6 Side.シメール
造物主様の膝の上で、仔猫の姿で丸まって寛いでいると、扉が勢いよく開き、テレス様が入ってきた。
「シメール!グーロ!お風呂に入ってきなさい! その間お兄様の御膝の上は確保しといてあげるから!」
(そういえば帰ってきてからそのままだったな~……)
テレス様の魂胆が透けて見えるが、ここはおとなしく譲るとしよう。
そうして猫から人型の姿へと戻る。
「じゃあテレス様~、風呂をあがるまでの間~、膝の上はお譲りしますね~」
「…終わったら、交代……」
「うんうん♪ いってらっしゃーい♪」
嬉しそうなテレス様の声を背に、私達は部屋を出て、扉を閉め、風呂場へと向かう。
「そんじゃ行こっか~、グーロ」
「…うん……」
相変わらず口数が少ないが、長いこと一緒にいると、何となく何を考えているか解る。
今日は殆どグーロが御膝の上を独占していたようだし、お風呂の間ぐらいはテレス様に譲ってもいい、ということなのだろう。
粘液生物であるグーロは、基本的に風呂に入ったり等して身を清める必要性はない。
だがここの風呂場の身体を洗う洗剤は、魂の汚れすら落とすことができる効力を持っている、造物主様が作った特別製の洗剤なのだ。
石材彫像や模造人形等の無機生命体達や、悪魔族や天使族といった精神生命体達ですら、月に一度は風呂に入るくらいには人気なのである。
そういう理由もあって、666の眷属達以外の無数の眷属達も、暇さえあれば皆風呂に入っている。
(そういえば……)
「今の時間帯は大丈夫かな~?」
「…666の眷属達の半数以上が出撃してる…。…他の眷属達も…、ほぼ全員風呂に入った…。…寝てるのもいるし…、問題ない…、はず……」
声量は低いが、造物主様に作られたこの身体の聴力ならば、グーロの小声も問題なく拾える。
(千人は入れるお風呂ではあるけど、眷属の数はもっと多いからねぇ~……)
しかし666の眷属達の半数以上がいないとは…。
(喫緊の問題がないとはいっても、それは私らの出番がないってだけか~……)
「それじゃ~、出撃してる皆には悪いけど~、ゆっくり休ませてもらおうかな~」
「…今日は…、支配者と…、シメールと…、テレスの…、四人で寝られる……」
嬉しそうにグーロが呟く。
(一人足りないけど、あいつがいるとのんびりできないのは確定だからなぁ~)
そういやいつもなら造物主様の近くにいるはずだけど、どっか行ってるのだろうか?
(まぁあの淫乱がいないのなら、久々にゆっくり出来そうだねぇ~)
※用語解説:666の眷属達
クレスが有する無数の眷属達の中でも、特に力が強い眷属達の総称。
この呼称を定めた時に選定した眷属の数が666人であったためそう呼ばれているだけであり、今現在は666人以上存在する。




