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春の風夏の桜  作者: かずや


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18/27

未来のために


 ——盆が過ぎ


 桜と想いが深まった夏祭りが終わり、すぐにお盆に入った。

 互いに家の事で会えない時間が長かった。

 優馬は両親の実家の墓参りに行くが、元々離れても無い距離の為に毎年日帰りではあった。

 それに高校二年と言う時期、親からは友達と遊ぶか勉強するかを優先すれば良いとまで言われる。


 クラスのチャットは動いている、祭りの後にやはり桜と居た事が話題に上がっている。

 部活で夏休みに校舎に居た友達も図書室から出てくる「春風優馬と夏乃桜」を目撃しており、同年代の興味は付き合っているのか?となってくる。

 優馬は最前線で目立つ人柄では無いが、クラスの雰囲気を作る要にはなっている。

 どうしても皆の興味を惹くし、ましてや部活もしてないのに三年の先輩とどうやって?になる。


「俺にだって不思議な……運命なんだよ」


 スマホに表示されるチャットを見て、優馬は呟く。

 そう、運命的な出会いと付き合いをしているしか言えないのだ。

 幼き頃の初恋相手に、まさか高校で知らずの内に再会し、また同じ相手に恋をした。

 優馬は更にこの人生の先で迎えに行く宣言、つまり求婚みたいな事まで言っている。

 だが二人は付き合ってない。

 それが事実だ、説明しても理解されないだろう。

 クラスのチャットには下世話な話も出てくる、興味のある年頃だ仕方ない。

 優馬は何も呟かず放置していた。

 桜との事は自分達だけの世界に留めるつもりだ、周りに理解してもらうより忘れてもらう方がいい。

 なぜならあと数日で桜は居なくなるのだから。

 京都西陣織、伝統工芸の後継者。

 桜は夏祭りの後の帰り道で色々と話してくれた……


 ——夏祭り帰り道

「伝統工芸って継承者がもう殆ど居ないのよ」

 テレビやネットで何度か見聞きはした事がある。

 価値と歴史はあるが繋ぐ者が少なくなっていると。

 全国的に少子高齢化で一般的な企業ですら人手不足、伝統工芸は更にハードルが高く表向きに出せてる物は評価されるが作り手になる者にも、相応の品格と技術が求められる。

「私は小さな頃から少しずつ仕込まれてきてるわ、優馬君と最初に別れたあの小学生から高校に入るまで、京都に住んでずっと学んでいた」

「嫌じゃ無かったんですか?」

「作る事自体はね、でも他の同年代の子達とは遊べなかったから、そこは嫌だったかな」

 今ではもう過去だけどね、と付け足した桜は受け入れてる様だった。

「両親も悩んだと思う、だから最後の自由な時間である高校生を楽しみなさいって言ってくれて、こっちに転入してきたの」

「あれ?じゃあ京都は一人で?」

「そう、祖父と祖母の工房でね。両親も一応担い手になるけど販売や経営拡大の支社を運営してるのよ、今や国内より国外の方が需要あるんだから」

「おぉ、すご……」

「だけど、それが更に忙しくなって需要に供給が追いつかなくてね……メインはハンドメイドで一つ一つに時間がかかる、でも作り手が居ないし高齢化。一人前の職人を育てるのに数十年かかる、文化は立派だけど土台は揺らいでるの」

 優馬は息を飲む、世界的に日本が誇る西陣織と言えば聞こえは良い。

 だがあまりにも会社としては窮地すぎるし……先の予想図は暗い。

「桜さんはどうして……嫌では無いと言ってましたけど、将来的な事を考えたら……」

「そうね、時代には合ってると言えない経営ね……でも文化を守りたい気持ちもあったからかな、我ながら賢くは無い選択肢よ」

「家族や親族はそれで良いと?」

「……まあ歓迎も歓迎、と言うより小さな頃からそう決められて育ったからね……最初から後継者として作られたのね」

 優馬は唇を噛んだ、桜の人生を何だと思っているのかと怒りが湧く。

「でも、前も言ったけど全てを諦めて受け入れた訳じゃ無いからね?文化として守りたい気持ちもあるのよ……そして今は私にしか出来ない事」

 それでも優馬は納得し切れなかった。

 桜はそんな優馬の様子を見て頬にキスをする。

「私は先に社会に出て君を待ってる、別に監獄に入れられて過ごす訳じゃないからね?」

 笑う桜に優馬の想いは強まる。

 そっと抱き寄せキスをした。

「……もう、道端だよ」

「すいません、抑えれなくて……」

 衝動で動いたが周りには誰もいないのでセーフだ。

「俺、絶対最速で警察官になって迎えに行きますから」

「ふふっお互い忙しくて会えないかもだよ?」

「京都に配属希望出します、それかあっちで受けるか」

「そんな事出来るのかな?」

「無理なら別の方法で必ず迎えに行きます」

「職場で素敵な女性が居るかもよ?」

「桜さん以外に興味はありませんから」

「優馬君……お馬鹿さんだよ、嬉しいけど」

 桜はギュッと抱きつく。

 優馬も抱きしめ返す。

 二人の抱擁は長く続いた帰り道だった。


 ——夏休み終わりまで二週間

 優馬は警察官になる道を調べ、両親にも進路を相談した。

 いきなりの進路相談に親は何事かと面食らっていたが、しっかり話を聞いた上で応援してくれた。

 桜についても少し触れはしたが、両親揃って息子にもそんな時期が来たのかとのんびりした感じであった。


 家での土台は固めた、後は警察官になれる力を蓄える事だ。

 体力面は自信があるも学力は頑張らないといけない、残り一年を詰め込む覚悟で優馬は奮起した。

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