80 ???の胎動
そこには、それが居た…。
姿が見える訳ではなく…。
姿が見えない訳でもなく…。
ただそういう存在が其処には存在していた…。
それは、人間の感情で言うところの苛立ちを感じていた…。
それに感情等と言うものは存在しないが…、あえてそれの状態を言葉にするならば、それが適切だった…。
とにかくそれは苛立っていた…。
土に書いている絵を、誰かが一部を踏み躙って何度も消されているような感じだった…。
その度に書き直すが…、また別の所が消されている…。
それを幾度となく繰り返してきた…。
絵の全体像を完成させることは出来たが…、様々な部分を何回も消され、その度に書き足す苦行の連続…。
一体何度修正すれば完成するのか…。
苦痛も疲労も感情もないが、それの状態を現すならまさに苛立ちだった…。
永劫繰り返される徒労…。
何時までも完成しない絵…。
苦痛も疲労も感情もないそれが感じるのは、途方もない苛立ちに等しい何かだった…。
苛立ちのようなものを感じても、それが絵を修正するのを辞めることはない…。
まるでそれ以外に無いかのように…。
それ以外は正解ではないと言わんばかりに…。
執拗に絵の完成を目指していた…。
人であるならば、途中で諦めていただろう…。
だが人ではないそれは、変わらず絵の完成のみを目指していた…。
苛立ちを感じながらも、それは楽観していた…。
横やりの頻度よりも、修正の速度の方が上回っているのだ…。
このまま続けて行けばいずれ完成する…。
完成するのが目に見えている以上、苛立ちと面倒くささ以外は特に感じなかった…。
故にそれは気づけなかった…。
それが横やりではなく遅延であることに…。
その誰かの目的が…、完成した絵とそれの完全消滅であることに…。




