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憲法上の政教分離原則

 池田大作創価学会名誉会長の死去に際して表明した「内閣総理大臣岸田文雄」名の哀悼文と創価学会本部関連施設弔問が物議を醸している。

挿絵(By みてみん)

 

 憲法上の政教分離原則に違反する振る舞いという非難だ(韓国の顕忠院で参拝しながら日本の靖国神社には参詣しない売国奴と非難する声もある)。


 昭和52年7月に出された最高裁判決(津地鎮祭訴訟)を思い出した。「憲法における政教分離原則」と「憲法20条3項にいう宗教的活動の意義」を判示したことで、後に様々な論説で言及されるようになった判決だ。その要旨は、「①憲法の政教分離原則は、国家と宗教の関係を全否定するものではない(∵国家と宗教の完全分離は非現実的)②憲法20条3項にいう宗教的活動とは、宗教的目的をもって特定宗教の消長に影響及ぼす行為をいう③市体育館の起工式は、社会の一般的慣習に従つた儀礼にすぎず、目くじら立てるまでもない行為である」だった。

 この判決を下すに当たり、少数派となって意見が容れられなかった当該裁判長は、5名連名の反対意見に加わるとともに、ただ一人「追加反対意見」を書いた。因みに、彼は、敬虔なクリスチャンだった。

 追加反対意見を要約すれば、次のような主張になる。

① 信教の自由は、近世民主主義国家の一大原則であつて、これは数世紀にわたる政治的及び学問的闘争の結果、かちえた寛容の精神の結晶である。

② 精神的又は観念的基礎の上に存立する「国家」は、人類の精神の所産である「宗教」を尊重しなければならない。

③ 国家存立の元にある「真理」の内容を決定するものは、国家でも国民でもなく、自証性をもつ真理それ自体であり、それは、歴史を通してはじめて人類の確認するところとなる。

④ 自証性をもつ真理に立脚する宗教は、国家その他の世俗の力によつて支持されることなくして立つべきものであり、独立性が尊重されるべきである。

⑤ 明治維新後の政府は、事実上神社神道に国教的地位を認めながら、信教自由の原則に抵触させないために、「神社は宗教に非ず」との解釈を下した。各個人の信ずる宗教の何であるかを問わず、国務大臣は新任に際して伊勢神宮に参拝することが慣例とせられ、地方官は官国幣社の大祭に奉幣使として参拝を命ぜられ、学校生徒は教師に引率されて集団的に神社に参拝し、地方住民は神社の氏子として祭礼に寄附を求められた。これらのことが慣行として一般に平穏に行われた理由は、神社神道に組織的神学がなく宗教性が素朴なことにある。仏教との調和的併存も、宗教性の素朴さが可能にした。

⑥ 連合国最高司令官総司令部の神道指令は、神社を宗教と認定し、これに国家の行政的もしくは財政的保護を与えることは、政教分離の原則上不当であるとして、国家より分離したが、神社を宗教として信仰することは、国民の自由であるとした。

⑦ 憲法20条3項により禁止される宗教的活動は、制定の経緯からしても、信教の自由と政教分離の原則を徹底したものと解すべきである。このように解すべき実質的理由は、「宗教」概念の多様さ(神学者、哲学者、宗教の科学的研究者たちは、古来さまざまな宗教の定義を提示しており、その多様さは、学者の数だけ定義の数もあるといわれるほど)故に、これを厳密に定義し狭く解すると、該当しない宗教類似の行為に対して公権力による統制の途を開く虞があるからである。

⑧ 多数意見は、本件起工式が工事の無事安全等を祈願する儀式であり世俗的行事と評価される慣行だという。しかし、工事の無事安全に関する配慮が必要なだけならば、現在の進歩した建築技術のもとで、十分な管理がなされる限り、科学的にはこれにつけ加えるべきものはない。工事の無事安全等に関し人力以上のものを希求するから、そこに人為以外の何ものかにたよることになるのである。これを宗教的なものといわないで、何を宗教的というべきであろうか。祭祀は、神社神道において最も重要にして第一義的意義を有するものであり、儀式あるいは儀礼が最上の宗教的行為なのである。

⑨ 国家や地方公共団体の権限、威信及び財政上の支持が特定の宗教の背後に存在する場合には、それは宗教的少数者に対し、公的承認を受けた宗教に服従するよう間接的に強制する圧力を生じる。少数者の潔癖感に基づく意見と見られるものがあつても、かれらの宗教や良心の自由に対する侵犯は多数決をもつてしても許されない。国家又は地方公共団体は、信教や良心に関するような事柄で、社会的対立ないしは世論の対立を生ずるようなことを避けるべきものであつて、ここに政教分離原則の真の意義が存するのである。

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