58 Side.グーロ 3
全身の細胞がざわめくのを感じる…。
何やら嫌な予感がする…。
こういう時は大抵、ロクでもないことが起こる…。
何やら騒がしい足音が、この部屋に向かってきている…。
どうやらディオンのようだけれど…、いつもの落ち着いた足音ではない…。
何かがあったのだろう…。
|支配者<マスター>も察知したようだ…。
扉が勢いよく開け放たれる…。
「父様!!大変です!!」
『ディオンが取り乱すってことは…、感じた違和感は相当な厄介事のようだね…』
「……はい…」
普段は落ち着いている学者肌のディオンが、相当慌てている…、と言うより畏縮している…?
それはつまり…、その厄介事とやらが支配者の逆鱗に触れかねない事ということ…。
「父様、落ち着いて聞いてください。 実は──」
そう言ってディオンが話し始めた内容は…、想像以上のものだった…。
「──ということで…」
『………そうか…』
話を聞いた支配者は、何やら落胆した様子だ…。
『ご苦労だったね…、ディオン…。 ゆっくり休むといい…』
「しかし父様…、これは…」
『わかっているよ…。 それは此方で何とかするから…、ディオンはゆっくり休みなさい…』
「……はい、分かりました…。 それでは、失礼します…」
そう言ってディオンは、部屋を出て行った…。
「…支配者…」
『何だい…?グーロ…』
「…私が…、やる…?」
『いや…、仕出かしてくれた奴の始末は…、アグニルに任せるよ…。 それ以外の事は私がやるとしよう…。 暫くかかりきりになるだろうね…』
「…解った…」
支配者の声の調子が、普段よりも落ち込んでいる気がする…。
「…大丈夫だよ…、支配者…。 …私は…、此処にいるから…」
『…あぁ…、ありがとう…、グーロ…』
今回の犯人に憤る気持ちもあるけれど…、そんなことよりも支配者の心の平穏の方が大事…。
私は支配者に寄りかかり、身を委ねる…。
私は居もしない神に祈る…。
どうか支配者の理念を…、無事に成就させて──と…。




