表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春の風夏の桜  作者: かずや


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/27

春風優馬


 ——先輩の事も隠した感情も全部知りたい


 優馬は思わず言ってしまった事に後悔はしていなかったが、少し反省はしていた。

「勢いに任せすぎた……」

 今思えば何言い出したのだろうと、夜ベッドで悶えている。

 遠回しに好意が有りますと言ったようなものだ。

 確かに夏乃は美人で明るく惹かれはするが、内面的な部分なんてチラッと見えたにしか過ぎない。

 そもそも出会ってまともに話したのなんて、あの日ぐらいだった。

 優馬は自分でもわからない衝動に突き動かされた。

 あの貼り付けられた夏乃の顔を放って置けない、そう思ったのは事実だが、もっと順番とやりようがあったはず。

 優馬が悶えるほどに勢い任せで言った言葉に夏乃は「明日も放課後、ここで待ってる」

 と告げて帰ってしまった。

 待っている、と言う事は受け入れられたで良いのだろうか?

 夏乃の顔が暗闇の天井に浮かぶ。

 優馬はぐるぐる巡る想いを抱きながら眠りに着いた。


 翌日、学校に着いて息を吐く。

 (放課後だな……)

 今日何か分かるのか、ただ話すだけなのか夏乃との関係性がよく分からない。

「春風ー!……?おいどうした?」

「おはよう春風……何だこいつ呆けて?」

 クラスメイト達がマジマジと見てきて優馬は我に返った。

「あ、ごめんごめん考え事してたら……」

「おいおい、次体育なんだから怪我すっぞ?」

「今日から隣と合同サッカーだろ?春風頼むぞ?」

 バンバン背中を叩かれて行く。

 優馬は学力はそこそこだが、スポーツは出来た。

 運動系部活の勧誘も多いぐらいに身体を動かすのは好きだ、それが評価を得ているのかクラスメイトからは「吹き荒ぶ春風」なんて異名も付けられている。

 部活に入ってまで打ち込む気は無いが、授業や休み時間で運動するのが楽しい。

 身体を動かしていると色々忘れてしまえるからだ。


 隣クラスとの合同サッカーが始まった。

 ここではやはりサッカー部が強い、だが他の運動部も専門外だが体力勝負に遅れは取れない。

 きゃー!◯◯くーん!!

 女子の歓声が聞こえる、そうこれが運動部の原動力だった。

 ボールを持てば、運動部でも無い優馬にも黄色い歓声は飛ぶ。

 一人交わし、二人交わし……足を振り抜いてゴールポスト隅にボールを叩き込む。

 春風くーん!カッコいいー!

 綺麗に決まった流れに歓喜と歓声が優馬に注がれる。

「ったく何でお前は帰宅部なんだよ!ウチに来いよ!」

「ダメダメバスケ部だって!二年からでもコイツなら絶対レギュラー取れる!」

「春風、水泳したくないか?」


 優馬はもみくちゃにされながら、部活勧誘を受けながらなんとか輪を抜け出す。

 (ふぅ、えらい目にあった……?)

 ふと見上げた校舎の二階、三年クラスのエリア……ジッと見つめてくる女性と目が合った。


 ——放課後、優馬は荷物を持ち図書室へ向かう。

「お、じゃあな春風〜」

「お疲れ〜今日も大活躍だったな!」

 帰宅する者や部活に行く者でクラス内や廊下はざわついている、何人かは道すがら別れの挨拶をしてくれて優馬も返していく。

 そんなざわついた教室エリアから離れて図書室に向かう、こちらは対照的に静まっていて世界が違って見えてくる。

 図書室に入り見渡す、今日は二〜三人利用者が見える。だが場所のルール上静かにしている。

 一番奥を目指し、待ってくれていた人を見つける。

 フリフリと手を振り、言葉を発さず「待ってたよ」と口の動きだけで言われた。

 鼓動が早くなった。

 とりあえず夏乃の前に座り息を吐いた。

 なんだかニコニコされている。

「お疲れ様です」

「ふふ、お疲れ様」

 静寂な空間の妨げにならないよう小声で挨拶を交わす。


「カッコよかったよ」


 不意に言われた言葉に優馬はカバンを落とした。

 バサっと音が響いて優馬は「すみません」と周囲に謝る。

「な、な、なんですかいきなり」

 声が上擦りながら夏乃に問う。

「あれ〜?目が合ったでしょ?」

 サッカーの歓喜の輪から抜け出て見えた校舎、そこから見ていた夏乃。

 わかってはいた、だがいきなりカッコいいと言われたら照れる。

 (照れる?クラスの女子にキャーキャー言われるよりずっと……)

 優馬はふと照れる度合いに考えだした。

 今夏乃からの一言が一番嬉しく恥ずかしく感じていた、何人からもまとめて沢山黄色い歓声受けるよりも。

「おーい春風くーん?」

 ハッと意識が戻る、目の前に可愛くてかっこいい綺麗なお姉さん、夏乃先輩としての顔が迫っていた。

「大丈夫?熱中症?ぼーっとしてたよ」

「大丈夫です、すいません」

 まさか褒められて照れましたとも言えず、至近距離のお顔が綺麗過ぎて見惚れてたとは言えない。

「うふふ、今日は君の事一つ知れたな」

「え?」

「運動が好きだってとこ」

 ニコッと笑いかけられ、また意識が遠くに行きそうだった。

 別に女性免疫が無い訳ではない、スポーツやイベントを通じて客観的に見れば、それなりにモテてるんだとは理解していた。

 だが、目の前の女性には胸の鼓動を抑えられない。

 一つ一つの動作に目がいく、胸が跳ねる。

 夏乃桜と言う女性にだけは心を乱された。


「学年一緒だったらもっと見れたかもにね」

「……はい、頑張ります」

「ぷっ、どういう事」

 自分でもわからない返答に夏乃を笑わせてしまい、図書委員が目で圧を掛けてきた。

 すいませんすいませんと何度目かの謝罪をして、落ち着く。

「うふふ、春風君は可愛いね」

 また心が乱される……


 キーンコーン


 ベルの音が学校施設のタイムリミットを知らせる、図書室も時間だ。

「残念、また明日ね……あ、明日は勉強道具持ってきてね?」

「勉強……道具……?」

「何言ってるの、期末前だよ?見てあげる」

 夏乃と居られる時間に気を取られて完全に失念していた。

 しかし、勉強を教えてくれるとは……

 正統な会える口実が出来て内心飛び上がっていた。

 優馬は「よろしくお願いします」と頭を下げて夏乃と共に下校した。

 

 季節が夏に向かっていく夕日が眩しかった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ