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98 Side.魔王




「漸くだ…」


 この時を一体どれだけ待ったことか…。

 力を取り戻しつつも雌伏の時をどれほど過ごしたことか…。

 だが、最早抑える必要はない…。


「機は熟した…。

 これより人族共の領地へ侵攻する!!」


 眼前に立ち並ぶ数多の配下達に号令を下す…。

 我が声を受け、気勢を上げて呼応する配下達…。


「まず先触れとして斥候部隊…、可能な限り前線を押し上げよ」


 我が声を受け、斥候部隊が先んじて出発する…。


「斥候部隊に続いて工作部隊…、一先ずの場所に前線基地を建築せよ」


 斥候部隊に続き工作部隊が後に続く…。


「前線基地の建築が始まったら第一軍…、基地を起点として戦線を拡大するのだ」


 第一軍の者達が揃って待機状態に入る…。


「第二軍以下の者達は…、第一軍が戦火を広げるまで待て…。

 戦線が拡大し次第、順次展開してもらう…」


 一呼吸置いて…。


「…諸君…、派手に行こうじゃないか!」


 その言葉で、待機組から歓声が上がる…。




   ※ ※ ※




「……こんなものでいいのか?」


「上出来です、魔王様」


 我の言葉に背後に控えていた参謀が答える。


「正直こういうのは得意ではないのだがな…」


「ですから魔王様でも演技しやすい台詞にしたのではありませんか」


「…そうか…」


 何処となく馬鹿にされている気がするが、実際馬鹿だから仕方ない…。

 こういった細々としたことは苦手だ…。

 我は最前線で暴れたいというのに…。


「少々厄介な情報を入手したもので…、魔王様には地ならしが終わるまで待っていただけるとありがたいです」


「厄介な情報…?」


 初耳なのだが…。


「多分に憶測を含むので、お伝えしていないだけですよ」


「信用できない情報源か?」


「信用は出来ますね…。 信頼は出来ませんが…」


「?」


「こちらのことです…。 とにかく…、得た情報を私が考察して出た結論が、到底ありえない内容なのですよ…」


「では違うのではないか?」


「ですがそれならつじつまが合うんですよ…。

 常識的に考えてありえない結論ですが、その通りであれば何もかも納得できてしまうのです…」


「…故にとりあえずそれに沿って動く、と…」


「そういうことです…。

 それにその結論が外れていたとしても、魔王様がグータラしていたという事実だけで済みますからね」


「ちょっと待て」


 それは威厳の問題云々以前に…。


「それでは戦うことができないではないか!?」


「とりあえずその筋肉思考を何とかしてください」




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