて帰宅する。

 優馬からすれば僅かな、二人での時間を削った形の放課後となったが後悔は無い。

 桜にとって大事な事だったと思っている。

 桜自身も以前に「こんな自分に興味を持ってくれるクラスメイトが居たんだな」と感じている様子を見せていた。

 ただタイミングが遅かっただけ、ただ道が違うが故に浮いていただけ、桜が嫌われる道理はなかった。

「むしろ皆と同じような道なら人気者だよな……」

 優馬は想像してしまう、桜が普通に進学や就職を皆と同じタイミング同じルートで居られる人だったら。

 あの明るくて可愛くてお姉さんの性格に容姿も整っている、友達が多いタイプだろう。

 そして、告白とかされちゃうタイプだろう……

「……何を考えてるんだ俺は」

 一瞬嫉妬の感情が湧き上がる。

 自身の独占欲の強さに驚き、それ以上は考えなかった。


 スマホがメッセージを受信する。

「明日、校舎の裏に来て」

 桜からだが文面がおかしい、校舎裏の指定とは一体。

 とりあえず「わかりました」とだけ返したが、何かあるのだろうか?

 疑問を抱きながら、今日はマラソンで消費した体力回復の為に就寝することにした。

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