表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血鬼転生~最強なのに太陽の光で死ぬ俺は、唯一の希望”処女の血”を吸わせてもらうため、お姫様勇者のペットへと成り下がる~  作者: 兄貴
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/43

第031話 処女の血が足りない!


「――っ!」


 少女の目が見開いた瞬間、俺は胸を撫でおろす。

 彼女は寝ぼけ眼を擦る――などといったベタなことはせず、いつものようにパチリと目を覚ました。その後、何かを探すように瞳は左右へと動く。


「…………ムメイ?」


 暗闇を怖がる幼子のような声。

 そこにいて欲しいという願いが込められた声に、俺はすぐに答えた。


「ああ、ここにいるよ。ルルわあっ!?」


 瞬間、押し倒される。

 早くもデジャブを感じながら受け止めれば、俺たちは二人して床の上へと転がった。


「ああ! 無事でよかったぁ……」


 存在を確かめるように、胸元にぐりぐりと頭をこすり付けられる。

 俺は成すすべなく女に押し倒され、女に好きにさせながらも、ちょっとした違和感に感じ入っていた。


(……逆じゃないか?)


 意識不明の重体だったのはルルワの方であり、俺は彼女の目覚めを片時も目を離さず、眠りにもつかずに待っていたわけだ(デフォルト)。

 そしてようやく起きた女を、男が力強く抱きしめる。無事でよかったと。愛してると。

 本来俺が思い描いていたのはそんな感じなのだが、なぜだか俺は、気づけばいつも押し倒されている。何もさせては貰えない。


「う"ぅ……う"う"~~」


「…………」


 だが、そんなちょっとした文句とも愚痴とも言えぬ感情も、すぐに消え去った。

 俺なんかのために泣いてくれる、少女の温かさに。


「ルルワ、無事でよかった。信じてたけどね」


「わっ、たし……もっ、しんっ、じでだぁ……」


 しゃくり声をあげながら、喜びの涙でくしゃくしゃにした顔が眼前に差し出される。

 彼女からは暗くて見えていないはずだが、しっかりと目は合った。


「それが信じてたって顔なの? 鼻水垂れてるけど」


「信頼と心配は別なの! あと、鼻水垂れてない!」


「垂れてる」

 

 彼女は風呂に入らなくても臭くはならず、さらには鼻水まで垂れないらしい。まさに究極生物。

 しかし、言葉に関しては言い得て妙だった。

 俺も彼女は必ず壁を乗り越えると信じながらも、戦闘中終ぞ意識を切り離すことはできなかった。きっと彼女もそうだったのだろう。

 だがその信頼は、こうして実を結んだ。


「…………」


「…………」


 それから俺たちは、しばらく無言で互いの存在を確かめ合う。

 こうして身を寄せ合い、抱きしめ合い、温もりを感じ合うだけでも、頑張ってよかったと思えた。これが俺の戦う理由だ。


「……あれ? この部屋なんで真っ暗なの?」


「…………」


 いまさら気が付いたかという感じだが、口には出さない。

 少し落ち着いたのか、ルルワが不自然なほど明かりの差さない部屋を、ようやく不審に思う。

 それもそのはず。現在時刻は朝を超え昼に差し掛かるくらいだというのに、この部屋には一切の光が差し込んでいなかった。

 俺は非常に言い難いと思いながらも、口を開く。まさに死活問題なのだから、迷惑をかけないためにも、早めに伝える方がいいと。


「実は……ルルワから貰った血、全部使っちゃったんだ」


「え?」


 そう。イコラオスとの激戦で、俺はストックの血だけでなく、ルルワから貰った血までも肉体の再生に使い切ってしまったのだ。

 だから今の俺は、太陽の光を浴びようものなら瞬く間に死んでしまう状態にある。

 

「ごめん。ちょっとでいいから血を吸わせてくれない? ほんと先っちょだけでいいから」


 そこには、感動の再会もそこそこに、重症から目覚めたばかりの少女に対し――

 卑しくも処女の血を強請る、浅ましき吸血鬼の姿があった。




***




「――まずは、感謝を伝えさせてください」


 目覚めから小一時間も経たずに司令官室へと通されたルルワは、エバと向かい合う。ムメイの姿はとある事情からここにはない。

 というのも、ルルワがまだ彼に血を与えていないからだ。

 前回の吸血――人生最初の吸血から正味3日ほど。今回の戦いで血を大量に流したルルワからすれば、この短期間での連続の吸血は流石に怖かった。

 だからこそ、ルルワは今ここにいるのだ。


「あなた方の力がなければ、この要塞を守り切ることはできなかったでしょう。ここの代表として、いえ、人類を守護する兵の一人として、感謝申し上げます」


「…………」


 赤髪の親子が揃って頭を下げる。

 深く、どこまでも深い感謝の念が見える礼。だからこそ、ルルワはこれを受け取るのが嫌だった。


「ムメイの力よ。彼なくして、今回の勝利はないわ」


 そんな思いが、口調にも現れてしまう。

 感謝を突き放すような言葉に、当然のようにアワンが目を丸くし、対してエバは、穏やかな笑みをその顔に浮かべる。それはまるで、懐かしいものでも見るかのように。


「ええ、その通りですね。もちろん後ほど、彼にも直接感謝の言葉を贈らせてください」


「…………」


 ここにいないのだから、お礼の言いようがない。

 ルルワからしてみれば、じゃあなぜ連れてこなかったのかと皮肉を言われているようであった。

 しかし続く言葉で、それが間違いだったと分かる。


「それにしても……素敵なパートナーをお持ちですね。強く、賢く、気高く――人のために戦う心優しき吸血鬼。女としては羨ましい限りです」


「そ、そう?」


「ええ、非常にお似合いの二人だと思います」


「まあ……ね」


 それは丸わかりのお世辞だったが、ルルワにはこれ以上にないほど効果的だった。

 これが年の功というものなのか、エバにはルルワが欲している言葉が手に取るように分かる。勇者ではなく、17歳の少女が欲している言葉を。

 そんなルルワの姿を、やはり目を見開いて眺めるのがアワンだ。彼女はルルワの抱く感情が何か頭で理解はできても、心で納得することまではできなかった。

 なぜなら女は王女で、かつ勇者であり、対して男は、人ですらない吸血鬼なのだから。

 

「それでお話とは? 出立に関してでしょうか?」


「ええ、すぐにでもここを立つつもり。長居する理由もないから」


 ルルワたちの結論は変わらない。

 一刻も早く国を目指す。時間をかければかけるほどに、道中の邪魔は増えていくだろうという当然の懸念からだ。

 それはロータル大谷の進撃を跳ね返しても変わらない。この歴史の転換とも言える快挙を経て、これから世界がどう動くかは、勇者である彼女にも全く予測がつかないのだから。


「それは寂しいですが……そうですね。動きは早い方がいいでしょう」


 そしてそれは、エバも同じだった。 

 彼女も人類の重大拠点の一つを預かる立場として、一刻も早く勇者を北領域ローラシアへと送ったほうがいいと考えていた。

 しかし彼女が考えていたのは、それだけではない。


「ではこちらのアワンを連れて行ってはもらえませんか? 道中、勇者の盾としてお使いください」

 

「…………」


 母に背を押され、前に出る少女。

 彼女は全て承知済みという顔で頭を下げる。事実、話は通っていたのだろう。もしかしたら、彼女から言い出したことなのかもしれない。

 

「護衛能力には自信があります。私がルルワ様を、無事ダソスまで送り届けます」


「…………」


 正直、護衛という観点では彼女の力は全く必要なかった。

 なぜならルルワの傍には、最強の吸血鬼がいる。逆に守る人数が増えるため彼の足を引っ張らないかと心配にすらなった。

 しかし、ルルワにとってもアワンの合流は渡りに船だった。なぜならそれは、ルルワがこちらから頼もうとしていたことでもあったから。


「分かった。なら最初に大事なことを一つ聞いておくわ。心して、嘘偽りなく答えて」


「は、はい……」


 ルルワは自分よりも背が低く、年も若い少女の前に立つ。

 いつになく真剣な勇者の表情に、アワンは固唾を飲んで向かい合った。

 一体どれだけの覚悟を問われるのか、戦々恐々としていた少女に――身の毛もよだつような恐ろしい言葉が届けられる。


「あなた、処女?」


「はい?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こいつを血のストックにしてイチャイチャするつもりか…!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ