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3/6

帝国の終わり。舞踏会場に響く『信用』の崩落音

 会場に鳴り響く警告音は、地獄へのカウントダウンだった。


 魔導通信機から聞こえてくるのは、世界中の大商人たちからの宣告だ。


『中央銀行からの全資金引き揚げを要請する!』


『ノア様が解任されたという噂は本当か? なら、直ちに帝国との取引を停止する!』


 悲鳴と怒号が、宮殿の舞踏会場を支配していく。


「な、なんだこれは……! どういうことだ!」


 傍らにいた筋肉隆々の勇者が、わけもわからず怒鳴り散らす。


 しかし、彼がどれほど鍛え上げた拳を振り回しても、流れる数字を止めることはできない。



「……おや、始まったようです。

世界中の商会が一斉に『帝国からの投資回収』を要求しています」


 ノアは優雅に懐中時計を確認し、冷ややかな視線を投げた。


「次は貴族が、そして最後には、帝国民が預金を取り戻そうと押し寄せるでしょう。

……そう、大規模な取り付け騒ぎの始まりです」


「まだだわ……我が国の金庫には、莫大な金貨が眠っているはずよ!」


「いいですか、殿下。

子供でも分かる話ですが、金貨以上の借金が桁違けたちがいにあるんです。

当然、騎士団は給料が払われないから武器を置く。市場からは食材が消え、街には不満があふれる。

……貴女が誇った『強大な帝国』の正体は、たった一人の敏腕コンサルタントによる『自転車操業』に過ぎなかったのですよ」


 会場の貴族たちが、蒼白そうはくな顔でザワつき始めた。


「嘘よ……嘘よね? 勇者様、どうにかして!」


 カトリーヌがすがるように勇者の腕をつかむが、青ざめたまま、立ちすくんでいる。


 彼には、強大なモンスターを倒す力はあっても、経済の知識など欠片もなかった。


「筋肉で、金利が下がるといいのですが」


 ノアの皮肉めいた呟きが、静まり返った会場に冷たく響いた。


 手に入れていた繁栄のすべてが、「陰気な男」の手の中にあることに気づき、戦慄せんりつする。

 第3話をお読みいただき、ありがとうございます!


 ついに動き出した帝国崩壊のドミノ。


 会場にいる貴族たちの焦りが、読者の皆様に伝わっていれば幸いです。

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