今様平家物語-〔対岸の火事視と他山の石視〕の巻-
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。
おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
たけき者も遂には滅びぬ、偏に風の前の塵に同じ。
ここに令和八年の秋、九州の端・筑前の国に、不思議なる火の粉飛び交ふ。
福岡県議会の正副議長の座をめぐり、金銭の授受ありとの声、高し。「ドン」と呼ばれし蔵内の長、遂に議員の座を去り、県連の長・松本、急ぎ東へ上る。
党本部の鈴木幹事長、これを迎へて言ふ。
「福岡の状況は、既に人々の知るところなり。県庁の問題、県議会の問題、県連の問題、すべてごちゃ混ぜとなり、自民党県連への批判、甚だ大なり。この状況、来年の統一地方選挙に全国へ影響してはならぬ、との思いを本部は強く持つ。都道府県連は高い独立性・自主性を有す。されど公認の権は総裁に、本部にあり。自浄作用を速やかに発揮し、公認し得る環境を整えよ」と。
幹事長の言葉、厳しくしてなお、具体の名を挙げず。「誰を公認せず」とは言はず、ただ「自浄を」と繰り返すのみ。県連の刷新も、本部より命じず、「県連自ら考えよ」と。
独立性を重んじつつ、公認の刀をちらつかせ、火を消し止めんとする様、あたかも平家の公卿が地方の反乱を遠巻きに睨むがごとし。
されど、この火を他の国々の連は如何に見るか。
あるものは「対岸の火事」と嘯く。「福岡特有の話なり。我が県に『ドン』など居らず。自治を侵すなかれ」と、腕組みして煙を眺む。独立性を盾に、静かに様子を窺ふ者、数多し。
あるものは「他山の石」と心を引き締む。「我が身にも及ぶやも知れず。ガバナンスを今一度点検せねば」と、ひそかに執行部を集むる者も出づ。されど、声高に「我らも改めん」と旗を振る連は、未だ稀なり。多くは「対岸の火事」の側に寄り、火の粉の飛ぶを待つ。
ここに、西国より強き風吹き来る。
大阪の維新、吉村の長、すでに福岡に目をつけ、「定数三割減、報酬三割減、海外視察禁止」を公約に掲げんとす。身を切る改革の旗を翻し、わずか一議席の地に、大軍を送らんとする気配あり。
参政もまた三十人規模の擁立を唱え、火に油を注ぐ。
この維新の風こそ、対岸の火事を他山の石に変へる鍵なり。
もし福岡にて自民の議席大きく減じ、維新の改革派が躍進せば、他の国々の連も「我がこと」と悟らざるを得じ。
連立の友でありながら、地方では敵となる維新の動き、平家の栄華を支へし盟友が、一朝にして敵に回るがごとし。
幹事長は言ふ。「本部が全国の連を調査する考えなし。独立性を尊ぶ」と。
されど公認の権は本部にあり。火が全国に広がらぬよう、自浄を急がす。
高市の長もまた、大いに気にかけ、速やかなる解決を望むとのこと。
盛者必衰は、一地方の組織にも通ず。
当然の事を蔑ろにし、利権に安んじ、看板を当然の権利と思ひし者、今や公認の風前の灯火となる。
対岸の火事と見る者多し。されど維新の風強まらば、他山の石と悟る者、必ずや増えん。
諸行無常。組織もまた、人の心もまた、常ならず。




