63 Side.アナスタシア 3
「それで…、どうするの…?」
『どうする──てのは?』
「悔しいけれど…、私の力じゃ彼奴を殺すことも、排除することもできない…。 だから貴方の力を頼るしかないのよ…。 方法はあるんでしょう?」
『まぁ待て。 その前にお嬢ちゃんがどうしたいかを確認しておかないとな…』
どうしたいかって…。
「決まってるじゃない…。 彼奴を国から追い出すのよ…。 彼奴が来てから父も母も兄も…、国の皆がおかしくなってしまった…」
『その彼奴って奴を排除する手段の確認だ…。 被害を出さないように慎重に排除するのか…、損害を度外視して迅速に排除するのか…』
それは…。
「……貴方ならどうするの…?」
『解ってて聞いてないか?』
ってことは、やっぱり…。
『俺の判断でやるとなると、損害を考慮せずに迅速に排除する。 手早く速攻で終わらせる』
「勿論それはダメよ…。 国の皆に被害が出ないように、彼奴だけを排除するの…」
『だろうな。 そうなると多少時間がかかるな…。』
「被害を出さないようにする場合、どれぐらいかかる…?」
『まずそいつを被害が出てもいい場所に誘き出す必要がある…。 そうすれば後は殺せばいいだけだが…、今の俺の状態じゃ、その誘き出すってのが難関だな…』
「…貴方なら何とか出来そうな気がするのだけれど…」
『何時もなら、な。 今は事情があって揮える力に制限がある…』
そういえばさっき、本来なら引き寄せられなかったって…。
「今の貴方って、普段より力が出ない状態なの…?」
『あぁ』
「それでも、彼奴よりも強大な力を感じるのだけれど…」
『そこはまぁ…、永いこと生きてきた貫禄って奴だろう…』
彼奴と違って威厳があるのは確かだけど…、それだけじゃないような…。
『まぁこれでもあの頃よりは力はある方だし…、眷属達は呼べないが何とかなるだろう…』
「それでどうするのかしら…?」
『お嬢ちゃんが言っている彼奴とやらを、何処か暴れてもいい場所に誘き出す…。 何処かの国に協力してもらうことになるだろうが…、交渉はお嬢ちゃんに任せてもいいか?』
「それくらいは私がやるわ…。 けど貴方はどうするの?」
『彼方此方で情報収集』
「…確かに今、国がどうなっているか判らないわね…」
あの時は恐怖から逃げ出してきたけれど…。
今度は逃げ出さない…。
確実に彼奴を仕留めて、皆を正気に戻す…!
『とりあえず何処か協力してくれそうな国に向かおうか』
「えぇ…、とりあえず長年の友好国である公国に向かおうと思うわ…。 多分…、大丈夫なはずよ…」
結構取り乱していたみたいね…。
落ち着いて一つ一つやっていきましょう…!
『とりあえず土地勘無いから、道案内は任せるぞ』
………。
『お嬢ちゃん…? まさかとは思うが…』
「……その…、無我夢中で逃げてきたから…、今ここがどのあたりなのかも判らないの…」
『………』
……そ、そんな優しい目で見ないで…。
余計に惨めになるから…。
「だ、大丈夫よ! 公国に向かって逃げていたから、このまま進めば辿り着く筈よ!」
『どれぐらいで?』
「………た、多分…、半月…、ぐらい…?」
『………』
そんな生暖かい眼差しで見ないで…。
肩を叩いて慰めないで!
頭を撫でないで!!
『ま、とりあえず公国内の何処かの街に行こうか。 服も着替えないといけないしな…』
「えっ…? ……あっ…」
そういえば着の身着のままで……、あちこち破けて……。
~~~~~~~~~っ!?
『まぁ落ち着け。 クロークぐらいなら貸してやるから、一先ず街まではそれで我慢しろ』
「…あ、ありがとう…」
そう言って彼は、自分が羽織っていたクロークを私に羽織らせる…。
……暖かい…。
………っ…。
「ごめんなさい…、少しの間だけ背中を借りてもいいかしら…」
『…少しの間だけな…』
暖かさに触れて…、堪えていたものを堪えられなくなってしまったみたい…。
私は…、声を押し殺して…、泣いた…。




