79 リースの記憶
私の最初の記憶は…、創造主様の安堵した顔だ…。
その顔はとても悲しそうで…、それでいてとても嬉しそうで…、そのせいなのかとてもよく覚えている…。
私の身体には、私の知らない感覚が存在している…。
知らないはずの動作を身体が覚えていたり…、知らないはずの知識を知っていたり…。
創造主様に直接聞いたことはないが…、恐らく前世の私だろう…。
身体は変わらないのに前世と言うのもおかしな話ではあるけれど…、それが一番しっくりくるのだ…。
何せその前世の記憶を…、私は一切覚えていないのだから…。
恐らくその前世の出来事のせいなのだろう…、創造主様が私を世界樹の外に出さないのは…。
世界樹内部で一番安全な場所で…、危害の及ばない場所から決して動かそうとはしない…。
私が自力で行動できる範囲内全てが安全地帯である時点で、ほぼ確定だろう…。
それを嫌だと思ったことは無い…。
創造主様に心配されているのが嫌な眷属はいないだろう…。
だがそれは…、創造主様の心に傷を刻んだままであるということだ…。
それが何かの時に…、致命的な弱点になりうるのではないかと…、私は恐れている…。
私は大丈夫だと、創造主様に伝えることは出来る…。
だが前世を思い出せないままの今では、創造主様への気遣い以上にはならないのだ…。
前世の私を知るのは創造主様だけ…。
今いる眷属達は皆、前世ではない今の私を知る者達しかいない…。
私は仕事の合間に、嘗ての記録を検索する…。
前世の私の足跡が、もしかしたら何処かにあるかもしれないと…。
時間の無駄だと思っていても…、そうせずにはいられない…。
創造主様には今度こそ…、悲しんでほしくないから…。




