97 Side.エルフの森の長
何やら森から異様な気配がする…。
森の動物達も異常を感じ取っているのか、普段よりも気が立っているようだ…。
森で何か起ころうとしているのだろうか…。
「森長! 外に出ていた密偵が帰ってきました!」
「…! やはり何かあるのか…」
外の情勢を探っていた密偵が帰ってきたとなると…、やはり余程のことが起ころうとしているのか…。
いや…、もしくは既に起こっているのやもしれんな…。
「すぐにここに呼ぶのだ!」
「それが…」
「…何かあったのか…?」
「……」
「どうしたのだ!!」
「…帰ってきたのは…、一人です…。
……素人目に見ても重傷と思えるほどの傷を負っていました…」
「!!?」
私は立ち上がり、すぐさま医療術師の所へと跳ぶ。
視界が一瞬暗転し、次の瞬間には視界内の景色が屋内から屋外の家屋の目の前に変わる。
僅かに住民が集まっており、帰還した密偵が魔力も損耗していることを感じ取った…。
「……密偵の容体は…」
「一先ずは大丈夫だ」
「!…そうか…」
大事ないことを医療術師が告げる…。
とりあえずは良かった…、と言ったところか…。
「それで…」
「ある程度自身で治療を施しておったようだし、ここに戻るまでの疲労と魔力の損耗で暫くは安静だな…」
言葉を遮るように、医療術師が密偵の状態を告げる…。
「治療に際して密偵の記憶も見させてもらったが…」
「…それで、どうだった…?」
「……密偵の傷は、魔王の手の者に負わされたようだ…」
「!!」
魔王…!
そうか…、魔王が再び侵攻しようとしている訳か…。
森や動物達の異変もそれのせいだな…。
「やはり国境沿いか…?」
「あぁ…、魔王側の斥候に見つかり、仲間と散り散りになりながらも何とか逃げ出して戻ってきた、と言ったところだ…」
「…そうか…」
我らエルフの密偵は、情報調査能力においては人間に劣るが、隠密技能で言えば人間を遥かに凌駕している…。
その密偵を見つけられるとなると…、魔王側も今回は特に力を入れていると見た…。
「すぐさま対策会議を開く! 貴殿は───」
「私も出るよ…。 経過観察は弟子共に任せておけばいい…。 事は種の存続の危機と言ってよいからな…」
「ならば…」
そう言いつつ、森全体に念話を飛ばす。
(これより緊急対策会議を開く!
事は一刻を争う故に、各家の長は直ちに大樹まで集合してくれ!!)




