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94 Side.酒場の主人



 今宵も夜が訪れる…。

 清掃は済み…、在庫も問題なし…。

 準備は整い、後は営業開始時間を待つだけ…。

 今宵も、夜が訪れる…。



「とか言っても、いつもと変わらない騒がしい酒場じゃないか店主!」


「それは言いっこなしだよ…」


 雰囲気作りに独白してみただけで、実際は何時もと変わらない騒々しい客で溢れかえっている…。

 早速一つのテーブルで喧嘩が起こり始めた…。


「おっ、いいぞ~! やれやれ~!」


「煽らないで下さいよ…。

 店の物壊さないでくださいよ~!!」


 煽る常連を窘めつつ、そういう自分も注意するだけ…。

 酔っている人を言葉で止めるのは至難の業だ…。

 いっそ殴った方が手っ取り早く、且つ客同士の諍いならば穏便に済ましやすい…。

 店主が手を挙げるのは問題だが…、客同士の喧嘩ならば大抵の事ならば自分が許せばそれ以上の騒動にはならない…。


 流石に店内の備品を破壊されれば、許すわけにはいかなくなるが…。


「しっかし今日はいい日だねぇ~!」


「何か良い事でもあったんで?」


「そりゃもう、とびっきりよ!」


 興奮したように豪語する目の前の常連…。

 あまり酔わない人だが、興奮しているせいかいつもより酔っているようだ…。


「街中で豪い別嬪さんを見かけたんだよ!」


「…へぇ」


 未だ独身の常連が嬉しそうに語る…。


「背の高い子と背の低い子の二人組だったんだがね…、どっちもそこらじゃ見ないような美人さんだったんでさ!」


「そりゃまた…、何処から来たんでしょうねぇ…」


「そんなこたぁ重要なことじゃねぇ…、重要なのは…」


「重要なのは…?」


「背の高い子が俺っち好みの、キリッとした美人さんだったってことでさ~!!」


「…さいですか…」



 涙でも流す勢いで、ジョッキを掲げて高らかに宣言する目の前の常連…。

 女の好みも初めて聞いたが…、それ以上に気になるのは…。


「その二人の容姿は、よく覚えてるんで?」


「背の高い子は今言ったようにキリッした美人さんで、長い黒髪を後ろで束ねてたな~。

 背の低い子も蒼色だったが、同じように長い髪だったな~」


 情報量が少ないが、それでもパッと見で判別しやすい情報だ…。


「いや~、また会いたいなぁ~…」


「会えるといいですねぇ…」


 これは…、報告しておいたほうがよさそうだな…。




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